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人が集まる場所について考える。CUasia2020のススメ。

コワーキングオーナーとスタッフたちが世界から集うCUasia終幕。

Weworkの話題あたりから、日本でもコワーキングスペースという言葉は認知度を徐々にあげてきているところですが、世界中のコワーキングスペースのオーナーやスタッフ達が一堂に介し、1週間の間、共に暮らしながらあらゆるテーマを元に議論するイベントが、インドネシア・バリ島で開催されました。Coworking Unconference Asia2020。

6年目を迎える今年、2度目となる参加を果たしてきました。コワーキングという名前がついているので、もちろんコワーキングスペースのあり方がテーマではあるのですが、そこから通じるこれからの働きかたや、人が集まる場所が持つ、地域とのつながりの可能性など、コワーキングスペースに限らず、宿泊施設や公共スペースなどにも大いに役に立つ内容が目白押しなのが特徴です。

イベントタイトルにアジアという言葉を冠しているのですが、バリでコワーキングスペースHubudを運営しているSteve/Reneeがカナダ出身の白人ということもあって欧米からも多数参加しており、もちろんオールイングリッシュで行われます。イギリス、カナダ、ポルトガル、ドイツ、アメリカ...コロナウィルスの影響もあっていつもよりも半分くらいの参加者だったとのことですが、それでも150人近くの参加者が集まりました。

一方で、今年のイベントには日本から15名以上の参加があり、開催国・インドネシアのスタッフらを抜くと、参加者出身国ではナンバー1。主催には一切関わっていない国でありながら、昨今の「働き方改革」や「地方創生」「空家再生」といったトレンドのもとに、日本のコワーキングスペースに関する意識・関心の高さも伺えます。中には長野県・木曽の地域おこし協力隊の方々もいらっしゃっていました。

コミュニティ、コミュニティ、コミュニティ!

このイベントでは、事あるごとに「コミュニティ」というキーワードが会話に出てきます。コワーキングスペースを持続可能なビジネスにしていくために、スペースの場所がしではく、共に過ごす空間を、どうやって快適にしていくか。Co-work(共に働く), Co-live(共に暮らす), Co-create(共に創る), そして、Co-giving(共に与える)。「共に〜する」概念のあり方がテーマで議論するので、コワーキングスペース論に止まらず、空いたスペースをに賑わいを取り戻そう、それがコワーキングであれ、あるいはゲストハウスを作ろうであれ、そういう思いがある方には、うってつけのイベントです。

ちなみに、日本チーム集合写真の僕の隣に日本の国旗がついたパーカーをきている少年はインドネシア人。インドネシアの有名なアパレルブランドのいくつかに、日本の国旗や文字を使ったデザインがあるようで、人気とのこと。東南アジアでの日本へのオマージュは事あるごとに感じます。いつか日本に行ってみたい、住んでみたいと思う現地の若者は決して少なくありません。

コワーキングスペースのプロが、コワーキングスペースについて学ぶ1週間。

CUasiaは①Coworking Academyと②Coworking Unconference ③Events(パーティや、地元散策、コワーキング見学など)の主に3つで構成されています。①のCoworking Academyでは、その名の通り、授業形式でコワーキングスペースをつくる上で必要な要素を海外の事例と共に、みんなでワークショップを行う形式でした。

僕のチームはスリランカに実際存在するHome Treeというコワーキングスペースを題材に、1.コンセプトの設計 2.スペース設計 3.イベントの作り方 4.会員の増やしかた 5.コミュニティのつくり方 6.何でも質問OKタイム のパートに分かれてそれぞれのセッションで授業があり、実際のスペースについてそれぞれのグループのアイデアが発表されます。

冒頭話した通り、日本でも数を伸ばすコワーキングスペース。企業だけでなく、自治体も空きスペースをコワーキングに変えるところも少なくありませんが、コワーキングスペースをどうやって作ればいいのか、教えてもらう機会は、日本国内ではなかなかありません。

Coworking Academyでは、写真のようなワークシートなども用いながら、なぜそのコワーキングスペースが地域や会員にとって必要なのか、スペースをつくる事によって、どういったメリットが得られるのか、その思考プロセスを改めてやり直すいい機会になりました。人を集めるにはイベントが必要、でも藪から棒にイベントをやればいい..というわけではない。ではどういう考えのもとでイベントを作ればいいのか?論理的な考え方も学ぶことができます。

何より、冒頭お伝えした通り、コワーキングスペースを持続可能な場所にしていくために「どうやって、会員同士コミュニティをつくっていくのか」その設計が一番のキーポイントになると考えられるのが、このCUasiaです。会員をただ増やすだけではなく、ここから生まれる新しいアイデア、出会いがその場所の価値になる。そのためのコミュニティのつくりかた。各施設がコミュニティマネージャーを配し、地域とスペースをどのようにブリッジしていくのか。世界中のコワーキングスペースのオーナーと喧々諤々話し合うのは、毎年のCUasiaの一番の見所の一つ。

そんな中、今年の議論のトレンドとして新しいなぁ、と感じたのが3つ。

①リモートワークの広がりから、世界で増える「デジタルノマド」の存在意義について議論する機会が増えたこと。
②コワーキングスペースが与える「SDGs」への影響力について考える機会が多かったこと
③参加者最大国となったTEAM JAPANの存在感と「日本の働き方」

デジタルノマドがどうやって社会にGive Backできるか

2035年には場所にとらわれずに旅をしながらパソコン1つで仕事ができるDigital Nomads(デジタルノマド)と言われる働き手が世界に10億人になるまで伸びるだろうと言われています。そんな中、写真左のTarekは、大手金融会社を退職して、デジタルノマドとして世界を旅しながらも「自分が移動する意義」について考えていると語っていました。移動することで、社会にどういう影響を与えられるのか(貢献・還元できるのか=give back)。世界中の子供達にサッカーを教えたり、環境プロジェクトに参加したりしながら旅をしているとのこと。昨今、日本で話題になっているアドレスホッパーと意味は近く、その名付け親である市橋正太郎くんも、まさに、自分たちが移動する意味について考えているところを見ると、日本と世界「旅をしながら暮らす」中でも高い意識層の想いには共通項があることを感じました。

コワーキングスペースが与える「SDGs」への影響力**

また今回はコワーキングスペースが与える「経済的影響力(Economical Impact)」と「社会的影響力(Social Impact)」について議論する機会が多かったのも印象的です。経済的インパクトは、コワーキングスペースそのものの利益の持続性のみならず、会員がそこから起業し、成長していく過程をコワーキングスペースがどうサポートしているのか、各国のコワーキングスペースのケーススタディを通して学ぶ機会が多分にありました。

これと同時に、SDGsを用いて、コワーキングスペースがもたらしうる社会的にいいこと、とは何がありえるのか、グループを作ってディスカッションをファイナルテーマとして採用。「使わない部屋の電気は消す」「トイレを節水用のものにする」そういうアイデアから、日本ではなかなか聞きなれない「原住民への配慮」「女性が起業しやすい環境づくり」「全世界の休日をカレンダーに入れる」など、世界規模のソーシャルインパクトについても考える機会を得るにつけ、我々日本のコワーキングがいかに国内の社会課題にとらわれ過ぎて、世界の社会課題に目を向けられていないかについても、気づかされることになりました。

とはいえ、Team Japanが出したのは日本ならではの「おすそわけ」というシェアマインドを、コワーキングに落とし込むことができないかという提案。少なからず理解をしてもらった、はず。シェアサイクル、近隣農家さんらとの協業、ナレッジシェアなど、昨今のシェアリングエコノミーマインドを、日本古来のおすそ分け精神を持って解釈し、成長させることができないか?と。日本独自の良さを改めて、自分たちで考えるいいきっかけになったのでした。

TEAM JAPANの存在感と日本の「働き方」最前線。**

彼らと話していると、節々に「日本はワーカホリックなんでしょう」という前提が付きまとってきたのですが、「もう、日本が企業の奴隷になった時代は終わろうとしているんだよ」と答えると、彼らは、驚いては前のめりになり、もっと教えて!と興味を持ってくれたことも、印象的でした。

日本は決してもう働き方後進国じゃなくなってきているんだ、その息吹が出始めているんだ。その最前線について、彼らにできるかぎり紹介をしてきました。先のアドレスホッパーはじめ、リモートワーク(今回のコロナの件で、奇しくもリモートワークが進んでいること)の進化副業・兼業解禁など、日本ならでの、「働き方改革」最新事情はまだほぼ翻訳されていません。これらの動きが人口減少、少子高齢の未来に向けた準備であることも、日本ならではの事情もあって、興味を持っている様子だったのも印象的でした。学ぶだけではなく、こちらから学びを提供できる瞬間は、CUasiaでも一番輝ける瞬間でもあります。

コリビングについて僕独自の持論を展開する時は、とても勇気がいりましたが、とても真剣に聞いてくれる。HafHという我々のサービスが、世界151都市222拠点に住み放題と説明すると、驚くように感心してくれる方々も少なくない。これはいけるんじゃないかと実感と自信にもつながりました。日本人だから、と怖じけずに、まずは意見を言ってみる。大人になって、この学びの経験は、心から、変えがたいなぁと感謝しきりです。

バリの文化や歴史、そしてインドネシアの多様性に触れながら、コワーキングスペースのあり方について世界思考で議論するCUasia。いづれはもっと日本の皆さんに参加してほしい。もしご興味があれば、ぜひご連絡ください!


Thank you for your support!