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偶成和音 一歩進んだ音楽理論 Part 50

今回は偶成和音というのを紹介します。これはとある和音の構成音の転位、修飾の結果、違った形体、他の低音位、他の和音を偶然的に形成したものをいいます。偶成和音が形成された結果、例えばI→II→Iというカデンツを無視した進行も多々発生します。それでは詳しく見ていきましょう。

1 偶成形体、偶成低音位、偶成音度

とある和音(A)の構成音の転位、修飾によってAの他の形体を生成する場合があります。これを偶成形体といいます。

例を挙げます。

ソプラノの根音の下方転位が生じた結果I7の和音が偶然的に形成されました。ここで生じたI7の和音を偶成形体といいます。しかし、このI7の和音は独立した和音とはみなしません。独立した和音として使う場合は第7音の予備を必要とするからです。

とある和音(A)の構成音の転位、修飾によってAと同じ形態の他の低音位を生成する場合があります。これを偶成低音位といいます。

バスにおける修飾は低音位変換とはみなされないので、すべて偶成低音位として処理されます。

とある和音(A)の構成音の転位、修飾によって他の音度の和音を形成する場合があります。これを偶成音度といいます。偶成音度は仮に独立した音度と仮定した場合、カデンツに反した進行をとるものが多いです。

偶成形体、偶成低音位、偶成音度のいずれかを持つものをAにおける偶成和音といい、Aを原和音といいます。偶成和音を表す場合は|  |を使用して記します。


では偶成和音の一例を見てみましょう。

ベートーヴェンの悲愴ソナタの第2楽章ですが、3小節目でI→Vの和音第1転回形→VIという進行が出てきます。ここでは導音であるG音2度上行せずに2度下行しています。これは独立した和音ではなく偶成和音であることを表しています。

2 偶成和音の分類

(i) 刺繍和音

刺繍音のみを含む偶成和音を、刺繍和音といいます。

(ii) 倚和音

倚音を含む偶成和音を、倚和音といいます。

(iii) 掛留和音

掛留音のみを含む偶成和音を、掛留和音といいます。

(iv) 経過和音

経過音を含む偶成和音を、経過和音といいます。

半音的経過音を含む偶成和音も、経過和音に含まれます。

3 終わりに

次回も偶成和音について詳しく見ていこうと思います。

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また作曲、編成もしています。

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