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文教堂赤坂店閉店で考えたこと

今朝、ネットを開くと「文教堂赤坂店が閉店へ」という話題がトップニュースになっていた。「たかだかひとつの本屋が店じまいするのがなぜ?」と疑問に思ったが、読んでみてビックリ。よく知っている書店だった。忘れていたのだ。

以前、フィルムで仕事をしていた頃。先方の要望に応じて3種類のフィルムを使い分けていた。モノクロは自分で現像プリントして納品。急ぎの仕事や営業写真はカラーネガでフィルム渡し。雑誌などのカラーページはリバーサルフィルムだ。

リバーサルフィルムは撮影後にプロラボと呼ばれる現像所に持ち込む。個人的な撮影は好きな現像所で良いが、仕事の場合はその会社や依頼主が口座を持っている所に行かなければならない。それはコダック系と富士フィルム系に分かれ、いくつかあった。

当時よく利用したのは、コダック系の堀内カラーとサカタ(ラボステーション)。富士フィルム系のクリエイトである。私のような出版系のプロはテンバを背負って汗だくでたどり着き、35mmなどのロールフィルムをポンとカウンターに置いて口座名を告げ、「番記ありのノーマルで(スリーブなのは当然なので言わない)」と言えば、あがりは自動的に会社に配送される。

それを脇目にポロシャツの襟を立てた広告系のプロは、4×5のホルダーがたくさん入ったジュラルミンケースをドンとカウンターに置き、「1番がテストであとは保留!」と告げて、店頭に停めた真っ赤なボルボで風のように立ち去るのである。

そんな雰囲気が色濃くあったのは堀内カラーだった。その堀内カラーが自社での現像をやめると聞いたときはショックだった。「じゃあ何をやるの?」と思ったがデジタル処理とビジュアルのプロという方向で店舗も多く残している。サカタも同様の方向性のようだが店舗はない(と思う)。クリエイトは今も利用しているが銀座の1店舗のみだ。ここはもともと作家系のプロとアマチュアが多く、ギャラリーと統合してうまく存続させている。

さて書店の話だった。

その文教堂赤坂店は地下鉄千代田線赤坂駅の上にあった。今はどうか知らないが、路面より一段下がった位置にオープンスペースがあり、座って休めるようになっていた。取り囲むように店舗があり文教堂もそこにあった。

1990年代後半から2000年代初めまで、航空会社の機内誌の撮影をしていた。その制作会社は六本木にあり、赤坂駅近くのサカタに口座を持っていた。海外取材から帰ると100本以上のフィルムを持って赤坂に行き、現像所に入れた帰りに必ずこの書店に寄った。晴れ晴れとした気分で本を衝動買いし、家に帰って妻の帰りを待って焼肉店で祝杯を上げるのが、お決まりのコースだったのだ。

その書店が閉店となり、赤坂駅周辺には一般の書店がまったくなくなる。近くにはTBSもあり、マスコミも衝撃を受けたようだ。以前、芸能人のインタビュー取材でよく行った喫茶店も、もうないだろうな。

フィルムでも書店でもそうだが、こういう記事は「ネットが隆盛となり」「コ口ナが追い打ちをかけ」というお決まりのことしか書いていない。もちろんその先は読み手が考えれば良いのだが、私なりに少し分析してみよう。

つい先日のことだが知人とやり取りする機会があった。同じミュージシャンが好きで知り合った3人である。そのミュージシャンKは音楽だけでなく、文章や絵の才覚もあり出版物も多い。フライヤーやポストカードもファンは楽しみにしている。

そのフライヤー?だかが、最近のライブではデジタルデータ?になっていて「えー?」「Kさん、そっち側に行っちゃうの?と思った」とその知人は言った。彼女も手わざを使うクリエイティブな仕事をしており、Kさんの同様なところを愛している。私は自分のことも含めてそれについて考えを述べた。

簡単に言うと「作り方がアナログで、出し方がデジタルでも良いのでは」という事だ。クレヨンで書いたイラストの暖かさはデジタルデータでも伝わる。フィルムで撮ったネガをスキャンからデジタル処理しても、暗室の経験を活かせば深みは出せる。

「カメラと写真」という電子書籍を書いている。最初の計画では紙の本を作って何らかの形で販売するつもりだった。しかしまず印刷が上手く行かない。プロとして長年やってきて、印刷物も多いのだが依頼仕事しかしておらずノウハウがない。そもそも写真はフィルムでもスキャンして画面で調整しているので、電子書籍の方が良いのではと割り切った。

すべてをアナログでやろうとしたら、苗からきゅうりを作って収穫し自転車で対面販売をするような話になるだろう。自分で印刷してホチキス留めをしてフリーマーケットで売るのか。それではクオリティが満足できないとなって、大枚をはたいて印刷所で納得できるまで詰めるのか。どちらも難しいし何よりも不特定多数の人に届かない。

書店の閉店という話からは少し離れてしまったが、たしかに判で押したようなネットニュースの記事はその通り。人が出かける事が少なくなれば、こうなる。私も書店は大好きだけど、もうそういう時代だと受け入れるしかない。きゅうりの手売りではないが、魅力的なセレクトの個人経営の書店はまだある。今までのやり方が通用しなくなっているだけだ。

「使い分け」をして自分の機嫌をとっていこう。

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戦前のライカもchromebookも有用な道具なのだ。

電子書籍
「カメラと写真」
https://www.amazon.co.jp/s?k=%E6%9C%9D%E6%97%A5%E8%89%AF%E4%B8%80&__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=4P8ICTVTZ5Q0&sprefix=%E6%9C%9D%E6%97%A5%E8%89%AF%E4%B8%80%2Caps%2C174&ref=nb_sb_noss_1


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