見出し画像

「会わないとマネジメントできない」のは、経営者の努力不足

コロナ禍で働き方が多様化するなか、どのように部下をマネジメントするか。経営者やマネージャーにとって、大きな悩みの種になっていると思います。

ワクチン接種が進むと、おそらくリモートから出社に戻す企業が増えるでしょう。これは、多くの経営者やマネージャーが「対面の方がやりやすい」と考えているからです。

たしかに、会った方が色々とスムーズにいく場面も多いかもしれません。ただ、働き方もワークプレイスも多様化しているこの時代に、「会わないとマネジメントできない」ではダメだと僕は考えています。

今後の主流になるであろう出社・リモートのハイブリッドワークを前提として、どのように部下とのコミュニケーションを深めるか。今こそ、改めて考えるべきタイミングです。

たしかに、会わないと分からないこと、伝えられないことは多い

対面の方がマネジメントしやすいことは、実際たくさんあります。分かりやすい例は、体調やメンタルチェックです。経営者やマネージャーは、メンバー本人から「調子が悪いです」と報告を受けるより、彼らのふとした仕草から「調子が悪そうだな」と気付く方が多いのではないでしょうか。なんとなく声のトーンが低かったり、肩が落ちていたり、歩き方がいつもと違う。そんな小さな異変を、リモートでは察知することができません。

他にもリモートだと難しいのは、会社の“空気感”を伝えること。いわゆる「企業文化」です。周りのメンバーがどんな気概で仕事に向き合っているのか。何を良しとして、何を悪しとするか。こうした類のものは、上司部下の関係性だけでなく、他部署の人などナナメの関係性から学ぶことも多いです。

特に入社したばかりのメンバーは、対面でコミュニケーションをとった方が心理的安全性が増します。疑問に思ったことや困ったことがあったら、近くにいる人にすぐ相談できる。そんな環境があるだけで、働きやすさが格段に変わります。

「対面の方が良い」と感じるのは、圧倒的に情報量が多いから

そもそも、人はなぜ「対面の方がマネジメントしやすい」と感じるのか。それは、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションから得る情報が、僕たちが思っている以上に多いからです。

アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが1971年に発表した「メラビアンの法則」によると、人がコミュニケーションを取るときに相手から受け取る情報のうち、会話の内容は10%にも満たず、聴覚や視覚から得ている情報が90%以上なのだそうです。

会話の内容そのものである「言語情報」:7%
声のトーンや大きさ、速度などの「聴覚情報」:38%
相手のジェスチャーや視線、表情などの「視覚情報」:55%

目や耳から得られる情報は、リモートでのコミュニケーションになると一気に精度が下がり、範囲も限定的になります。ビデオ会議ならまだしも、音声やテキストだけでのやりとりだと極端に情報量が減ってしまうのは明白です。

リモートマネジメントのコツは、情報量の少なさを逆手にとること

では、リモートでのマネジメントは不可能なのか。僕は、けっしてそうではないと考えています。「情報量が少ない」というデメリットを逆手にとってしまえばいいんです。

たとえば、作業の進捗を確認するだけの会議。限られた時間の中で、決めなければいけない議題がたくさんあるミーティング。こうした場面では、情報量をぐっと絞ってしまった方がスムーズに進みますし、むしろ対面よりリモートの方が適しています。

また、新しいルールや制度を周知する際も、質疑応答などのキャッチボールが発生しない内容であれば、オンラインのテキストコミュニケーションだけで十分です。先ほど言った通り、人は話の内容よりも目や耳から多く情報をキャッチしています。メンバーにとっては、対面で説明を受けるとむしろ他の情報に気を取られてしまい、しっかり内容を理解できなかったりするからです。

こうして、情報量の少なさを武器にするマネジメント方法もあります。何を知りたいか、何を伝えるかによって対面とリモートを使い分けるのが、コロナ禍の新しいマネジメントスタイルです。「なんでもかんでも対面でやりたい」というのは、マネジメントする側の努力不足でしかないと僕は思います。

なにより大切なのは、上司と部下の信頼関係を築くこと

対面の方がいい、リモートの方がいい、というのはあくまで方法論に過ぎません。なにより大事なのは、マネジメントする側・される側の信頼関係を築くことです。

上司にとっては「リモートで大丈夫」でも、部下は「会って話したい」かもしれません。逆もまた然りです。そもそも日頃のコミュニケーションが不足していると、お互いの認識にズレが生じて、知らぬ間に溝が深くなってしまうこともあります。

働き方やワークプレイスが変われば、適切なマネジメント方法も変わります。これまでの“当たり前”が通用しない場面も増えるでしょう。経営者やマネージャーという立場にいる人こそ、従来のスタイルに縛られすぎず、新しい選択肢を積極的に取り入れてほしいなと思います。