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SEの日常 ピラミッド構造の話

私は、SI業界で仕事をしています。

ご存知ない方のために、
SIとはシステムインテグレーション
の略称です。
IT系の業種の一つです。
システムを作りたい!となったときに、
要件と言えば、
トータルコーディネートで作ってくれます。

SI業界の特徴である
ピラミッド構造があります。
その特徴を中心に、
業界の話を書きます。

SIのあり方は、日本のITの根幹です。
日本のITを考える
きっかけになれば嬉しいです。

SI業界の特徴

私は、SI業界を変えたいと思い、
SI業界のトップリーダの一社である
今の会社に入りました。
特に、ピラミッド構造を
完全撤廃したいと思っていました。

ピラミッド構造とは何か。

それを理解するために、
SI業界のビジネスモデルを
単純化して説明します。

システムは、基本的には、
企画、設計、開発、テスト
というフェーズを経て
出来上がって運用されます。

各フェーズには、
インプットとなる
設計書やプログラムがあり、
アウトプットを出して
次のフェーズにつなげます。

インプットをアウトプットに
変換するためには、
多くの人手がかかります。

近年では、
ローコード/ノーコードという
言葉が流行っており、
システムは誰でも簡単に作れる
という考えが広まってきています。

確かに、
ワクチン接種の予約システム
のような単純な要件なら
誰でも作れますが、
現実の要件はもっと複雑です。
誰でもできるとはいきません。

要件からデザインし直す、
という考え方もありますが、
顧客の理解を得ながら、
要件をデザインし直すのは、
相当難しいです。

システム構築に限らず
何でもそうですが、
きれいにはいかないのです。
どこかで泥臭くなります。
たとえ、最新鋭のITであっても、です。

泥臭いことをしようとすると、
人手が必要です。
その人手のことを
SI業界では工数といいます。

システムを作るのにいくらかかるか、
と顧客から聞かれると、我々は、
何人でどれだけの時間がかかるのか、
を見積ります。
これが工数です。

そして、単金、つまり、
要員ごとのコストを
工数に掛け合わせることで、
全体の見積り金額を算出します。

単金 ✕ 工数
で得られる金額が
SIのビジネスの基本です。
実態は、機器リースで得られる
利益も多いですが、
今回は割愛します。

何が言いたいかというと、
工数で費用を見積るぐらい
人手がかかるということです。

その人手は、当然、一社では賄えません。

人手を補うため、
実際に顧客と契約する会社から
下請け、さらにその下請けに
作業が発注されていきます。

こうしてSI業界のピラミッド構造が
できあがっています。

ピラミッドの下になればなるほど、
単金が下がっていきます。
つまり、下の層の会社は、
利益が減っていきます。

その分期待される業務内容も、
どんどんシンプルになり、
難易度も下がります。
が、手を動かす業務が多いので、
どうしても時間がかかります。

社員の残業時間は多いけど、
利益は低いという会社が、
出てくることになります。
社員の給料も
必然的に低くなります。

みなさんが日々利用している
システムのほとんどが、
ピラミッド構造の中の人たちが
作っています。

ATMを利用したとき、
クレカ等の決済を利用したとき、
役所で手続きしたとき、
ファストファッションで服を買ったとき、
などなど、
毎日必ず利用しています。

我々の生活の裏には、
大きなピラミッドがあるのです。

ピラミッド構造は問題なのか

ここ10年、20年で、
Web系の会社が出てきたことで
IT業界のイメージが変わっています。

その昔、SI業界で働く人たちは、
ブラックというイメージでした。

今では、ピラミッドのトップの会社は、
働き方改革で守られています。
残業すると怒られるぐらいです。

ですが、下になればなるほど
働き方改革は縁遠くなっています。
低いお給料で、毎日遅くまで残って
仕事をすることになります。
これは問題な気がします。

この格差が生まれるのは、
やっている仕事の内容が違うからです。

単純にいうと、ピラミッドの中で、
トップは考える仕事、
下の層は手を動かす仕事、
をしています。

手を動かす仕事というのは、
後は書くだけのドキュメント執筆や、
データ整形などの単純作業を指します。

単純作業はいらないのでは、
と思いますが、
残念ながら前段で述べた
インプットをアウトプットに
変換するためには必要な作業です。

単純作業は、
それほど頭は使いませんが、
時間がかかります。

一方で、トップの方は、
考える仕事をしています。
広い視野が求められます。
情報を組合せてインサイトを出す力、
論理的思考力、表現力、説明力など、
ハイレベルなスキルが求められます。

バカではできません。
私は、バカなので苦労していますが。

考える仕事は、
それほど時間はかかりませんが、
頭を使います。

仕事の難易度が違うので、
トップは早く帰って高給、
下の層は遅く帰って低給、
になっています。

果たして、それは問題なのか。

その感じ方は人それぞれですが、
私は問題である派です。

仕事の内容が異なれば、
それが生み出す価値も異なります。
考える仕事は、他の人で代替しにくく、
価値が高くなる可能性が高いです。

価値が高いアウトプットを出したり、
行動をしたりしているのであれば、
高給取りになるべきです。
その意味では、妥当です。

一方で、単純作業はなくせません。
単純作業を減らしながら
品質を担保する方法もありますが、
万能ではありません。
品質を担保するには工数がかかります。
単純作業を時間をかけて
やってくれる人が必要です。

単純作業で、顧客から
多くのお金はもらえません。

結果として、
単純作業をする人は単金を下げないと、
ビジネスとして成り立ちません。

また、ピラミッドの下に行くほど、
その会社に所属する方は、
正直に言ってスキルが低いです。

コミュニケーション能力、
説明理解力、
聞いたことをまとめる力、
情報を組み合わせる力、
空気を読む力などが、
残念ながら低いです。

さらに言うと、
自分を客観視できておらず、
そのスキルの低さに
気がついていない場合も、
少なからずあります。

と辛辣なことばかり書いていますが、
前述のとおり、
私はピラミッドは問題である派です。

単純作業であれど、
時間がかかるのは良くないです。
これは改善すべきです。

なので、スキルを明確に評価して、
適切なポジションを与えること
が重要になります。

スキルセットを見える化し、
ピラミッドの中の人を再分配する。
これができれば、
SI業界を動かせると思っています。

日本がIT後進国になったのはSI業界のせいか

IT先進国アメリカでは、
SI業界は大きな産業ではありません。

アメリカでは、各企業や組織の中で
情報システム部門(情シス)を持ち、
SIに発注せず、システムを自分たちで
作ることが多いです。

一方で、日本は、
企業や組織の情シスは大きくなく、
SI業界に外注して
システムを作ってきました。

その違いを見て、
日本がITで遅れをとったのは、
SIに任せっきりだったせいだ、
という文脈で語られることが
少なくないです。

なぜ、アメリカと日本の違いが生まれたのか。

それは、働き方にあると思います。

アメリカは、ジョブ型雇用で、
仕事内容でお給料が決まります。
スキルを持った人と契約し、
契約どおり成果を出しもらって、
お金を支払います。
システムを作りたいなら、
ITに詳しい人を雇います。

日本も近年では、
ジョブ型に移行しつつありますが、
基本的には、人に対してお金を出します。
一括採用からの終身雇用で、
総合職として様々な業務をこなしつつ、
年功序列で給料が上がっていきます。

ITには専門的な知識が必要です。
総合職で働く人が、
片手間にできることではないです。

結果、システムについては、
専門家の集団=SI業界に外注する
という構図になっていきました。

そうして、アメリカに比べて
SI業界が発展したと言われています。

それは、ITの先進性の差異には
つながらないと思います。

アメリカは、
各企業や組織の情シスに専門家がいて、
システムを作ります。

日本は、SI業界に専門家がいて、
色々な企業や組織から発注を受けて、
システムを作ります。

むしろ、日本の方が、
ナレッジが共通化されるので、
効率的なのではとさえ思います。

アメリカがIT先進国と
言われる所以である、
GAFAやFAANGなどの会社は、
SI業界とはやっていることが
全く違います。

GAFAやFAANGは、
プラットフォーマーです。
SIが対象とするレイヤーより、
もっと抽象的なレイヤーのことを
している会社たちです。

プラットフォーマーが
日本で生まれなかったのは、
SI業界のせいか。

頭のいい人は、
ロジック立てできるのでしょうが、
明らかに直接はつながりません。

プラットフォーマーが生まれない理由は、
もっと他のところにあります。

組合せて新しいものをつくる
イノベーションの概念が薄いだとか、
企業が持つ価値を組み合わせるような
仕組みや思い切りがないだとか、
そんなところなのではと思います。

SI業界は、企業や組織に対して、
要件を満たすシステムを企画する際に、
プラットフォーマーのサービスを利用します。
ただの利用者であり、競合はしません。

IT後進国となったことと、
SI業界のあり方は関連しないと思います。

SI業界展望

今、日本では、
各企業や組織が情シスを拡大させています。

わかりやすいのは、デジタル庁です。
政府が技術者を囲い、
政府の情シスのようなものを
作ろうとしています。

SI業界はどんどん衰退する一方。。
だと、私も思います。
でも、衰退しないとも思っています。

前述のとおり、ある程度の要件、
ある程度の品質のシステムを作ろうとすると、
工数がかかります。
ハイスキル人材から
低スキル人材(言い方悪い)までいた方が、
効率がよいです。

その人材を抱えるのは、
それなりにお金がかかります。

それを、各企業や組織の中だけで、
持つことが効率的か。

人材のプールとして、SI業界を残し、
システム作りたいなというときに
呼び出すような今の形態が、
やっぱり効率的です。

一方で、SI業界の変革は必要です。
SI業界の人材を、
スキルごとに単金を分け、
工数 ✕ 単金
を算出する際に、明朗会計にすれば、
よりよくなるかと思っています。

発注する側も、見積り金額に納得感がでます。
情シスを持つ場合との比較をしやすくなります。

SI業界全体をジョブ型にするか、
人材を360度評価することでスキルを明確にし、
単金を設定して、
要件にあった人をアサインする
仕組みづくりをしたいです。

それができる立場まで、
少しずつ近づいていければと思います。

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