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【短編小説】海蝕洞の幻宝(4/5)

船は洞窟へと入っていった。周りは薄暗いが、急に波が穏やかになった。

すると洞窟の奥から眩しいばかりの青い光が放たれだした。

「宝物だぁ」

たけしが叫んだ。シンジは家から持ってきた懐中電灯でその方向を照らした。

「ここからじゃわからないなぁ」

確かに青い何かが見える。懐中電灯の明かりでははっきり見えない。何か青いものが山のように
積み上がっている。

「もう少し近づいてみよう」

たけしは船を洞窟の奥へと進めた。
やがて手が届きそうなところまできた。

「えっー、なんだよっ、これはっ!」

シンジが懐中電灯で照らしたものは、青いポリ袋に詰められたゴミの山だった。

「海賊の宝物じゃなかったのかよ」

トシのがっかりした声が洞窟の中にこだました。
たけしがポリ袋の一つを破って中を見てみると、腐った生ゴミが詰め込まれていた。それと共にとんでもない悪臭が立ち込めた。

「うわっー、引き返せー!」
たけしは慌てて洞窟の外へと船を漕ぎ出した。

岸壁へと船を戻した三人は、砂浜まで来ると仰向けに寝転んだ。

「宝物がゴミの山だったじゃないか。あんなきれいな海に・・・。何でなんだよ」
「何だか、すごいがっかりだな。もう宝物なんていらない」
「おれはあんなところ、二度と行かない」

三人はすでに高く上った太陽をしばらく眺めていた。


<続く…>

<前回のお話はこちら>


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