V9の和音根音省略形 一歩進んだ和声学 Part 13

今回はV9の和音根音省略形についてを学んでいきます。V9の和音の根音を省略した形で、構成音としてはVII7の和音と同一になります。ここではVII7の和音とV9の和音根音省略形は別の機能を持つ和音として区別されます。ではV9の和音根音省略形はどのような機能を持つのか、見ていきましょう。

1 V9の和音根音省略形

文字通りV9の和音の根音を省略した形です。今まで省略されていた第5音もここでは含まれます。表記はV9のVの部分にスラッシュを付けます。

V9の和音根音省略形では三つの低音位を持ちます。

V9の和音根音省略形の定型は以下の通りです。
V9の和音根音省略形第1低音位→Iの和音
V9の和音根音省略形第2低音位→Iの和音第1転回形
V9の和音根音省略形第3低音位→Iの和音第1転回形

この和音における適切な配置も見ておきましょう。

2 長調における最適な配置

長調においてはV9の和音と同じく第9音は第3音の7度以上上に配置しなくてはいけません。しかし第9音が予備されているならこの限りではありません。
これをふまえて長調における最適な配置は
V9の和音根音省略形第1低音位→第7音高位の密集配分
V9の和音根音省略形第2低音位→第9音高位の密集・開離配分
V9の和音根音省略形第3低音位→第9音高位の密集・開離配分

となります。

限定進行音はV9の和音と同じように機能します。

V9の和音根音省略形第2低音位においては上3声に必然的にIの和音の第3音が含まれますが、これは一般的には許されます。

V9の和音根音省略形第2低音位第9音高位の開離配分においてのみ第7音が第3音より下にある時は、いつでも2度上行させることができます。これにより上3声にIの和音の第3音を含ませないようにすることができます。

先行和音→V9の和音根音省略形第2低音位の連結において、外声間に生じる並達5度は例外的に許されます。この際最適配置に導くための配分転換は常に許されます。

3 短調における最適な配置

短調におけるV9の和音根音省略形の第9音の配置に制限はありません。
この和音はディミニッシュコードと呼ばれるもので日本では減7の和音とも呼ばれます。

限定進行音も長調の時と同じように進行させます。

またV9の和音根音省略形第2低音位において第7音が第3音の下にある場合2度上行させることができます。

4 まとめ

V9の和音根音省略形の適切な配置をまとめると、

長調の時
V9の和音根音省略形第1低音位→第7音高位の密集配分
V9の和音根音省略形第2低音位→第9音高位の密集・開離配分
V9の和音根音省略形第3低音位→第9音高位の密集・開離配分

短調の時
配置の制限は無し

となります。
次回ではD(ドミナント)諸和音の補足事項を見ていこうと思います。

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