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簡単には手に入らないからこそ美しい

この船旅の中で間違いなく1番の目玉。誰もが一生に一度は見たいと思う絶景、皆がそれを楽しみにしていた。

オーロラ。それは気まぐれに現れてはふいに消える、儚き光のカーテン。今回のクルーズでは、アイスランド付近を航行中に4日間見ることができるチャンスがある。昨年のクルーズでは船全体を包み込むようなオーロラが見られたらしい。否が応でも期待は高まる。

1日目。寒さをこらえて夜通しオーロラの出現を待った。眠たい目をこすりながら、皆身体を寄せ合って今か今かと空を見上げ続ける。すると突然誰かが叫びだした。声のした方を向いてみると、微かにだが確かに、そこには緑色にゆらめく光があった。そこからさらに期待は高まるが、この日は目を凝らせばわずかに見える程度のオーロラが何度か現れただけだった。

2日目。前日のオーロラの出現から、さらに期待度は高まっていた。オーロラに包まれる景色を見てみたい、誰もがそう思っていた。しかし、この日は天候不良によりオーロラの観測は不可能。3日目もその天候が続き、結局船からオーロラを見ることができたのは初日だけだった。

オーロラは自然現象である以上仕方がない。1週間以上いて全く見ることができないこともあるのだ。それを考えれば少しだけでも見られたのは幸運なのかもしれない。それでももっと空いっぱいに広がる光のカーテンを見たかった。

簡単には見ることができないからこそ美しい。あるいは、美しいものだからこそ、簡単に人目に触れないように隠されているのだろうか。だとしたら神様はいたずら好きだ。

簡単に手に入らないからこそ美しいものがある。愛とか恋とかいうものもそうなのだろうか。こんなものなければ楽なのに、そう思うことが時々ある。「好き」っていう感情は、人を幸せにもするし、苦しませもする。でもこの感情があるからこそ、人は美しいのだろう。本当に神様はいたずら好きだ。




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