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あれから10年、こうも立場が変わるとは。

今年も、幾多の砂煙が巻き上がる高校野球の季節がやってきたようだ。(天声人語風。今日もやってしまった。)

ニュースでいくつもの高校の勝ち上がる姿が報道されはじめたと思ったら、一昨日くらいにはすべての県の代表校が決まったらしい。
大阪桐蔭高校が延長の末負けたのには驚いたなあ。あと、大船渡の佐々木くんの話とか。

さて、今日のテーマは高校野球だけれど、書くのはそういう甲子園に出るような強豪校ウォッチではありません。

野球が弱い県の、野球が弱い高校に在籍していたわたしとチームメイトのお話。あれはもう10年前だ。

その時わたしは、今より体重は25キロ位少なくて、走る速さも25キロ位は速かったと思う。

まあ、人間歳をとったら誇張するもんなんで、数字は話半分に聴いて下さい。いやでも体重の方はマジね、マジ。あんなに重い30キロの米袋一個分くらい、贅沢なお肉を装備したわたしの身体は今非常に重い。悲鳴を上げている。悲鳴を?どこが?主に股だ。シモネタではない。2ヶ月に1回くらいズボンやパンツの股が裂けるのだ。マジで。これは話半分にしなくていい。マジだ。半分になったのは話ではなく衣類だ。

と、冗談はこれくらいにして、本題。

今日こんな記事を読んだ。

お手すきの人にはぜひ読んでほしい。要約すると、「日本はいつまで経っても(他人の、しかもこの場合は若者の)自己犠牲を美談にして感動してるよね。」という風な話。あ、タイトルを読めばわかるか。そうだね。

これを読んでひとつ思い出したことがある。

あれはわたしの学年が部活の中心学年になった時のことだった。先輩たちが引退し、新チームが動き出した。

部活動をやったことがある人なら経験があるかもしれないが、新チームというのは得てして上手くいかない。なんかトラブルがある。1,2年生の仲が悪いとか、みんな下手すぎて練習試合がグダグダになり顧問が「相手様にしつれいじゃろうがい!!!」と怒鳴ったりとか、まあ色々ある。全部面倒くさい。

わたしがいた野球部も例にもれずそんな感じになった。とにかく弱い。
弱いだけならいいんだけれど、けが人が多かったり出席がまちまちなやつがいたりで、なんだかギスギスしていた。

そこで顧問が「はい、上手くいくように話し合うように。」と言い出した。今思うとこういう風に言って去るだけ顧問は面倒がってたのだな、と感じる。

さっきから太字にしている箇所にはわたしの強い「面倒だったな、嫌だったな」という気持ちを反映しているが、まあそれはメイントピックではない。

メインはその話し合いの中で巻き起こった「けがをどうするか」論争だ。

正直今も昔もわたしにとっては「けが?休めよ。」で済む問題だが、他のメンツにとってはそうではなかったようだ。

「けが?休めばいいじゃん。」とわたしはそこでも実際に呟いたのだが、その瞬間めっちゃ白い目で見られた

これは馬鹿にしていっているのではないが、他のみんなは現状弱いけど野球に対して文字通りマジだったのだ。で、その結果マジでこんな会話が続いた。


りょーさけ「え、休みなよ。本当に壊したら大変じゃん。」

部員A「お前にとってはそんなもんなんだろ。」

りょーさけ「え、だってそれじゃ100%のパフォーマンスが」

部員B「プロだって大体の人は故障をかばいながらやってるよ?」

りょーさけ「え、(プロじゃないじゃん)」←流石に口に出せず

部員C「まあいいよ、りょーさけにとってはそれでいいんだよ。」

りょーさけ「(えええええ)」


近かったはずの友人たちが別の惑星の住人に思えた。「俺ら命かけてんだよ、馬鹿にすんな!」という無言のプレッシャーがあった。恐怖すら感じた。初秋の風が冷たい。

本当に言葉が通じてなかった。そもそもけがをごまかして試合に出続ける=マジ、という図式もよくわからない。わたしにとっては「それまでのコンディション調整不足の自分の過程を反省して脇で筋トレをする」とかのほうがマジだ。

もともと女の子のことしか考えてなかったわたしは部活で浮いているような感じはしていたが、これが決定打になった気がした。一足先にわたしの夏は終わっていた。その時は秋だったけれど。初秋の風で頭が痛い。

結局、それほど野球をプレーすることに執着がなかったのだなあ、と今は思う。


さて、あれから10年が経った。

彼らとわたしのその時の変な緊張感もなくなって、今では互いのスタンスに一定の理解をもって酒を飲んだり馬鹿話をしたりしている。気がする。

顧問本当に狂ってたなぁ、とか、あの先輩元気かなぁ、今度草野球やるってよ、へー、とかとか。よく笑いながら話す。

我らが囲むテーブルには当然料理がある。ビールがある。

日本酒がある。

みんながただ流れ作業で酒を飲んでいる最中、つい本気になって味見をしだすやつがいる。

わたしだ。

その度彼らはわたしをからかったような調子で言う。

部員A「りょーさけホント好きだよな酒。八海山あればよくね?」

りょーさけ「新潟だけで80蔵以上あるからね。八海山飲むだけではダメだよね。」

部員B「この間インスタでライブ配信してたよね?そこまでする?」

りょーさけ「せっかくいいお酒とか酒関係者に出会ったらそのことを同じく酒好きの人たちに伝えたいよね。ライブ配信でも足りないよね。」

部員C「部員Dの結婚式の翌朝血ィ吐いてたのによくまだそんなに飲むよなwww」
(りょーさけは部員Dの結婚式3次会に出るために豪雪の中金沢まで高速をぶっ飛ばし飲みまくった挙げ句、翌日マロリーワイス症候群で降りしきる雪を真っ赤に染めたことがあった)

りょーさけ「酒が美味しい上に、楽しかったらそういう事になっても仕方がないよね。僕が一升瓶で持っていった、たかちよ(新潟魚沼の酒蔵。扁平精米という特殊な精米技術で削ったお米で醸したお酒はやや甘口で香り高く、飲むと、とれたての果実にかぶりついた時の果汁のほとばしり的感動がある)、美味しかったでしょう?」

部員E「めっちゃ太ったし奥さん体調心配しないの?」

心の声「(うるせえな!命かけてんだよ、馬鹿にすんな!)」

ハッ。



わたしが彼らの野球への情熱に水をさしてから随分経った。今度は彼らがわたしの日本酒への情熱に水をさしてくる。いや水は飲んだほうがいい。和らぎ水は大切だ。

こうも立場が変わるとは。

これもまたちょっと長く生きたからこその妙味。どこで本気が訪れるかなんてわからない。

そんなものだよね。ははは。

最後にちょっとだけ真面目な話をするが、「犠牲の美談」はそろそろ積極的に拒否する段階に入ってほしいと思う。そういう姿勢って、高校野球だけじゃなくて他の場所でもなかなか厄介な問題を引き起こすから。

多分、これを読んでいるあなたが古風な会社に勤めているとするなら、なんとなくわかるんじゃないかな。

理想かもしれないけれど、誰の犠牲もなくみんな幸せになっていいと思うんだよね。はは。


あ!そうだ。これは完全に偶然ですんごく驚いているんですが、みんなのフォトギャラリーからお借りしたこちらの球場の写真!

見た時本当に驚いたんですが、これわたしの住んでいる街の球場です笑
いやあ本当に驚いたよ。ここらでもnoteやってる人がいるんだね。

びっくり。

本日はこれまで。またね。



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