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嬉野温泉湯豆腐の豆腐メーカー6社を食べ比べしたら、全然違って興奮した話

こんにちは。ライターの大塚たくま(@ZuleTakuma)です。

2021年1月30日。佐賀新聞のYouTubeチャンネルにて、嬉野温泉用の湯豆腐を提供する代表的なメーカー・6社の豆腐を食べ比べる生放送を行いました。

嬉野温泉湯豆腐史上初めて(たぶん)の全種類食べ比べ。そんな歴史的瞬間に立ち会った、旅館大村屋の北川健太、湯どうファーのヘネシー吉川、ライターのぼく。

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今回は当日の食べ比べの模様を、詳しくご紹介します。いざゆかん、湯どうファーの世界へ。

嬉野温泉湯豆腐とは?

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嬉野温泉湯豆腐とは、嬉野の温泉水で豆腐を煮た料理です。嬉野の温泉水の成分により豆腐が溶けてとろとろになって食感が変化し、煮汁が真っ白になることが特徴です。

ほかの温泉でも溶けるのは溶けることもあるんですが、溶け方が違います。嬉野温泉がもっともいい塩梅に溶けると言われているわけです。

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温泉湯豆腐は単に「温泉水で煮れば豆腐が溶けるだけ」という料理ではありません。嬉野は大豆の産地であり、昔から豆腐づくりがさかんでした。

地元で育まれた豆腐技術から生まれた、温泉水で溶けた時に美味しくなるように作られた「湯豆腐用の豆腐」でなければ、美味しく溶けることはないのが、面白いところ。

ぼくも一度、スーパーに売っている木綿豆腐を嬉野の温泉水で煮てみたんですが……。

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表面がかすかに溶けるだけで、嬉野で食べたようなとろとろ食感にならないし、煮汁もなんだか黄色くなって、風味も劣っていたんです。

「やっぱり、嬉野温泉湯豆腐には使う豆腐が重要なんだ」と気付かされました。


嬉野温泉湯豆腐の「豆腐」にフォーカス

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今日の会は嬉野温泉の温泉湯豆腐の中でも有名な6メーカーの豆腐を集めてみました。集まったメーカーは以下の通り。

・藤川豆腐店
・福田豆腐店
・大正屋 湯どうふ本舗
・宗庵よこ長
・このめの里
・佐嘉平川屋

今回はこの温泉湯豆腐用の豆腐どうしを食べ比べようと思います。これは楽しみ!!スタンバイはばっちり。

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圧巻の光景

湯豆腐に火を入れつつ、さっそく温泉湯豆腐の「溶け方」の話で盛り上がる我々。

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温泉湯豆腐には溶け方の「段階」がありますよね。

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あります。私の好みなんですが、豆腐は溶ければ溶けるだけ美味しいと思っています。でもこれは本当に、私個人の好み。

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ーーラーメンでもかた麺がすきとか、やわ麺がすきとかありますけど。湯豆腐もそれぞれで好みの溶け方があるでしょうね。

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そう。それぞれの好みの溶け具合を見つけてほしいんです。いろんな溶け具合で食べてみてほしいです。

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ーー初めて食べるときは食べごろがわかりにくいですもんね。

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食べ方の面で大切なのは具を入れるタイミングです。溶ける前に野菜を入れてしまうと、野菜の水分が出て温泉水が薄まり、豆腐の溶けが悪くなるので。

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どの面も平均的に溶けるように、途中でひっくり返すといいですね。

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豆腐のカットの仕方も重要ですね。温泉水と接している表面積が広いとよく溶けます。たとえば、ちょっと薄めに切ると溶けやすくなるわけです。状況に応じて、豆腐のカットも考えてみると面白い。

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ーーちなみに1丁に対し、調理水はどれぐらい入れたらいいんですか?

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1丁500mlで覚えてください。販売されている温泉湯豆腐用の調理水もだいたい500mlくらいですよ。

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さあ、そうこうしている間にいい感じになってきました。食べ比べていきましょう。


バランスの良い「藤川豆腐店」

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嬉野には「ここに言っておけば間違い無いだろう」という「F2」と呼ばれる(?)お豆腐屋さんがあります。藤川豆腐店さんは、その「F2」のひとつです。

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ーー「F2」……。

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嬉野には湯豆腐の聖地と言われる湯野田地区という場所があり、そこには代表メーカー6社のうち、3社がかたまっています。ヘネシー家も実家は藤川豆腐店。私は藤川豆腐店で育ちました。ぼくの筋肉の70%は藤川豆腐店の豆腐でできています。

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ーーおお。やわらかくて、風味が豊かで美味しい。

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バランスの良い湯豆腐ですね。しっかり溶かしても、豆腐が崩れない。

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温泉湯豆腐用の豆腐って、お箸では掴めなくて、れんげですくわないと食べられないものも多いじゃないですか。藤川豆腐店さんはお箸でしっかり掴めるんです。でも、とろける食感はちゃんとあります。

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とろっとろで濃厚な「福田豆腐店」

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福田豆腐店さんも、湯野田地区で愛されているお豆腐です。「F2」の一角。

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豆腐を切っているときに思ったんですけど、福田豆腐店さんのお豆腐はかなりやわらかいですね。

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ーー繊細ですぐ崩れる感じもありますね。

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とろっとろ。鱧みたい。鱧!私、鱧よりもこっちが好き。

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ーーは、鱧? それにしても、とろとろで大豆の香りが濃厚で。美味しい。

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福田豆腐店さんは溶け方も早いですね。すぐに溶けるから、時間がない人は福田豆腐店さんがいいかも。食べてみると、絹のような舌触り。シルキーだ。

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コクと追い豆乳が魅力「大正屋 湯どうふ本舗」

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大正屋湯どうふ本舗。誰もが知るあの名宿「大正屋」の湯豆腐です。単品での販売はなく、湯豆腐本舗からセット買いをする必要があります。

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おお。これはミルキーな感じですね。福田豆腐店さんはシルキーだったけど、大正屋さんはミルキー。

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ーーほかのお豆腐よりすこしかためだけど、クリーミー。福田豆腐店さんと比べると、食感が全然違う。

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大正屋さんの魅力は「コク」なんです。そして、大正屋さんの湯豆腐には裏技があるんですよ。それがこちら。

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ーーおお。豆乳。

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大正屋さんの湯豆腐セットには必ずこれがついています。濃厚豆乳。めっちゃ濃い。

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ーーこれ、どう使うんですか?

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追い豆乳ですよ。

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ーーうわ、これ最高ですね。

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この豆乳自体、鍋物とかいろいろな料理にも使えます。とってもおいしい豆乳です。

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ふわふわ食感が個性的「宗庵よこ長」

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宗庵よこ長さんはお店あってのお豆腐なので「自分のお店の味はこれなんだ」というこだわりがお豆腐に詰まっていますよね。

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宗庵よこ長さんは嬉野温泉湯豆腐の老舗で、観光客にも一番に名前が上がる人気店。「暮らし観光案内所」でもご登場いただきました。

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よこ長さんの豆腐はフワフワ感が魅力ですよね。温泉湯豆腐といえばとろとろ感だけど、よこ長さんの場合はフワフワ感。「元祖」ともいうべき名店だけど、異端とも言える。

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おお。食感が全然違いますよ!!食感があるのに、溶けている。

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ーーじつは個性派ですよね。

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よこ長さんって、観光客なら誰もが行こうとするお店じゃないですか。それなのに、かなり個性的なのってすごいですよね。ベーシックな湯豆腐を意外とみんな食べていないかも。

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よこ長さんの湯豆腐はおいしいから、それだけで満足して終わっちゃいそうなんだけど、それだけで終わらせちゃダメだと思うんです。ぜひ食べ比べてほしい。

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美味しさ向上中のニューカマー「このめの里」

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嬉野温泉湯豆腐界のニューカマー、このめの里さんです。

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新進気鋭な感じがするでしょう? このめの里さんは温泉湯豆腐界のなかでもかなり歴史が新しい。

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ーーおいしい。これもまた、しっかりと豆腐の食感が残っていますね。大豆の香りもいいし。

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これもまた違いますね。美味しい。

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創意工夫を重ねられて、年々美味しさが増している気がします。すばらしいです。

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食べ応えととろとろ感の両立「佐嘉平川屋」

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佐嘉平川屋さんは通販もよく売れているし、他県でも有名なお豆腐屋さんです。すこしかために感じますけど、溶けるといい感じになります。

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これもバランスがいいですね!!

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そうなんです。食べ応えがあるけど、とろとろ感もちゃんとある。

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ーー豆腐ならではの食感も感じるし、滑らかだし、柔らかいし。

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けっこう豆腐がしっかりしているんで、煮込みがいがあるんですよ。例えるなら「根性のある部下」というか。

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ーーなるほど……。(うまいたとえなのか?)


温泉湯豆腐はタレも奥深い

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旅館大村屋のタレも用意しています。これまでは豆腐オンリーで食べてもらいましたが、ぜひタレで食べてみてください。

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ーーああ〜!やっぱおいしい!

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ヘネシーさん、嬉野温泉湯豆腐のタレにも差はあるんですか?

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ありますね。ごまだれ、ごまじょうゆが定番です。もうひとつ、ポン酢でさっぱりと食べる方法もあります。

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なるほど。旅館をやっているぼくからのおすすめの食べ方があるんですよ。食べた後の残った煮汁。これが豆腐のおいしさがたっぷり出ているから、残すのはもったいない。ここに残ったごまじょうゆを溶いてスープみたいにすする。

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ーーそれ、美味しいですよね……。

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もしくごはんをもらって、煮汁に入れる。そして、もう一度火を入れて雑炊にするというのもおすすめです。

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いいですねえ。自宅でやるときは卵を入れても美味いし、チーズを入れても美味いのでおすすめですね。もうとにかく煮汁はぜったいに残しちゃダメ。しゃぶしゃぶも美味しい。

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ーー楽しみのひとつですよね。

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嬉野の温泉水は胃腸にいいと言われていますし、もうここに大豆のイソフラボンとか溶け込みまくりですから、体にはめちゃいいですよ。

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湯豆腐の世界の奥深さに感動

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ヘネシーさん、ぼく今日安心しましたよ。6種類集めて「何にも変わんないな」ってなったらどうしようかと。

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楽しい! こんな楽しくなるとは思わなかった。

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ーーまさか薬味も何もつけずに豆腐だけを食べて、こんなにはしゃげるなんて夢にも思いませんでした。お酒も入ってないですからね、今。

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私も豆腐を一気に食べ比べた経験はなかったんですが、想像以上に違いがありました。湯豆腐って奥が深くて、いろんなお店にいろんな味があるので、自分好みの湯豆腐を探して見つけて、湯豆腐を楽しんでいただきたいです。

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これだけ湯豆腐って楽しいんだよ!ってことが伝わったらいいですね。ちょっとコアすぎて、アツすぎたかもしれませんが。

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眼が血走っちゃいました。

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嬉野温泉は湯豆腐だけじゃなく、お風呂に入れますからね。入れて食べれる。唯一無二。ぜひ嬉野へきていただきたいですし、嬉野温泉湯豆腐を取り寄せて、自宅で食べてみてください!

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嬉野温泉の湯豆腐は楽しい!

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まさかシラフで豆腐ばかりを食べて、こんなに盛り上がる日が来るとは思いませんでした。

「湯豆腐は楽しい」

この記事を読んでくださった皆さんには伝わったのではないでしょうか。ぜひみなさんも温泉湯豆腐をもう少し掘ってみてください!

湯豆腐の宴の模様の完全版はこちらをどうぞ。

最後まで読んでくださってありがとうございました。嬉野温泉 旅館大村屋のnote、次回もお楽しみに。

協力:佐賀新聞 YouTubeチャンネル


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