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【ブルーマウンテンMBA戦記-1】▶IPOを目指す企業の経営企画部門に求められるスキルについて

2019年に当社、東証マザーズに上場し、その準備期間から経営企画部門長としてやらせて頂いたわけですが、振り返ってみると「こういうスキルが重要だった。」というのがよりクリアに見えたので、IPO前後の経営企画部門の在り方、もっというとどういった経営企画マンであるべきかについて、反省も含めて書いておこうと思います。これからIPOを目指す企業の方、経営企画部門の採用を考えている方、よければ参考に。
あと、IPO近辺の仕事でやっていきたいという経営企画系の方、スキル修得の参考に。
【IPOにおけるコーポレート部門の役割について】
IPO時、特に新興企業のコーポレート部門というのは、基本的に経理部門+総務部門の場合が多いと思います。税務申告をするために必要な経理部員数名、そして営業をサポートする必要最低限の総務スタッフが常駐、といった形で、役割としては「売上を作る営業部門のサポート70%、納税するための機能20%、社長はじめトップ層の所用・特命事項10%」という感じなのではないかと思います。経理とそれ以外、みたいな体制です。
ここから、監査法人のショートレビューに始まり上場会社になるために管理体制を整えていきますが、大まかには下記タスクが増えていきます。
・取締役会や株主総会の運営
・内部監査
・組織体制の構築(財務・経理の分離、内部統制、CG対応、コンプラ委員会等)
・事業計画の策定、予実差異分析
・監査対応
・決算(早期化)
・IR
・上場審査対応(上場前3.4年前~)
【経営企画部の立ち位置について】
本来的に、経営企画部というのは必要か不要かでいうと、不要な部署です。(例えば営業、経理、経営者、総務という部門との比較においての必要性。)ただ、ある程度の規模の会社には大抵経営企画部門チックな名前の部署があります。特にIPOを控えていると、上記のような今までには存在しなかった仕事の受け皿として、またはオモテにはあまり出さずに処理したい特命部隊みたいな感じで2~3人、多くても本体は5人体制くらいでまわしていくことになります。
なので、経営企画部門というのは会社によってあり方が最も異なる部門だと思います。単なる社長の特命部隊の場合、人事から予実まで、何でもやっている場合、成長ステージが進んで展開域が広くなったり、M&Aが盛んになるとまた毛色の違う感じになると思います。
ゆえに、経営企画部門といってもその会社ごとで求められるスキルは全く異なり、スキルレベルも異なり、どこの会社にもあるのに汎用的なスキルが明確に定義されておらず、のほほんとしていると全く使えない「中途半端に色々できる人」ができあがり、困った将来を送ることになります。(きっと)
これはある程度経営企画歴のある人なら理解してもらえる危機感だと思います。
会社規模が大きくなり、仕事が分業化され、または高度になるにつれて経営企画部門の在り方は変わるうえ、会社の成長スピードを上回る進化をしていかないと、ツカエナイ存在になることを意味します。
私自身、スキルアップしたいと思ったときに、自分の中の問題意識が漠然としていて、一歩を踏み出すのに苦労しました。
【経営企画パーソンのコアスキルについて】
会社としては、その時々で必要な人材を必要な場所に充てていくことになるので、別に経営企画部門の人間、同じ人間を継続的に使えなかったとしても問題ありません笑。(そこまでの会社の歴史とか特性、業績情、IR上の癖を熟知している人がいなくなるとそれなりに面倒だとは思いますが。)
そういう意味では、会社の成長に合わせた経営企画部門の在り方というのは、会社の求めるものと、その部門(もっというと部門長)がこなせる仕事に合わせて変わるものだと思います。だからこそ、IPO前の段階~IPO後の成長ステージにあってコアスキルとなるようなものを認識し、意識的に伸ばしていくことが非常に重要です。これは経営企画「マン」にとっての話ですが、会社にとっても、会社の重要事項を扱う経営企画部門の人間が成長し、会社の成長をリードするというのは非常にプラスだと思います。
結論からして経営企画パーソンのコアスキルは下記の7つだと思います。
1. 納期管理、タイムスマネジメントスキル
とにかく、それまで会社が経験したことのない仕事をどんどこと潰していかないといけないので、その会社においてスピードスターである必要があります。そうでなければ「忙しいならこれは総務部でやりましょう。」とかってことで、仕事が回っていってしまいます。経営企画部が勃興したということは、あらたな成長ステージなわけで、新た生まれる仕事は全部取りに行き、必要に応じて他の部門に「落としていく」というくらいの意識でいいと思います。
あとやはり上場準備というのは仕事量がそれなりに大量になるので、少人数で切り分けていくことが存在対効果の面でも有用です。
2. 財務会計スキル
管理会計も確かに大事ですし、会社のKPI特定の為に統計系のスキルも大事なのですが、やはりベースになるのはP/L、B/S、C/Sを理解し、財務3票のモデルを組んで財政状態を把握、説明できる理解力だと思います。
公認会計士を働きながらサクッと取得できれば理想的ですが、優先順位や投下時間から、なかなかそうもいかない場合が多いので、簿記試験や通信、その他の書籍などで補完的にやっていく場合が多いのではないかと思いますが、とにかく必須です。
また、仕事しながら継続的に学んでいくことが重要で、上場準備でいえば、監査対応は経理部門がやる、ということではなく、特に上場準備段階では事業の内容自体とのリンクが重要なので、経営企画部門が主導するくらいの考え方がいいですので、経理部門以上に会計数値と現場のつながりを理解しておくべきだと思います。
3. コミュニケーションスキル
感覚値として、社内の全部門とやり取りすればするほど、経営企画部門の存在意義は増していくものだと思います。属人化するという意味では組織の拡大と逆行する考え方かもしれませんが、いい経営企画というのはいい潤滑油たるべきだと思います。
社内に対しては嫌なことも言わなければいけないし、上場審査においては東京証券取引所の審査担当者とうまく渡り合っていく必要があります。なので、営業部とかよりも、いい関係、物が言える関係、貸しを作っておくみたいなやり方には長けていたほうがいいと思います。
IPOのn-1で証券審査は審査とはいえ、かなり会社寄りで進めてくれますが、東証審査では現場でのニュアンスや雰囲気が微妙な局面があり「求められた資料はちゃんと作ります」だけだと片手落ちです。うまく機微をつかんで、話の流れから切れる仕事は切り、重要な部分に力をかけるという作業が重要です。(なんの仕事でも共通だとは思いますが。)
4. IRスキル
メガベンチャー含め、VCからの調達がハードな会社ではIPOより大分前の段階から「会社の見せ方」には気を使うと思いますが、これは証券会社との協議で類似会社のユニバースを組成したり、ロードショー、条件決定あたりから急速に必要性が出てきます。
(まったく私も偉そうに言えませんが。)上場後も、3か月ごとの決算のたびにどうしたものかと頭を悩ませることになります。上場した以上は、株価というのは多かれ少なかれ重要な指標であり、努力目標が何らか設定される場合が多いと思います。
IRは、会社ごとにすべてが異なるので、結構孤独な戦いが続くものだと思います。(他社のIR担当と話してもここは結構一致。)意識的に他者の資料を勉強したり、株式投資に興味を持ってみたり、努力は無限に出来るのですが、手ごたえを得にくいという部分もあると思いますが、奥深い分野だと思います。
5. ビジネス全般への理解
上場後、経営企画部門というのは自由が利く部門だと思います。守備範囲が他の部門より自然と広いはずなので、社外とのかかわりも持とうとすればいくらでも持てます。そのため、社外から有益な話を社内にフィードバックし、それを利益につなげていく、営業をバックアップしていく、というのは重要な存在価値だと思います。自社のビジネス理解は当然ですが、周辺事業の理解もかなり重要だと思います。
他の部門からすると「やたら色々知っているよね」くらいに思われるようでないとだめだと思います。
6. ネットワーキング
上記の続きですが、役員とか営業部から必要に迫られて協業先や人を紹介してもらってばかりではだめだと思います。
積極的に外に出ていき、社内外へアウトプットしていく必要があると思います。
インプットとアウトプットのバランスは基本インプットが多くてしかるべきだと思いますが、アウトプットがたくさんできる経営企画は貴重だと思います。(偉そうなこと言えませんが、自分も心掛けています。)
7. マーケティング
経営企画部というと、事業戦略とか、フレームワーク使ってがりがりやっていくイメージがあるかもしれませんが、多くの会社は役員レベルで全体の戦略が決定されるので、経営企画部門とはいえ、会社の全社戦略を左右するとまでのことはないというのが実態だと思います。(ここは力をつけて、ガンガン前に出たいところですが。)
ただし、例えば社内のローデータから読み解いた結果を会社の方針の方針にフィードバックしたり、新しい動きがあり、トップも迷っているときに、そこに示唆を与えるようなアウトプットができると、かなり価値ある経営企画たりえるのだと思います。
ここは能力の高低というよりはタイミングだとか、相性、影響力などいろいろな要素があるので、うまく整理できていないですが、特に同業界内における自社の位置を把握し、直近で自社が抱えている課題に対する打ち手をうまく解決できる手を事業部とともに取り組んでいけると、非常に楽しい仕事になるのではないかと思います。
つまりマーケティングの本質的なところだと思います。
新規事業とかやっていく場合はその業界なりの知見とかも必要になると思いますが、経営企画としてしっかり機能できる(IPO前後の段階で必要性の高い経営企画になるため)にあたってのコアスキルは上記だと思います。
また、言うまでもないことですが、スキルの修得の土壌も含めて、向上心とか熱意というものは必要不可欠なので、ここまでスキルスキル言ってきて覆す用ですが、最も大事なのは、継続的に高い熱量を維持できることだと思います。
「高い熱量を維持する方法やそのあり方」については、今回は触れません。
自分の反省含めて書いてみました。

【次回】▶管理系部門での統計学の活用について
https://note.com/ryuheimatsumura/n/n2c5e332d31c9

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