式日

想イヲツヅル #61


初めてのことだったし


気まずかったし


とても悩んだ


けれど

選んだ


選べた



化粧品売り場は

なんとも言えない匂いがする

化粧を落とす前の彼女だったり


小さい頃に感じた
朝に仕事に行く準備をしている
鏡の前の母親だったり

そんな匂いがする


ここは近所のショッピングモールの中の化粧品売り場

全然言い慣れないがコスメフロア?

というところだそうだ


ここには
小さい鏡がたくさんあるせいなのか

妙に明るいし
置いてあるものは色鮮やかだしで

なんだか目がパチパチしてしまう


パチパチしながら周りを見渡せば

当然のように
女性客ばかりだったりで

自分の足元が
フワフワと浮いてきていることに
気付かずにはいられない

このまま空中散歩でもして
何もなかったかのように
この場から離れたくもなる


けれども
必要なものは口紅なのである


まずは
口紅の置いてある場所を探さなければならない

しかしながら

綺麗にオメカシをした店員さんや

ましてや

一般の方に
「口紅ってどこにあるかわかりますか?」


自然に話しかける勇気は
今のところ持ち合わせていない


″結果″
コスメフロアで迷子になった僕は
とにかくウロウロと歩き回ることになる

そして
たくさんの″不思議な視聴率″を集めることになる

″その結果″
店員さんに
「何かお探しですか?」

と助け舟を出されるものの

知らないコスメフロアという
大海に緊張していたこともあり

「だ、、だいじょうぶです、、」


そのありがたい船には乗らず


1枚の薄いベニヤ板だけの
ペラペラの自分の船で
この新世界を航海した

確実にこの海では
″海賊王にはなれそうもないな″
という
冗談を妄想できる余裕はギリギリ保ちつつ

まずは希望のあったブランド?メーカー?を探して
やっと見つけた口紅コーナー

ほっと一息はつけたものの

ここからが本番である


一口に口紅と言っても
それは多種多彩


なんとか
メモしておいた名前は見つかった


そしてここからが大変だった

色がありすぎる。。。

色の希望は聞いていなかったのである


それは
さぞかし
コスメフロア御用達の皆様にとっては
異様な光景だったのではないだろうか

男性客が見当たらない最中

細い目をさらに細めて

腰を屈めて口紅を睨みつけ

さらにはしゃがみこみ

髪の毛をクシャクシャさせながら

とてつもなく悩んでいる

そんな人


それが僕である


唯一の救いだったのは

自分は集中すると周りが見えなくなることだ

この時ばかりは
こんな自分に救われる


どれくらい経ったのだろう


散々悩んだ末

1つの口紅を選ぶことができた

淡い桜色の口紅


″たぶん自分では買わないだろう″

でも

″もらったら使ってみたくなる色″

を目指した″結果″
この口紅がやってきた




そして

今日

君に口紅をあげた


先日
君と仕事帰りに食事に行った時

君から聞いた誕生日

君から聞いた口紅の名前


君は″本当に買ってきたの?!″


と驚いていたけれど


喜んでくれていることがわかった
笑顔だった


僕もとても嬉しくなった

もう自分を騙せないよな


僕は君に惹かれている


もうさすがに認めるよ


あとはどう決着をつけるかだよな


初めての化粧品売り場も


この感情も


君との出逢いは

僕にとって
とても大きな
大切なものになるんだという予感がしている

というか
もう大切なものになっている


だから


いつかこの先


この想いを文字に起こしてみるのも
いいかも知れない


″今″が″あの頃″になった時


想いを綴れるならば


きっとそれは本当なんだろう

そうだ


その時にこうやって
noteに綴れるのならば


なるべく君の″誕生日の時間″
にアップできたらいいな


朝の10時より
夜の10時にした方が
色々ゆっくりできるかな

毎回は同じ時間にできるかわからないけれど


できるだけ
できるだけね


たとえその時


僕が1人だったとしても


君じゃない誰かといたとしても


それは本当なんだ


この想いは本当なんだ



お誕生日おめでとう

口紅よかったら使ってね

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