R. NAKANO

サッカー指導者 |NumberWebにて「機上の空論」連載中

R. NAKANO

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最近の記事

2022

2020年に指導者になって、3年目が終わりました。 家族を連れてきてまで、コロナと戦争と(物理的に)これだけ近い国で挑戦を続けた時間は、僕にとっては長く重たく、同時に『何のために?』を自問し続ける時間でもありました。だって意味わからん。日本帰れよ。 認めてしまえば、そこから「ジブン!海外で!頑張ってマス!」みたいな自己陶酔を引いてしまえば、そこに意味などひとかけらも残っていなかったのかもしれません。 チームにはウクライナからの難民選手がいました。彼は戦地から避難せざるを

    • 近況と心境

      ラトビアという国で、労働許可をもらって働くようになって8年目になる。 この国は、1991年にソビエト連邦から独立した。ベラルーシとも、ロシアとも国境を接していて、僕はいま、キエフから1000キロ離れていない場所で生活している。家族を連れて。 ラトビアにはラトビア語があるけれど、とりわけサッカー業界ではロシア語話者の割合が多く(たとえば僕は7人の監督の下でプレーしたけれど、その7人全員が指示もミーティングもロシア語で行っていた)、選手同士もロシア語を話すことが多かったし、僕

      • 父親

        「とーとー!!」 帰宅して家のドアを開けると、 2歳半の娘が駆け寄ってくる。 ぱすん、と膝にしがみついてくるその小さな衝撃と、ずり上げた顔に広がる好奇に溢れた笑顔、たった1秒足らずのその一連が僕の身体を通り抜けるだけで、すべてが(本当にすべてが)好転している確信が持てる。 3歳で父親を亡くしている僕にとって 「父親になる」ということは、概念としても、継続的な日常行為としても、得体の知れない挑戦だった。(誰かにとっての大きな挑戦というのは、世間にとっては取るに足らない小さ

        • ヒコーキ

          =note書こう。 と言うことで書きます。 長いの苦手な人は【移動2日目】から読んでね 【渡航前日】 EU、入国許可国リストから日本除外へ EU、日本からの渡航を原則禁止 このニュースが日本に流れたきたのが1月27日。 僕のフライトは1月31日。なんでやねん。 全スーツケース(6個)空港に送ってあるし、向こうの新居も契約してるし、現地の保育園も話がついてる。というかそもそも飛べなければ、僕はそのまま無職となる。EUと見せかけて無職に入域。やかましいわ ちなみに「

          才能

          小学4年生、初めて同じチームになったアイツは、身体が大きいだけで、あんまり上手な選手ではなかった。初めはAチームにも入れずに、ボールの蹴り方もトンチンカンで、やたらと声を出すだけのうるさいやつだった。 けれども結局、俺たちはそのまま9年間、同じチームでサッカーをすることになった。 そうしたらアイツは、18歳でJ1デビューして、そのまま14年間を日本のトップリーグで過ごす選手になった。 それで、こないだ引退を発表した。                         

          じゃんけん

          このご時世、誰かにイチャモンをつけたければ、後出しジャンケンをすればいい。 何の分野においても、これだけ情報が溢れてるのだから、揚げ足をとるのも、論破するのも、まったく難しいことじゃない。 先に論破してくれた誰かに乗じるのはなおさら簡単。それっぽく同意しておくだけで「スタンス」が取れる。 反対に、アクションを起こして、自ら動いて、発信して、そうやって勇敢にジャンケンに挑めば、後出しには必ず負けてしまう。 いまの世界で「隙がひとつもないもの」なんて存在しないから。(それ

          じゃんけん

          無観客によせて

          無観客試合が行われている。世界各地で。 観客のいないサッカーに、どれくらいの価値があるのだろう。 たとえば音楽を聴くとき。 特に僕のような「音楽的知見」の全くない人間が、なにか曲を聴いて「良いなぁ」と思うとき。 僕が感銘を受けるのは、メロディラインの緻密さでも、研ぎ澄まされた音質でも、そのビブラートでもなく、それを聴いている「場」と「心情」が、音楽を媒介にして温度を持ったまま記憶されるからに他ならない。即興で作られた恋人の鼻歌や、旅行の車中で流れたラジオ、失意の夜に聴

          無観客によせて

          聞いて

          こんにちは。みんな聞いて。 聞いて欲しすぎて題名を「聞いて」にしちゃうくらいだから聞いて。 僕が5年も暮らす、人口たった190万人の、日本人は誰も位置を正確に言えないで有名な、「今度遊びに行くわ!」って言うだけで誰ひとりとして来ることがない、冬はマイナス25度に到達する、あのラトビアが!僕の溺愛するラトビアが! コロナ対策で(いまのところ)とっても褒められています。キラーン ーーーこの記事の抜粋を、僕の周囲のことと併せて書きます。ちなみに僕の英語訳の精度に関する指摘はノ

          聞いて