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トイレ本 私が密室で読んだ本

トイレで本を読む事は風水的に最悪の行為らしい。

そもそも紙は邪気を吸い込むということでトイレットペーパーでさえたくさん置かない方が良いらしく、それでいくともちろん紙でできた本をトイレに置いておくことは邪気を溜め込む行為、との事になるわけだが私は風水をはじめとした占いの類を信じてはいない。。。信じてはいない、が、でもなんとなく気にはなってしまう。

実家のトイレには本棚があった。

読書家の父親がトイレの中で用を足す時に読むための本が置いてあった。本と言っても短編集や気軽なエッセイ、タレントが書いた書評なんかもあったように思う。

子どもでも労せず読める軽めの本たちが、邪気を吸い込みながら自分の出番をじっと待っていた。

その中の1つにサントリー社が出していたお酒にまつわるエッセイを集めた期間紙があった。中を見ると著名な人たちのお酒にまつわる話が詰まっていて、不浄の場所から神聖なバーへ、まだバーにハマる年でもないお酒の味もよくわからないのに、想いを馳せたりしていた。

そんな時代から時は流れ、わたしの生家は引き払われ不浄を溜め込んだトイレもろとも更地になった。

その頃もう私は成人になっていたので私は自分だけの空間を手に入れていた。

しかし、私の家のトイレにもやはり不浄を溜め込む本たちが出番はいつだと静かに主張し居を正し座っている。気づけば血の轍を自然と歩いていた。

1日のうちでトイレにいる時間は短い。そしてわたしは決まって朝、ご飯を食べて会社に向かう準備の最終段階としてトイレに入ることが多い。座っている時間はものの数分。最近の風潮からおしっこをする時でも座ってるするようになったがそういう場合は本など読んでいる暇はなく、読書時間にはカウントされない。体から大きなものを排出するあの時間。あの時間に全てをかけて手に取り数ページ読み進めて閉じてまた同じ場所へ戻す。

あの数分。

あの数分の間を満たすために適切な本がある。
そしていくつかの約束事がある。

決して興奮して手が止まらなくなるような長編小説を置いてはいけない。痔になったら取り返しがつかない。健康は第一だ。

決して興味深くて手が止まらなくなるようなルポタージュを置いてはいけない。密室の中で感情の起伏が起こるようなものは避けたい。どうせ今は座っているしかないのだ。

決して怖いけど気になって手が止まらなくなるようなホラー小説を置いてはいけない。トイレの中で怖くなったらそれこそ逃げ場が無い。

なんとなく日々の徒然とした話、さらりとした短編、民間伝承、マンガなんかも適していると思う。

そんなトイレに居座り不浄を溜め込み鎮座しているdopeなトイレの神様たちを今度から紹介していきたい。

ちなみにトイレに本棚を構えた父親はただ今80歳、かくしゃくとそして飄々と生きている。

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