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【洋書】Klara and The Sun by Kazuo Ishiguro/クララとお日さま〜未踏の部屋(人の心)は絶対残る?〜

邦題: クララとお日さま
著者: カズオ・イシグロ

《あらすじ》
主人公クララは、人工知能を搭載したAIで、子どもの親友になる為に作られたロボット(Artificial Friend, AF)。お店のショーケースに並べられ、いつか誰かが買ってくれるのを待っていた。そこでジョジーという名前の少女と運命的な出会いをして、一緒に暮らすことになる。やがてジョジーの家族の大きな秘密を知り、クララはある決断をする。

《感想》
AIと聞いて、無機質で冷たい話し方、考え方をする主人公かと思いましたが、全く違いました。クララは純粋で、思いやりに溢れていて、謙虚で繊細なロボットです。物事を決して悪く捉えず、いつでも前向き。奥ゆかしさ、美しさが感じられます。そんなクララとは対象的に、周囲の人達の気持ちは本当に変わりやすく、そして複雑。そんな人の心を『たくさんの部屋がある家のよう』だと例えるクララ。クララは必死に理解しようと、謙虚に観察を続けます。『その気になって時間もかければ部屋の一つ一つを調べて歩いて、やがてそこを自分の家のようにできる』と信じます。クララの人間達を観察しているときの表現がとても独特で面白かったです。

人の心(たくさんの部屋)をよく観察し、自分の家のように出来るとクララが話したとき、ジョジーのお父さんに『いくら時間をかけて調べ歩いても常に未踏の部屋が残る』と、クララは言われます。それに対してクララが、ジョジーの為ならどんなに難しくても最善を尽くすと言い切る場面があります。彼女のまっすぐな言葉が、確信を持って話す姿が、心に刺さりました。

AI、人の心、家族愛……

今回も見事な作品を発表したカズオ・イシグロ。心から読んでよかったと思う作品です。


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