「文春砲」の性暴力報道

『週刊文春』が発売されてから3年たちました。そのほとんどの期間、私は沈黙していました。その間の時間のほとんどは、この問題を考えることに用い、社会とのつながりは、ごくわずかだけでした。緊急時の呼び出し、つまり行方不明になった認知症の人々が出た知らせが入った時に、その捜索に駆けつけるボランティアくらいしかしておりません。

週刊誌報道によって、私は社会的制裁を受けました。以降は自分の名前も公にはできない状態になりましたから、いわば社会的存在としての私は消えた状態でした。

そして、週刊誌に書かれた問題を考えて、自分の気づきや心の動きも含めて書き留める仕事に集中してきました。

しかし3年かかっても、歩めた距離はわずかという状態です。

私は、多くの人々に現在考えていることを、議論の俎上に載せることと、説明責任の一端を果たすことを目的に、『週刊文春』の記事と、デイズジャパン検証報告(以下、『検証報告書』)を中心、これまで考えたことをお知らせすることにしました。

これは十分ではないことは自覚しています。お詫びします。

当初は第一部「何が起こったか」、第二部「なぜ起こったか」の形で書き始め、事実関係として自分で把握できた段階で、それに対するお詫びを書くことを考えていました。しかし、自分の健康状態を考えると、お見せできる原稿が「これでいい」という段階になるまでにどれくらい時間がこの先必要になるかわかりませんでした。

そこで今の段階で私がお見せすることができる部分だけでも、お見せしようと思いました。

最後までお読みいただけましたら幸いです。

2022年3月4日 
広河隆一

目次

1章 週刊誌報道の「事実」が一人歩き
2章 『週刊文春』取材録音データ
3章 どこまで責任をとれるか?

4章 「レイプ」
5章 反響
6章 『DAYS』最終号とシンポジウム
7章 デイズジャパン『検証報告書』
8章 欠けたピース


ここでの記述には二次被害を引き起こす可能性がある箇所もありますので、読む際にはご注意ください。

ここでは、月刊誌『DAYS JAPAN』を基本的に『DAYS』と表記し、『DAYS』を発行する株式会社デイズジャパンをデイズ社と表記する。

また、読者と用語の概念を共有する一助とするために、ここに広辞苑(岩波書店)の最新版である第7版(2018年1月12日発行)に書いてある説明をいくつか表記しておく。これは広辞苑が最も信頼できるという意味で用いているのではないが、あくまで私がどのような意味付けでこれらの言葉を用いているかということの参照のためである。     

なぜならこれらの言葉を巡る環境がいま大きく変化しており、様々な解釈が表れていて、用語の統一がなければ意味がかみ合わないことがあるからだ。広辞苑による解説は専門家や活動家にとっては古い解釈とみなされることがあるかもしれないが、これを読まれる大多数の人々の解釈と理解を判断するには助けとなるのではないかと思えた。


ぼうりょく〔暴力〕 = 乱暴な力。無法な力。なぐる・けるなど、相手の身体に害をおよぼすような不当な力や行為。

せいぼうりょく〔性暴力〕 = 主に女性や幼児に対する強姦や性的ないたずら、セクシャル・ハラスメントなどの暴力的行為。

レイプ = 強姦

強姦 = 暴行・脅迫の手段を用い、または心神喪失・抗拒不能を利用して女子を姦淫すること。無理やり女性と交わること。

二次被害 = (広辞苑には記述なし)

セカンドレイプ = 性暴力の被害者が被害を公にすることが周囲の誤解や好奇により、二次的に精神的苦痛や不利益を被ること。




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