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岡林リョウ
2020年7月5日 02:23
滅多に握手などしない。ここ1年で恐らく3,4回ほどしかしなかったろう。その中に、弱い握手のかたが何人かいて、その身を案じたりもしていた。うまく言葉が見つからない。しかし音はあくまでアグレッシブで、ひたすら求道的なまでに強く、揺さぶるように、囁くようにひびき、その音があの弱い手から紡ぎだされていたその、余程の気力と、意思と、うまく言葉が見つからない。何かとても、極
2020年7月5日 01:55
「あなたの時計です」ぼくは枕元に置かれた「肉塊」を見た。白い網目状の繊維がうす桃色の地膚を覆い、巡る小さな肉管が紅い液体を循環させて、どくり、どくりと動いている。「・・・過労ですね。暫く外に出しておいた方が良いでしょう」医師は一瞥もせず立ち去った。付き添いの上司が無表情にその後を追う。人間は誰でも同じ時間の中に生きていると思ったら大間違いだ。君には君、ぼくにはぼくの時計があって、そ