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稽古“前”日誌1【小劇場演出家の日誌】

本年の企画構想が完成した。
本年は自団体での創作が主になりそうだ。

昨年は、Willow’s『夏の夜の夢』、木川企画『The Dumb Waiter』の2作にて、
劇団として作品作りをする環境を整えることができたと、満足のいく年だった。
今年は強化した劇団体制、およびクリエイション力を活かし、
いままで創作を共にしたことがない俳優との創作を目指そうと思う。

昨年の11月末日、前出の『The Dumb Waiter』の千秋楽を終え、
3年ぶりに稽古場を持たない日々がやってきた。
若手演出家コンクールの結果を待ちながら、もう一度知識の習得、
いわゆるインプットの作業をとることとした。
(というのも、23年6作の演出を手掛けたため、
知識が出がらし状態になっていたことに気付いていたからである。)

そんなわけでこの3か月間、様々な創作、著書、
人、思想に触れ、時に様々な人と議論を交わしてみた。

いよいよ3月となり、本年の創作に向けた準備が始まる。
3月には「脚本草案の執筆」と「劇団員WS」が控えている。
いよいよアウトプットの日々が近づいてきたな、と奮い立つと同時に、
未だ知らない未知の世界への恐怖に震えがくるようだ。

タイトルの通り、備忘録的に今年度の創作の役にたちそうなものを記録していく。
またこの日記をきっかけに、演出家の友達が増えたらいいな、などと思っている。
本当に、演出家の友達が欲しい。最近、方々に向けて言っているが、欲しい。

本題。
本日は「6つの認知特性」について。

先日、働いている会社にて障がい者雇用の研修があった。
私の大学でのゼミ活動のジャンルがまさに障がい者雇用と働き方についてだったので、
改めて以前習得した知識を学び直すことになった。
そこで登場したのが「6つの認知特性」である。

1視覚優位 写真タイプ
2視覚優位 三次元映像タイプ
3言語優位 言語映像タイプ
4言語優位 言語抽象タイプ
5聴覚優位 聴覚言語タイプ
6聴覚優位 音タイプ

の6つに分類されるのは、人間が物事を認識するときに、
五感からいかに情報を取り込み、記憶して、理解・表現するかの特性である。
細かい説明は省きますが、興味のある方は「6つの認知特性」で検索してください。

私はインターネットで入手したテストをしてみたところ、

2、3、5の数値が突出しており、6が他に比べ劣っていた。
詳細に調べていくと2の特徴として、地図を読むのが得意や一度来た道を忘れない。
3の特長として、文章を読むときに映像として理解する。
5の特長として、授業を聞いただけで覚える、テレビのセリフを一度聞いただけで覚える。
という特徴があり、驚いたことにどれも実感として納得のいく内容だった。

逆に6の特性が苦手で、情報を受け取る際に言われるだけだと全く覚えられない、という特徴も一致した。
これは劇団員の皆さんは思い当たる節があるだろう。
私はよく別の作業中に言われた内容をすっぽりと忘れて怒られることがある。稽古中に口頭で伝えられたNGや電話で話した内容などは特にひどい。
別の仕事をしている際も、車を路肩に停めて電話に出たときの内容は、目的地に着くとすっかり忘れてしまうことが良く(頻繁に)ある。
※対策としてリマインダーを使ったり、ノート・白板に書いてもらったりしています。

稽古に導入したいと思ったのは、俳優が情報を理解するのにどのアプローチをするかを可視化できると思った点です。

常日頃より稽古に向かう準備として、俳優さん一人ひとりへの伝え方のプランを用意しています。
演出の仕事として、感覚の違う人間を同じ空間にたたせ、同じ世界を共有させなければなりません。
そのためAという人にBという人の考えを伝える際、Bさんの言葉を「Aさんの世界の言葉」に変え、
二人と私の三人で通じる「C語」を作成する、というのが稽古で行っていることです。
この作業の最適化のために、俳優の認知特性を把握することが、かなりのアドバンテージになるような気がしています。

また、観客に情報を提示する(演出をつける)際にも適用できるのでは、と考えています。

観客が情報を舞台から受け取る際も、この認知の特性があり、一人ひとりの認知には優位不利があるはずです。
そのため一つの作品の中で、情報の提示を6つに分類し丁寧に演出すれば、
作品への理解度が格段に高くなるのではと考えています。
いままで私の作品は、ミザンス(立体)による効果、発話による効果、の2点が評価されることが多く、
まさに私自身の認知特性に依ったものであると気づきました。
照明・音響については他の演出家に比べ苦手意識があったのですが、
照明を使った一枚絵としての効果(平面)、音響を使用した効果(聴覚・音)と考えを改め、
情報伝達の手段として捉えると、私の得手を活かし、さらに取り組めるような気がしています。

早く稽古がしたい。

あまり書きすぎると次がつっかえるような気がするので、本日はこの辺りでやめておきます。

演出家 木川流


PS.
私が現代創作を手掛ける劇団、イマにヒとコヘ(え)の
WSオーディションの情報が公開されました。
私の演出や花香の脚本に少しでも興味を持っていただける方は、是非ご検討をお願いいたします。
皆様と稽古場で出会える日を心待ちにしております。

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#オーディション #舞台

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