見出し画像

会社は誰のものなのか、という不毛な議論

たまに「会社は誰のものか」っていうのが話題になることってありますよね。本やテレビ、雑誌やSNS、あとは飲み屋の会話とかで。

まず明確にしておきたいことですが、株式会社は株主のものです(合資会社とかだと違う)。

こんなことは会社を経営していたり、出資していたりするひとなら全員すべからく理解してることですが、経営とか株式とかとすこし距離があるひとは、実感として得づらいところもあるのもまた事実。

例えば会社が大きな利益を得て、それを社長が独占しているような場合、ちょっとムカつきますよね?

頑張ってるの俺たちじゃん、って。

誤解を恐れずに言うとそれは大きく間違っているのですが、今日はそのあたりについて少し書いてみますので、いま会社員として頑張ってるみなさんに是非読んでいただきたいと思います。

「んなもん、わかっとるわー」というかたはどうぞ こちら から他の記事を御覧ください

なぜ会社は株主のものと明言するのか

会社は株主のものである、と言い切りました。

事実そうですし、今回においては、社員のものだ、社会のものだなどといったふわっとした議論はしたくありません。

そもそも社員とは、会社法では株主のことです。
いくぶん衝撃的ではありますが、一般に社員と呼ばれる立場のひとのことは「使用人(会社の指揮・命令に従う人)」と呼びます。

会社は、株主が(多くの場合)自己の利益を得るために投資としてお金を出し、自らが経営者を指名して業務にあたらせるものです。

これ、個人に置き換えてみるとわかりやすくなります。

例えばあなたがお金を出して、自動販売機を設置することを決めたとします。

自動販売機をリースする代金や販売する商品の仕入に使うお金は、すべてあなたが払います。そして、実際に補充作業をするのは、あなたがお金を支払って契約した別のひと(Aさん)です。

このAさんは、自動販売機のメンテナンスの手配や売上の管理、さらにはどれが売れるかなどの予測も行い、何とか売上が上がるように知恵を凝らしています。

そしてその甲斐あって、Aさんに支払うお金や、仕入代金などを全て支払った上で、たくさんの利益が残りました。

この場合、この自販機は誰のものでしょうか。自販機が生み出した利益は誰のものでしょうか。

こんなの、明白ですよね。ぜんぶあなたのものに決まってます。

ただしこのAさんは、あなたから支払われる報酬が不服なら、契約内容に従ってこの仕事を断る権利があります。もし断られたら、他の誰かを探すことになってめんどうですね。

これが、株主を会社と社員の関係をすごく簡単に表現したものです。

会社の利益を社長が独占してもよいのか

次に

会社の利益を社長が独占してよいのか

という問題を整理しておきましょう。

ここで割と多くの人がふわっとしか理解できないのが、中小零細企業の場合

社長=100%株主

であることなんです。

みんな頭ではわかってるかもしれませんが、ハラオチてないというか。

だから、「社長だけがベンツ乗ってる、社長だけがうまい肉食ってる、社長だけが・・・」となりがち。僕も会社員のころ、特に若いころはそう思ってました。

ただ、これが大きな勘違いに基づいていると認識しなければなりません。これが雇われ社長だったらこんなことはしづらいのです。社長=100%株主だからこそできることなんですね。

社長は、立場上はあくまで「雇われ」なんです。どんな人も。そして社長がお金を払って始めた会社だとしても、別人格として出資者である株主が存在します。

この株主こそが神。

この神が会社の全権を掌握しつつ、クソ面倒な実務を社長以下経営陣と、その経営陣が雇用をした社員に、業務を遂行「させる」のです。そしてその対価として役員報酬と給与があります。

ただし多くの中小零細企業では、構造的には社長だけが出資者&経営者であることが多いから、社長だけが贅沢するんです。税法で経費として良い範囲内なら、会社のお金をある意味私的に使うこともあるわけです。

話題をちょっと戻してみましょう。

あなたがお金を出して設置した自動販売機。先程はAさんに運営を任せていましたが、もし自分で商品選定や補充作業をするとします。

その場合、次の仕入れや自販機のリース代、利益があることにより収める必要のある税金等以外のお金は、全部使っても誰からも何も言われませんよね。当然です。自分でお金を出して自分で動いているわけですから。

これと同じようなことが、社長だけが出資者&経営者の場合に起こるのです。

ただし、株主が社長でない場合、会社のお金を自由に使うことはできません。「利益から配当金を出せ」ということは可能ですが、あくまで利益が出てからのことです。このへんはちょっとむずかしいかも。とにかく社長=100%株主の中小零細企業が最強だということです。

これが、例えば出資者が創業期オリジナルメンバーの役員3人とかだったら、その3人ともが決算書などの経営に関わる情報は全部見ますから、社長だけが贅沢するということはできません。株主総会を3人で開いて解任することもできます(ただしこの場合でも株主は継続)。

そういった制約がある代わりに出資したお金も3人で分担ですから、リスクも低いということです。

ここまでご理解いただけましたでしょうか。

会社と社員の幸福な関係とは

ここまで書いたことを整理します。

会社は株主のものである。
中小零細企業では「100%株主=社長」がほとんど。
株主は会社の中では(法の範囲内で)神である。
したがって事実上は「社長=神」である
ただし社員や役員は離脱する自由が保証されている。

これを踏まえて、会社と社員の幸福な関係を考えてみます。

まず大前提として、社員や役員は、自由に会社からの離脱が可能です。この大前提があるからこそ、適切な給与や報酬を支払い、社長だけが富を独占することなく、会社を健全に運営していく必要が出てきます。

ただしそれは、社長が社員や役員に「やめてほしくない」と思っている場合に限ります。

「べつにお前らの代わりなんていくらでもおるんやで!」

っていう社長(=100%株主)だったら、当たり前ですが自分だけで会社の利益を独占しようとするでしょう。税法云々で処理方法は色々ですが、社長(=100%株主)にはその権利がありますから。

だから、いい会社に勤めたい、相互によい関係を築きたい、と思っているなら、結局の所

会社は社員にとって色々な意味で、いい会社であろうとすること

社員は、会社に貢献できる社員であろうとすること

しかないわけです。

この関係がアンバランスになれば、基本的には退職という選択を取らざるを得ません。資本主義って割と効率的に最適化される仕組みだなーと思います。

今日のまとめ

会社は株主のものです。そして会社の利益も、株主が投資のリターンとして受け取るべきものです。

また、株主が社長であることから↑の株主の権利は、多くの場合社長の権利となります。

この仕組を理解した上で、会社と社員の良い関係を双方でつくりあげていけるといいですよね。

僕もがんばります。

それでは、明日もなんか書きます。



経営やお仕事について発信してるTwitterやってます。よかったらフォローお願いいたします。https://twitter.com/sato_rollin サポートよりフォローのほうが喜びます!