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ギリシア神話の太陽神が男性で、日本の天照大神が女性であることについて考えてみた

ギリシア神話の太陽神と言えば、多くの方はアポロンだと考えると思います。しかし、アポロンが太陽神とされるのは後世からであり、古代ギリシアにおいては太陽神はアポロンではなくヘリオスとされていました。事実、古典ギリシア語や現代ギリシア語でもήλιος(古典読み:へーリオス、現代読み:イリオス)は太陽そのものを表します。

対して月の女神はセレネと言われています。ヘリオスと同様、神の名前は月そのものを表す普通名詞でもあります。

太陽神ヘリオスは(混同されるアポロンも)男の神であり、セレネは女の神です。古代ギリシア人の感性では、一般的に、天や昼が男性的、地や夜が女性的とされており、天と昼の属性であった太陽は疑いようもなく男性神とされました。

日本神話は真逆 太陽は女神、月は男神

まだデルタ株が爆発する前、伊勢神宮を参拝した時のことです。外宮・内宮を巡り、締めとして月夜見宮に行きました。その時、ふと「日本神話って、月の神って男なんだ。ギリシャ神話と逆だな」と気付くことができました。

私は御朱印集めを細やかな趣味のひとつとしているものの、日本神話や神道にはそこまで詳しくはありません。そのため、気付くのが少し遅れましたが、言われてみれば天照大神は女神で、月読命は男神です。この点では、古代ギリシア人の感性と昔の日本人の感性は、真逆ということになります。

天照大神、実は男だった説

少し調べてみると、天照大神が「なぜ女神なのか」という問いは有名らしく、実は天照大神は元は男神で、後に女神へと改変されたという説があるようです。

天照大神が男だったという根拠ですが、天照大神の別名「天照坐皇大御神御魂」が男神と同一視されていたり、朝廷が伊勢神宮に献上されていたのが男性用の服だったり、ところどころで天照大神に男の影が見えるようですね。女神になった理由としては、天皇家の事情で改変された説や、太陽神を祀る巫女が神格化・同一視された説など、色々あるようです。

私の専門外なので深くは立ち入りませんが、上記理由だけでかつては男神だったと確定することはできないものの、ひとつの見方としては面白いと思います。

本当に太陽=男は「世界のスタンダード」なのか?

なぜ天照大神が女神なのか?という問いは、太陽神は男であることが普通という観念が根底に流れています。私が少し調べただけでも、「世界の神話では太陽神は男であり〜」という言説がチラホラ見られました。

確かに、世界的に有名なギリシア神話は太陽神は男性で、月の神は女性です。エジプト神話でも、太陽神は男性です。しかし、同じく有名な北欧神話は、太陽神ソールは女性で、月の神マーニは男性です。これは、「古エッダ」という写本でソールが「天の花嫁」と呼ばれていることからも明らかです。

メソポタミア神話の太陽神シャマシュも、基本的には男神とされているものの、かつては女神だったという説があります。

世界の神話を網羅的に調べたわけではありませんが、パッと思いつく程度でも上記のような例外がすぐに出てきます。従い、太陽神=男というスタンダードは、そもそも存在しない可能性があります。

太陽信仰の起源は非常に古いと考えられるが故に、その神が男なのか女なのか、その違いがなぜ生じたのかをやはり気にしてしまいます。その問いに答えるとしたら、世界中に多様な神話伝承があるように、世界の見方は人それぞれ多様で異なっており、「これが普通」なんてことは何一つ無かったということだけは言えると思います。

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