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オーケストラの楽器たち 金管楽器編

以前では木管楽器について紹介していきましたが、今回は金管楽器を紹介していきます。ここではトランペット、ホルンを紹介します。

1 トランペット

「ラッパ」とも呼ばれているこの楽器は金管楽器の花形であり、クラシックだけではなくジャズやポピュラー音楽にも利用される楽器です。

トランペット

金管楽器全体にいえることですが、オーケストラの中でフォルテ(強く)で吹くと、木管楽器や弦楽器をはるかに凌ぐ音量でかなり目立ちます。特に木管楽器は埋もれてしまうことも多々あるでしょう。

トランペットで最も用いられているのがB♭管であり、B♭管クラリネットと同じく実際に鳴る音は、楽譜で書かれた音よりも長2度低く音が出ます。すなわち移調楽器の一種ですね。この他にもC管、D管(長2度高く音が出る)も使われます。

楽器の真ん中程の位置にあるピストンを使って音を上げ下げします。これはバルブと呼ばれるもので、1814年に出来上がったとされるシステムです。

吹き口近くから1番、2番、3番と番号が付いています。

1番は押すと音が全音分下がります。2番を押すと半音分下がります。3番を押すと全音+半音分下がります。

このバルブの組み合わせと口の形で音の高低を操ります。
このピストンを使ったものの他に、ロータリーバルブを使ったロータリートランペットも存在します。

ロータリートランペット

楽譜に記すときは調号を用いず、常に臨時記号を使って記譜することが多いですが、今では調号を用いている楽譜(エルガーのチェロ協奏曲など)やすべて実音で書かれている楽譜(プロコフィエフ。トランペットに限らず他の移調楽器も実音で記譜されている)もあり、作曲者によって様々です。

また弱音器(ミュート)を付けた状態で演奏することも多く、ミュートを付けた状態特有の音色を活かす場合もあります。

B♭管トランペットの音域は以下の通りです。

トランペット音域。右が実際に鳴っている音

競馬が好きな人はわかると思いますがレース前にファンファーレが演奏されますが、そこで使われているのがこのトランペットです。


似たような楽器でコルネットというものがあります。

コルネット

見た目はトランペットと似ており、トランペットより若干丸くなったような外観をしています。音色はトランペットよりは柔らかく、オーケストラよりかは吹奏楽、ブラスバンド、ジャズなどで使用されます。

そしてバルブシステムが開発されるまでのトランペットをナチュラルトランペットと言います。

ナチュラルトランペット

この楽器はバルブが無いために半音階が演奏できません。演奏できる音は倍音列に限られていました。

バロック期、古典派、ロマン派初期におけるトランペットパートはこのナチュラルトランペットを使うことを前提に書かれており、曲がハ長調(Cメジャー)の時にはC管を、ニ長調(Dメジャー)の時にはD管をというように曲の調性に合せて管を交換しながら演奏していました。もちろんヘ長調(Fメジャー)の曲でもC管を使うなど作曲者によっては通例とは違う楽器の使い方をすることもあります。

バロック期では限られた音域ではありますが、高音での旋律を吹くことがありました。

様々な例がありますが、ここではバッハのマニフィカトニ長調を聞いてみましょう。

0:19~頃からトランペットがアップで映りますが、ナチュラルトランペットはすべて口で音の高さをコントロールしていたのです。これはかなりの鍛錬が必要だったとか。

2 ホルン

外見上は管がグルグル巻きになっているホルン。金管楽器の中では他の楽器との調和性が高い楽器です。

ホルン

ホルンはF管楽器であり、楽譜よりも完全5度低く音がでる移調楽器です。
楽譜に書くときはトランペットと同様に調号を使わず臨時記号を用いて記譜することが多いです。

ロータリー式のバルブを備え付けており、これらを用いて音高を変えます。
演奏時は朝顔(ベル)の部分に手を入れて演奏します。

ホルンの音域は以下の通りです。

ホルン音域。右が実際に鳴る音。

ミュートを付けて演奏されることもありますが、ホルン特有な奏法としてゲシュトップフトというのがあります。これはベルの中に手を深く挿し入れ開口部を塞ぐようにすると、独特な音を出せるようになります。ピッチの変化が起こります。

マーラー交響曲第9番第1楽章冒頭ではゲシュトップフトを利用した特徴的な音が響きます。(1:28~


またベルの部分を高く持ち上げて吹くベルアップという奏法もあります。
ホルンが活躍する作品は数多くありますが、いくつか例を挙げておきましょう。

リヒャルト・シュトラウス『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(0:21~からホルンソロ) 

ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』(冒頭ホルンソロ)


そして、この楽器もトランペットと同じくバルブが開発される前までは倍音列しか演奏できませんでした。こちらをナチュラルホルンといいます。

ナチュラルホルン

この楽器も曲の調性に応じて管を取り替えて演奏していました。しかし音色の犠牲はあるものの、ゲシュトップフトを利用してある程度半音階を演奏できるようにはなっていました。モーツァルトホルン協奏曲はナチュラルホルンを使った作品であるので、ゲシュトップフトを駆使して演奏しなければなりません。

この映像をみてわかる通り、中央の男性が演奏しているのがナチュラルホルンであり、唇とゲシュトップフトを利用して旋律を奏でています。

ベートーヴェン交響曲第3番第3楽章ではこのナチュラルホルンで旋律を奏でています。(34:57~から)

3 終わりに

次回はトロンボーン、テューバをご紹介します。

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