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なにかの手違いで君が僕を好きにならないかな

深夜のコンビニに陳列されたお酒。以前まで冷蔵庫の中に入っていたお酒は、惣菜コーナーに移動している。居酒屋などで、お酒を提供できない皺寄せがコンビニにやってきたのだ。

そんな僕も居酒屋難民の1人で、ハイボールを目当てにコンビニに来た。御目当てのハイボールと揚げ物を購入し、コンビニを後にする。

ふと空を見上げると、満点の夜空が街を綺麗に照らしていた。月は人々が安心して明日へ向かうための常夜灯みたいなものだ。そして、無数の星が月の明るさをさらに引き立てている。

星が降る。願いを込める。3秒以内に願いを3回も言えたことはないけれど、流れ星に願いを込めるだけで、君に会えるような気がした。でも、実際は会えるわけもなければ、それが電話をかけていい理由になんてならないのが現実だ。

ちなみに彼女のことで知っていることといえば、名前ぐらいで、そのほかはなにも知らない。どんな仕事をしていて、どんな場所に住んでいて、どんな趣味があって、好きな食べ物はこれとかそういった類いのものを知りたい。

連絡先さえ知っていれば、彼女に直接聞くことができるのに、連絡先すらも知らないのだ。その程度の距離感だから彼女は僕のことを認知していないのかもしれない。

君も同じ星を見ているのかなとか、少しぐらいは僕のことを考えていたりしないかなとかそんなことばかり考えている。こっちから仕掛けなければ何もはじまらないのに、ずっとなにかのきっかけを探しているのだ。

彼女は青が良く似合う。いつも青色のワンピースをモデルみたいに着こなしている。カバンも青色だから、青が好きなのかもしれない。青が似合う女性は、空がよく似合う。雲ひとつない晴天の空の下、緑が広がる草原で、写真を撮らせてほしいものだ。

とはいえ、彼女との距離感は一向に縮まらない。この調子ではお付き合いどころか、連絡先を聞くだけで日が暮れてしまう。いや、もう今日は日が暮れた。だからやけ酒をするために、深夜のコンビニに足を運んだのだ。

なんの進展もないまま夜が明ける。ハイボールと揚げ物だけが勇気のない僕を慰めていくれるのだ。

臆病者になりたいわけじゃない。でも断られたらどうしようとか、嫌われたくないとかそういった類いの不安を抱えるたびに、つい足がすくんでしまう。誰かが背中を押してくれたり、根回しをしてくれれば楽なのに、これに関しては、じぶんが踏み出さなければなんの意味がない。

もし、誰かに彼女を取られたらどうしよう。いや、あんな可愛い彼女のことだ。もうすでに恋人がいるかもしれない。もし恋人がいたらそいつにはきっと勝てない。こんな臆病な僕が勝てる相手なんていないはず。

センスのいい彼女は、きまってセンスのいい男を恋人にしているはずだ。筋肉質で、頼り甲斐があって、お金持ちの誰からも羨ましがられるような素敵な男性。いるかいないかわからない彼女の恋人が、今夜も僕の邪魔をする。

でも。僕は彼女と晴れて恋人同士になりたい。たとえ脈がなかろうと、明日になったらせめて連絡先を聞くぐらいはやってみせるから、首を長くして待っててよ。

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