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数字付き低音の読み取り方

バロック時代の音楽において重要な特徴の一つが通奏低音です。これは低音部の旋律とその下に小さく書かれている数字をもとに、即興的に伴奏を演奏します。通奏低音は必ず1人ということではなく、和音を奏でることができる楽器、例えばハープシコード(チェンバロ)、オルガン、ギター、リュート、などの楽器が複数使用される場合もあります。

ハープシコードやオルガンは左手で楽譜に書かれた低音部の旋律を弾き、右手で即興的に和音を演奏します。ギターやリュートの場合は和音のみを奏でます。

先ほど述べた低音部の旋律の下に小さく書かれた数字が和音を演奏する際に必要なものとなります。この数字を頼りに和音を演奏します。今回その読み方を見ていこうと思います。


1 数字付き低音

低音部の旋律だけではどの和音を演奏すればよいかわからなくなるものです。それを補うために下に数字をつけて「この和音を弾いてください」という指示を出します。これを数字付き低音といいます。

数字は音程を表しています。
例えば楽譜に35と書かれている場合は、3度上の音、5度上の音を弾いてくださいという指示です。

つまり和音の基本形を演奏すればよいのです。

もちろん和音の形は演奏者によって様々ですので限られた形はありません。

この35の数字は省略されることが多く、もし楽譜に何も数字が書かれていない場合は和音の基本形を演奏すればよいのです。

では例えば数字が36、46と書かれている場合はどのように演奏すればよいのでしょうか?




先ほど述べた通り数字は音程を表しています。なので36の場合は3度上の音と、6度上の音を鳴らせばよいのです。

46の場合は4度上の音と、6度上の音を鳴らせばよいのです。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、36は和音の第1転回形を表しており、46は和音の第2転回形を表しています。

36の数字は3が省略され、6のみが書かれていることがあります。その場合は和音の第1転回形を演奏すればよいのです。

楽譜にただ4と書かれている場合は、和音の第3音を省き4度上の音を付加させたものを表します。ポピュラー音楽ではsus4と呼ばれる和音です。

2 数字付き低音 7の和音

では7の和音を数字で表すにはどのように表記すればよいのでしょうか?

ここで3和音の数字を思い出してみましょう。
和音の基本形は35で表記されます。7の和音は根音から7度上の音を付加させたものなので、すなわち357と表記すればよいのです。

7の和音基本形はただ単に7だけで表記される場合が多いです。

では7の和音の第1転回形、第2転回形、第3転回形を考えてみましょう。
下の楽譜をご覧ください。

これらから、7の和音の第1転回形、第2転回形、第3転回形を数字で表してください。数字が音程なのがわかっていればどのように表記すればよいのかわかると思います。









では答え合わせです。

わかりましたか?

これらは一部の数字が省略された形で表記され、7の和音第1転回形567の和音第2転回形347の和音第3転回形2、または24で表記されることが多いです。

3 変化記号と斜線

数字付き低音には、数字の他に♯などの変化記号や数字に斜線をつける場合があります。その時にはどのように演奏すればよいのでしょうか?

数字の左側か右側に♯、♭、♮が付いている場合は、その音に臨時記号が付くことを表しています。変化記号が左側か右側に付いているかは楽譜によって様々です。

楽譜には変化記号のみが記されている場合があります。この場合は3度上の音に臨時記号を付けることを意味しています。

普段は数字を省略する場合でも、変化記号が付く場合は数字を省略せずに書かなければいけません。

数字に斜線が引かれている場合は減音程を表しています。例えば7に斜線が付いている場合は減7度を表しています。

以下、例を示します。

斜線の向きが反対になっている場合があります。この場合は増音程を表します。

4 実際の楽譜を見てみよう

では、例としてバッハブランデンブルク協奏曲第5番を見てみましょう。


一番下に書いてある数字をもとに、和音を補います。
見にくい場合は拡大してください。

実際に和音を補った例はこちらです。

※和音設定は『和声 理論と実習』をもとに作成しています。ここでは無視してもかまいません。

通奏低音は奏者によって違うので正解はありません。この作品の場合は他のパートからもどの和音を弾けばよいか推測できますが、独奏楽器と通奏低音という編成なら、和音を補うためには数字から読み取るしかありません。気になった方はバロック時代のソナタなどを楽譜を見て、実際に伴奏を付けてみてください。

5 終わりに

今回は数字付き低音の読み取り方についてを紹介しました。バロック音楽において最大の特徴である数字付き低音を理解することは重要なことです。譜読みをする場合はぜひこの知識を入れて楽譜を読んでみてください。

よければ他の記事もご覧ください。

また作曲もしています。

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Ryo Sasaki
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