見出し画像

エルガー 愛の挨拶 楽曲分析

今回はエドワード・エルガー(1857~1934)の『愛の挨拶』を紹介します。エルガーの作品の中でも威風堂々第1番と並ぶ知名度を誇っており、また演奏時間も3~4分程度の短い作品であり、親しみやすさも持っています。どのような作品なのか、早速見ていきましょう。

サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(Sir Edward William Elgar)

1 概要

1888年に作曲されたこの作品は、当時キャロライン・アリス(1848~1920)との交際中に書かれたもので、彼女と正式に婚約した際にこの作品を彼女に献呈しました。題名は当初はドイツ語で❝Liebesgruss❞と名付けられていましたが、出版の際にフランス語に変更し❝Salut d'amour❞となりました。

エルガーと妻キャロライン・アリス

献辞はフランス語で❝À Carice❞と書かれており、この名前はキャロライン(Caroline)の❝Car❞とアリス(Alice)の❝ice❞を組み合わせたものだとされており、後にエルガー夫妻のもとに生まれた娘にもキャリス(Carice)と名付けました。

最初にこの作品が書かれた時はヴァイオリンとピアノによる作品として書かれ、後にピアノ独奏やヴァイオリンの代わりにチェロ、またオーケストラ編曲もされています。

構造はとてもシンプルで3部形式+コーダという形です。
では、実際に楽譜を見ながら曲を解説していきます。


2 構造

2/4拍子 Andantinoアンダンティーノ(アンダンテより早く) ホ長調

青い和声記号は偶成和音とみなしています

0:00~
2小節によるピアノの導入の後、ヴァイオリンがメインテーマを奏でます。dolceドルチェ(柔らかく)かつlegatiss.(legatissimoレガーティッシモ 非常に滑らかに)に演奏することを求められます。5小節目にはピアノにsegueセグエの指示がありますが、これは前の小節と同じ弾き方でという意味です。simileシミレと似たような意味を持っています。強弱に至ってはクレッシェンドやデクレッシェンドが細かく指示されており、音量の変化には十分に配慮して演奏する必要があります。

メインテーマを2回演奏した後に、中間部へと移ります。

中間部 1:03~
中間部はト長調に転調しピアノが保続音D(ペダル・ポイント)を鳴らしながら、ヴァイオリンが順次進行多めの旋律を奏でます。この中間部のメロディは中間部全体を支配するように常に現れています。Aの10小節目からはホ短調となり、14小節目pocoポーコ rit.リタルダンドとなりテンポをほんの少し落としてBへと向かいます。ここではピアノにcollaコッラ parteパルテという指示があり、これは主旋律に合わせてという意味です。つまり主旋律を演奏しているヴァイオリンに合わせて演奏してね、という意味です。

Bに向かうとテンポは元に戻り、中間部の最初の旋律がピアノで現れます。Bの5~8小節目ではIIの和音→V7の和音の繰り返しが行われてます。これは古典的な和声では起こりえない進行ですが、後にジャズの分野でも頻繫に取り入られるようになります。

メインテーマ 1:46~
再びメインテーマが現れます。メロディに変化はありませんが、ピアノは変化が現れており、Cの3小節目ではメインテーマの追っかけ(カノン風)が挿入され、7~8小節目では裏メロ(オブリガード)を入れ単調さは避けられています。

コーダ 2:06~
D
からコーダとなりDの1~2小節間のリズムを音を変えながら繰り返します。4小節目からはstring.(stringendoストリンジェンド)となりテンポを上げていきます。この言葉は元々は締め付けるという意味です。8小節目にもaccel.(accelerandoアッチェレランド だんだん早く)の指示があり、12小節目rit.(だんだん遅く)して14小節目で頂点を迎えます。ff(フォルテッシモ)の指示がありますが、乱暴に音を強くしてはいけません。最初に紹介した通り、これは未来の妻に向けて送った作品なので強さの中にも柔らかさを含めなければいけません。15小節目rit.リタルダンド moltoモルトとなっているので、テンポをより遅くしていきます。FではTempoテンポ piùピウ lentoレント(より遅く)となりメインテーマがピアノで演奏されます。Fの7小節目pocoポーコ rit.リタルダンドGでテンポを戻して、Gの5小節目rall.(rallentandoラレンタンド だんだん遅く)しながら消え入るように曲を締めくくります。終盤はテンポの指定が細かく指示されていますので、ここはアンサンブルの能力が試される部分です。奏者とのコミュニケーションがとれていなければ崩れてしまうでしょう。

3 終わりに

いかがでしたか?
内容は難しいものではなく、和声に関してもほぼ古典的な和声が使用されているので聞きやすい作品ではないかなと思います。

他にもオーケストラ版、ピアノ独奏版も載せておきますので、響きの違いを楽しむのも面白いと思います。

それでは、ご覧いただきありがとうございました。

よければ他の記事もご覧ください。

また作曲もしています。

合せてご覧いただけたら幸いです。
またスキ、コメント等非常に励みになりますので、よかったと思った方ぜひお願いいたします。

皆様の応援の力が励みになります。コンテンツの充実化に努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。