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なんとか生きていくためのわたしの「麻酔薬」

生きていれば良いこともしんどいこともあるわけで、大人になって責任と立場が増えるとつらさも増す。

体力と健康に翳りが見え始め、徹夜はできず、油とクリームが胃にもたれ、脂肪は落ちない。
なんとなく、自分の「上限」みたいなものが見えたような気がしたりしなかったり。

周りに人生の悩みにぶち当たる人も出始め、根本的な解決ができないこともあると知り、長期にわたる悩みや痛みや喪失を抱えざるを得なくなってくる。

しんどさを抱えながらもなんとか生きていくのが人生なのかしら、とようやくわかってきたところで、「なんとかやり過ごす力」の重要性に気づいた。

雨の中でも、踊るちから。

しかし人間、ひとりで痛みやしんどさに耐えられるほど強くない。

そこには「麻酔」が必要だ。

開腹手術から歯を削るときまで、一時的な「麻酔」があれば、痛みやつらさに耐え、なんとか次のステップへ踏み出すことができる。

そして「楽しく、愉快に」に生きるには、どれだけ自分に合った「麻酔」を用意できるのかが肝なのではと思うのだ。

そしてその「麻酔」は、たぶん意味のないことやくだらないこと、時間と金の無駄、非効率な遠回りをした先にある。

わたしの「麻酔」を紹介しよう。

■中落ち

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まぐろの、中落ち。

近所でパックみっちり600円で売っていたので2日連続で買ってしまった。

寒くなると、ささいなことでもやたらしんどく感じてしまうときがある。不毛だとわかっていても、他人と比べて凹んでしまう。

しかし私は単純なので、中落ちさえあれば

「『フルタイム共働きだったら世帯収入960万なんて簡単に行っちゃわない?』、は? 都内在住フルタイム正社員共働きでもかすりもしないが……?」
「中落ちうめぇ!!」
「老後ははやめにしにたい」
「中落ちうめぇ!!」
「健康診断」
「中落ちうめぇ!!」
「人生…」
「中落ちうめぇ!!」
「中落ちうめぇ!!」
「中落ち〜〜♡」

こんな塩梅である。美味しい、は不安に効く。

■ケーキ

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最近はケーキもご飯がわりだ。

というのも食後にケーキ、がきつい。ケーキを食べたら食事がわりになってしまう。2個くらい余裕で食べられていたあの頃はなんだったんだ。

父方が糖尿家系で妊娠糖尿病も経験したので、糖質は摂りすぎないように気をつけている。

胃袋も弱った、健康のためにもそう頻繁には食べられない。

相対的に、ケーキの希少性が増した。

ケーキ、見た目が華やかで可愛くて美しくて素敵でそれでいて食べることができて、おいしい。最高だ。

たまにさほど美味しくないケーキに出会うと心底がっかりするが、試してみないと美味しいかわからないのだから仕方ない。そして胃がもたれる。つらい。

「ケーキにしか満たせない欲」がある。
それが生じた時は大人しくケーキの前に平伏し、脳内を甘味で満たす。理性を殺してケーキに耽溺する時間が至福。

■庭園散歩

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先日、六義園へ行った。柳澤吉保が設計した江戸時代の庭園だ。以前、日本庭園が好きだと書いたが、(「自分に「余白」をつくる場所〜日本庭園〜」)やはり砂利を踏み、土の柔らかさを足裏に感じ、木でできた階段を登り、少し息があがって、石の上でバランスを崩しそうになりながら歩くと、日常の喧騒を忘れられていい。

中央にある池の周りを歩くのもいいけれど、私は端の鬱蒼とした、人気の少ない方や、ひっそりと佇む茶屋が好きだ。そして高台から望む景色の美しさ。

「綺麗」と心から思える瞬間がある限り、生きていける気がする。庭園は、その「まだ大丈夫」を確認する場所。

■アニメ

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漫画も映画も読書も芸術鑑賞も好きだけれど、今はアニメに心奪われている。

アニメそのものの鑑賞も、そこから映画や原作に飛ぶのも、派生コラボを堪能するのも、すべてが楽しみ。

最近はひたすら『頭文字D』を観ている。なんて面白いんだろう。名作は、やはり名作だけのことはある。

「いい年してアニメなんか観て」という人が一切いない環境に身を置けているのはありがたいものだ。愛してるぜみんな。

■子ども

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こんなに可愛いとは思っていなかった。

元来、子ども好きな方ではなく、むしろどう接したら良いかわからないタチだったので、今の自分の有様に驚いてしまう。

若くて、小さくて、未来しかない子どもという存在は、超強力な空気清浄機のようなもので、ただそこに居るだけで、良い。空気がいいもので満たされる。

育てていると「キーーッ」「このやろう!」と思うこともあるのだけれど、全体としてはとても可愛い。

あたたかく、やわらかく、存分に愛情を注ぐことができる存在がいるというのは、なんとありがたいことだろう。日々その尊さを噛み締めている。

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そんなわけで、現在の私の「麻酔薬」は中落ちとケーキと庭園散歩とアニメと子ども。

どれもなくても生きていけそうだけれど、実はそうでもない。

そして案外、不健康や苦しみと裏表だったりする。食はもう好き勝手食べていける感じではなくなってきたし、健康診断の結果にドキドキするようになった。体重は過去最高。アニメは貴重な時間をどんどん奪っていく。子育ては正直、体力的にも精神的にも負担が少なくない。もちろん経済的にも。
将来はいつだって不安だ。

それでも、なんとか楽しく過ごしていきたい。

これからも、麻酔を適宜使い、新たに素敵な麻酔に出会えたらいいなと思う。

そして、子どもにも好きなこと、素敵だなと感じること、没頭できること、気持ちのいいこと、落ち着くこと、いくらでも耽溺できること、楽しいことを見つけられ、そしてそれらと現実的な不利益のバランスを冷静にとれる感性が育ってくれたらなと願っている。

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