オーケストラの楽器たち 金管楽器編 Part 2
前回の続きで、今回はトロンボーン、テューバを紹介していきます。
1 トロンボーン
トロンボーンはスライドによって音階を奏でることができる楽器です。トランペットやホルンのバルブシステムがまだ未開発だった頃は、音階を演奏できる数少ない金管楽器の一つでした。
音域的には成人男性の声に近く、トロンボーンのアンサンブルではとても綺麗なハーモニーを生み出すことができたので、教会音楽などで重宝された楽器でした。モーツァルトやハイドンは交響曲ではこの楽器を用いることはありませんでしたが、宗教音楽(ミサ曲、レクイエムなど)やオラトリオ(ハイドンの『天地創造』『四季』)、オペラ(モーツァルトの『魔笛』など)では使用されました。
この背景から、世俗的な作品、すなわち交響曲などでは避けられる風潮が当時はありました。やがてベートーヴェンが交響曲第5番(日本では運命の名で有名)の第4楽章で初めて使用されたのを皮切りに、どの音楽のジャンルでも欠かせない楽器の一つとなりました。
現在ではテノール2本、バス1本といった編成が大半ですが、昔はアルト、テノール、バスが1本ずつといつ編成が主流でした。古典派時代、ロマン派初期〜中期ではこの編成による作品が多いです。アルトトロンボーンパートはテノールトロンボーンで代替されることも多いです。
テノールトロンボーンとバストロンボーンの音域はそれぞれ以下の通りです。
テノールトロンボーンはハ音記号を使って記譜され、アルト記号(ヴィオラに使われるもの)、テノール記号(ファゴットやチェロの高音域を記譜するときに使われるもの)のどちらかが使われ、これは作曲者によります。
バストロンボーンはヘ音記号で記譜され、テューバが使用されている場合はテューバと同一の五線で記譜されます。
表情豊かな楽器で、P(ピアノ)で演奏するときは柔らかい音色を出すことができ、f(フォルテ)では大音量で鋭い音色を出すことができます。また、スライドを用いる楽器なのでグリッサンドが得意です。
アルトトロンボーンはE♭管、テノール、バストロンボーンはB♭管ですが、楽譜は実音で記譜されます。
ではトロンボーンが活躍する作品を聞いてみましょう。
モーツァルト レクイエムより"Tuba mirum(奇しきラッパの響き)"
トロンボーンソロが活躍する曲です。
ブルックナー 交響曲第8番 第4楽章(0:26〜)
冒頭の金管楽器によるコラールでトロンボーンの音の特徴をうまく利用しています。大音量ではかなりザラついた音色になります。
2 テューバ
金管楽器の中では最も大きい楽器で最低音を担う楽器です。金管楽器の中では誕生したのが遅く、テューバができる前はオフィクレイドという楽器がその役割を担当していました。メンデルスゾーンの劇付随音楽『夏の夜の夢』やベルリオーズの『幻想交響曲』ではオフィクレイドが使用されており、古楽器による演奏を除けば、現在はすべてテューバで代用されます。
生まれたのが遅いという事情もあり、使用が多くなるのがロマン派後期以降となります。
テューバの音域は以下のとおりです。
バストロンボーンとオクターブで同じ旋律を奏でたり、ファゴット、コントラバスと同じ旋律を奏でたりすることが多いです。ソロを与えられることが少なく、テューバの音がはっきり聞こえるという場面は多くありません。
マーラー 交響曲第10番 第5楽章冒頭でチューバのソロがあります。(未完成作品であり他人の補筆を含む)
この楽器はC管、B♭管、E♭管、F管など様々な種類がありますが、トロンボーンと同じく楽譜では実音で記譜します。
似たような楽器で、テナーテューバというものがあり、比較的小型のテューバです。ユーフォニアムという名前の方が馴染みがあるかもしれませんね。オーケストラではそこまで使われませんが、吹奏楽においてユーフォニアムは使用されています。
3 終わりに
以上で金管楽器の紹介は終わりました。次回はオーケストラの花形ともいえる弦楽器を紹介していきます。
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