読書感想文 『火車』
【火車】
第6回山本周五郎賞
[火車]
火が燃えている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄へ運ぶという。ひのくるま。
「自己破産」
聞いたことあるけど、よく分からない。これまではそんなイメージだった。
火車を読んで震えた。
休職中の刑事は、遠縁の婚約者である関根彰子という女性を捜すことになる。
まだこの本を読んでない人には、徐々に見えてくる彼女が歩んだ人生を読んで震え上がってほしい。
私は、関根彰子の「典型的」な自己破産者の性格に自分自身心当たりがあることに震えた。彼女の人生のようにならないよう、それこそ死ぬ気で気をつけよう。怖いのはこの地獄が詐欺のように悪意からくるのではなく、自らの性格がこの人生を招く要因になる可能性があること。
しかも、この小説が刊行になった当時(1992年)よりも今の社会の方が圧倒的にクレジットカードが普及しているし、使いやすくなっているのが更に怖い。一歩どころか半歩でも決して踏み外せない。。。
この物語のすごいところはこれだけ恐ろしい物語を描きつつ、途中から彼女の失踪に関わっていた人物に焦点を当てることで物語の色が変わるところにある。
関根彰子は失踪のなぜ失踪したのか、その末にどんな結末を迎えたのか。失踪に関わっていた人物は誰でどう関わっていたのか。ミステリな展開も非常にに読み応えがある。
まるで呑まれるような読書体験だった。
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