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(3)人生をグイっと変えた強烈なメッセージ

「自分」は子供の時に作られる

子供の頃は、とても引っ込み思案でした。小学2年の時に親が離婚し、兄弟4人とも厳しい父親に引き取られ、それから1、2年して今の母が来てくれ、私たちを育ててくれました。

兄と二人、子供ながらにそれまでの事は口にしてはいけないと思い、それ以前の写真を捨て、記憶も意識的に消してしまいました。ですので、幼少期のことは断片的でわずかしか残っていません。

自分の思っていることを言って母を悲しませないよう、人生の早い段階で感情を抑え込み、母や父の顔色を伺い、迷った時は、人に何かを相談するというより自問自答で物事を解決していました。

こんな深刻な内容は友人たちには話せず、相談しても解決できるのは結局自分だけ、そう思ったからです。

家庭の経済的な関係で「持ってない」「足りない」感はいつもあり、この持ってない状態でどうやって目の前のことを成すのか、苦しい自問自答と「持ってない」ことの恥ずかしさ、そして厳しい父親の元、自分を出せない中高生時代でした。早く家を出て自立し、知らない人ばかりの環境に行きたい、いつもそう考えていました。


「もっと」が生んだ生き方

父もまた、多い兄弟のなか苦労して生きてきた人で、私のハングリー度は父譲りです。幼少の時から、父に「もっと上を見ろ」「もっともっと」「人が休んでいる間にもっと頑張れ」と言われ続けてきたので、その後の大人時代もがむしゃらに頑張ってきました。

お金がなくても、もっと自分を高めることはできる。そう思って、休みの日も仕事や資格の勉強をし、残業もして、スキルを上げていくことに喜びを感じながら仕事をしていました。

しかし、30代半ばの時。

「なんか違う・・・」そう気づき始めたのです。
24時間戦います的な生き方に、疑問を抱き始めました。この生き方は、ただ単に自分で「バーを上げているだけなんじゃないかと」。戦う相手は、他の誰でもなく自分自身。

そう思い始めると、これから先永遠に「もっともっと」とレベルを上げ続けて行き、「いつまでたっても満たされないのではないか」と思うと、ラットレースの様でいたたまれなくなりました。

そう思っているのに、厄介なのは、やっているその旅行業の仕事が好きだと言うこと。ホテルで働きながら旅行の専門学校を卒業し、その後、海外でツアーガイドとして働き、日本に帰ってからは旅行業の国家資格を取って国内外の添乗や営業、カウンター営業に就き、天職だと思って働いていました。

業務量の多さにもただひたすら向き合い、今思えば3、4人分の量の仕事を、ものすごいスピードでこなしていました。

旅行業の管理資格者のため、退職すれば閉業することになり、お客様にも会社にも迷惑がかかると思って辞める決断はなかなかできませんでした。そして、幼い娘をみる主人やお姑さんにも大きな負担がかかるようになっていました。

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  決断の日は、突然に

ちょうどそんな時。会社が大きな事故を起こしました。その後、社内の異動でさらに多忙になり、昼食やトイレの時間もなかなかとれなくなりました。

胃がキリキリ痛む様になり、気がつけば胃潰瘍になっていました。早く帰って家事をしなくては・・(汗)と思いつつも、なかなか帰れない状況で、そんな焦りからか毎日夕方になると動悸もひどくなり、人と話をするのにも影響が出ていました。

しかし、少ない人数でみんなが頑張っている職場。頑張るしかない。会社が大変な時なので誰にも言えず、仕事量に押しつぶされそうになりながら、仕事と育児と家庭のことであっという間に一日が過ぎて行きました。

そんな煮え切らない日々で1年を過ぎた2月のこと。37歳の時。母が脳出血で倒れました。父からの電話で慌てて病院に行くと、母は意識がありませんでした。

母は36歳の時、初婚で私たちの家に嫁いでくれ、当時小学5年の兄を筆頭に5人を育ててくれました。そんな苦労ばかりかけた母は、意識が戻っても言語、記憶、聴覚障害、手足の麻痺が残りました。

その姿を見た時、ついに退職を決断したのです。「会社を辞める!」
退職届を提出したのは、母が倒れてわずか1週間のことでした。

会社がどうのとか、もう言っている場合ではありませんでした。看病する父も高血圧で、そちらの方がとても危険な状況でもありました。実家には、知的障害を持つ妹もいます。目の前に守るべき人がいる。

この出来事は、なかなか人生の決断をできなかった私に、母がしびれを切らして強烈な背中押しパンチをくれた気がしていました。
「もう、ええ加減にメッセージ受け取りなさいよ!」
深いところで伝わってくる義理母の強烈なメッセージでした。

会社の人生ではなく、「自分の生きたい人生を生きよう」そう強く思いました。今から14年前、37歳の夏。私は会社を辞めました。


(4)人生のテーマとして浮かび上がる使命 に続きます


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