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構成音の転位③ 一歩進んだ和声学 Part 44

今回も引き続き構成音の転位についてを紹介していきます。今回は連続8度、連続5度などの禁則が転位を含む場合だとどのように変化するのかを見ていきます。

1 転位音を含む構成音の省略・重複

転位音を含む構成音の省略・重複は、転位音を還元した上で適用されます。

例えば、還元して根音、第3音が欠如したり、第3音が重複していたりするのはいけません。

2 転位音を含む進行制限

長・短7度、増1度以外の増音程による進行は禁じられています。

転位音に進んだ際に、長・短7度、増1度以外の増音程を形成したとしても、還元した結果良好となるものは許されます。

転位音に進んだ際に、還元したときに不良となる進行をしていても、転位の結果良好であるなら差し支えありません。

3 限定進行音と転位音

限定進行音の後に転位音に行く場合は、還元したときに所定の限定進行が行われていれば問題ありません。

4 増1度進行

半音階的関係をなす2音の間に転位音が含まれていたとしても、還元した場合に増1度進行がなされる場合は許されます。

この例では、上方転位第5音は原位等高音に解決していません。しかし、原位と半音階的関係をなす音への2度進行は、復元解決とみなされます。

また、還元したときに消失する対斜は全て許されます。

5 連続8度・連続1度

連続8度と連続1度は、転位された状態でも、還元された場合でも適応されます。

つまり、還元したときに発生する連続8度・連続1度、転位の結果生じた連続8度・連続1度はすべて禁止です。

6 連続5度

連続5度というのは後続音程が完全5度の場合に禁止されるものです。

還元した場合に生ずる連続5度は、後続5度が転位によって同時発音が回避されるのであれば許されます。

転位によって生じた連続5度は、後続する完全5度の中に倚音を含んでいれば許されます。

7 並達8度・並達5度

転位音を含む並達8度・並達5度は

還元した場合に良好なものはすべて許されます。

還元した際に不良なものでも、転位の結果並達8度・並達5度の同時発音が回避されるのであれば許されます。

和音交替点の転位音の下行解決と他の声部の定位音の3度下行によって生じる並達8度は禁止です。

解決の延引によって並達8度が間接的になっていても禁止です。

8 孤立4度

孤立4度というのは2つ声部だけの同時発音によって完全4度(複音程含む)が形成されたときに、その完全4度を孤立4度といいます。

孤立4度に関しても制限があります。

孤立4度を後続音程とする連続4度は、後続する孤立4度に転位音を含むもののみ許されます。
先行音程が増4度・減4度でも変わりありません。

孤立4度への並達進行に関しては
・孤立4度中に転位音を含む場合
・孤立4度が発音された時に、他の声部に転位音が含まれる場合

は許されます。

9 導音の例外進行

V諸和音→Iの和音(第1転回形含む)の進行において、後続和音のソプラノが転位根音かつアルトが導音から到達した定位根音とが、2度をなすことは禁止されています。これは復元転位音とその同種定位音が2度音程を形成してはならないという決まりがあるからです。

これを防ぐために、例外的にアルトにある導音を3度下行させることが許されます。

また、V諸和音→Iの和音(第1転回形含む)の進行において、後続和音の転位根音の上方に導音から到達した定位根音を置いてはいけません。これは倚音・掛留音の上にその同種定位音を置いてはいけない決まりがあるからです。

これを回避すべく、導音の例外進行が認められます。

ソプラノにおいては
・4度上行
・6度上行

内声(アルトとテノール)においては
・4度上行
・6度上行
・3度下行

のいずれかを選択することができます。

V諸和音→Iの和音(第1転回形含む)の進行において、転位根音がバス以外の定位根音の上方に置かれる場合にも、上記に準ずる導音の進行が認められます。

10 終わりに

次回は主音上のVというものを紹介したのちに、転位音を含むソプラノ課題を実際に解いていこうと思います。

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