地域のつむぎ手の家づくり|「穏やかで丁寧な暮らし」好む人とつながりたい 新モデルハウスとカフェから想いを発信<vol.52/ノモトホームズ:新潟県新潟市>
今回の<地域のつむぎ手>は・・・
ノモトホームズ(野本建設、新潟県新潟市)は昨年、建築家の泉幸甫さんが設計監修したモデルハウスと事務所(本社)を、同市中央区内に移転オープンしました。
さらにその後、同じく泉さんが設計を監修した店舗でカフェも開業。モデルハウスとカフェを一体的に活用しながら、心豊かな暮らしと住まいのあり方を発信しています。
同社取締役で設計部門を統括する竹村泰彦さんは「設計力を磨きながら、それを軸にして、価格だけで住宅の価値を判断しない“穏やかで丁寧な暮らし”を志向する人たちとつながっていきたい」と想いを語ります。
同社では、今回の移転前も約17年間、泉さんの設計による常設のモデルハウスを活用しながら、自然素材へのこだわりやデザイン性の高さを自社の住宅の魅力として地道に実績を積み重ねてきました。
性能面を大幅に強化
昨年オープンした新しいモデルハウス(延べ床面積約37坪)では、そういったこれまでのコンセプトを受け継ぎつつ、性能を大幅に強化しました。耐震等級3(許容応力度計算)で、断熱はHEAT20・G2レベルのUA値0.34W/㎡K、気密はC値0.2㎠/㎡という高い性能を実現。
さらに、設計段階から地元の工務店アドバイザーとも言える新潟家守舎の小林紘大さんの協力をあおぎながら、床下エアコン(暖房用)・小屋裏エアコン(冷房用)と第一種換気により全館空調を行う仕組みを採用し、それを標準化しました。
竹村さんは「以前から小林さんの支援により、エコハウス講座として設計から断熱材施工のノウハウ、気密シートの張り方、第一種換気の仕組みなどを大工さんもまじえて学んできました。そのノウハウをお客さんや地域の人たちのために生かしたい」と訴えます。
「こんな家に住みたい」
設計志望の若者を魅了
「高い基本性能を“当たり前”にすることで、泉さんから吸収した設計力を、今まで以上に効果的に生かしたい」と竹村さんは見据えています。
同社で設計を担当する25歳と若い田中優斗さんは、雑誌で竹村さんが設計した住宅を見て、「自分が住むならこういう家がいい。この会社なら好きな住宅の図面をたくさん描くことができるのではないか」と入社した人材です。竹村さんは、建築の本質的な魅力を追求していく家づくりのスタイルが、今後の地域の住宅市場で自社が存在感を発揮していくために欠かせない要素であると確信しています。
竹村さんは、“高性能×自然素材×シンプル”だけでは満足できない層に、自社が提供する住宅がマッチするのではないかと考えています。「穏やかで丁寧な暮らし」を好む顧客は、デザインや素材使い、建具などを含むディテールの各所でオリジナリティーを求めるそうです。
「泉さんの設計メソッドが生み出す空間は、まさにそうした人たちの求めるものと重なる」と竹村さん。住宅の価格高騰が叫ばれ、事業者(工務店)にとっては、「家を売りにくい世の中(市場)」などとも言われますが、そんななかでも同社は、建築的なアプローチをより強めながら、価格競争とは一線を画すところで家づくりを手がけていきたいと考えているのです。
想いと世界観を発信するカフェ
そういった自社の住まいや暮らしに対する価値観を、多くの地域の人たちに伝えていきたいと新本社・モデルハウスがある敷地内にオープンしたのが「HARUMACHI coffee(ハルマチコーヒー)」です。社員として専属のシェフ1人と、バリスタを含むパート3人を新たに採用する力の入れようです。モデルハウスと統一感のある建物で、新潟県産の食材にこだわった料理や厳選されたトレーサビリティの確かな豆しか使用しない「スペシャルティコーヒー」を提供しています。
ハルマチコーヒーには、平日は30~40組、週末には50~60組が訪れるそうです。もちろん来店者が希望すれば、気軽に隣のモデルハウスを見学することもできます。
竹村さんは、「自然素材にこだわる当社の家づくりの考え方と完全にリンクしているカフェなんです」と説明しながら、「社員全員がハンドドリップでスペシャルティコーヒーをおいしく淹れられるテクニックを身につけ、新しいモデルハウスでそれぞれがお客様にコーヒーをお出ししながらコミュニケーションするといったことも考えています」と笑顔で話します。
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