#1 ジュリーとローリングストーンズ
一時期は「ストンーズを知らないで逝ってしまうなんて人生の何パーセントか損しています」などと名言めいたことを思っていた私です。そりゃ、誰からも読まれないとしてもですね。一回目となると、やっぱり気合いを入れてストーンズの話なんですけどね。ただ、「無人島に持っていくとしたら、どのアルバムか?」程度でしたら、思いっきり失望させてしまうでしょう。そもそも期待なんてしていないですか?
……ですよね。
とはいえ、ローリングストーンズというハッシュタグがあるからお越しになられたってことは、「え!知らなかったぞ!ストーンズってそうだったの?」ってな情報を知りたいでしょう?また、沢田研二さんファンにしてもです。
先日、いつかどこかで、なんとなく買った沢田研二さんのアルバムのベスト盤(ROYAL STRAIGHT FLUSH)をCD棚で発見したんですね。買った当時は、職場で爆音で鳴らしておりましてね。勝手に野郎どもと、「えぇ!ジュリーってすげぇ!かっこ良すぎるっ!」とヘビロテしておりましたね。
最近、Apple musicで色々と辿っていましたら、沢田研二さんを発見しました。久しぶりっすね。と、サブスクの旅の途中で立ち止まってみました。私は「サムライ」という曲が一番好きでですね。因みにアルバムヴァージョンとシングルヴァージョンがありますが、極端に違いますから。コクのある気合の入った方ですね。貼り付けているYouTubeは口パク(違っていたらすいません)でしょうが、こちらです。あ、口パクは恥ずかしくはありませんけどね。若い頃のストーンズもTVでは平気でやっていましたしね。むしろ、きっちり宣伝にもなりますから、そしてファンも増えますし、レコードの貸借りなんかで、地味に曲も拡散しますから。そういうことですから、ちゃんとした歌声を届けた方がいいに決まっています。
やっぱりですね。名曲は歌わなきゃと、昭和の名曲が好物なエレカシの宮本浩次さんも、この曲を張り切って歌っていたのをYouTubeで見たことがあるんですね。そりゃ、宮本さんの歌唱力の高さは日本ではトップクラスとは思っておりますよ。でも、やはりオリジナルには勝てないっ!(そういや、彼もストーンズファンですね。ストーリートファイティングマンはパクりっす…って)そりゃそうでしょうね笑。まぁ、ともかく、なんだか残念感すら……。私としましては、「みやじさん、二度と歌わないでください!」とすら思ってしまいまして。そういうエレカシも、仕方もないカバーアルバムを2枚も出されちゃってですね。これがまた聴くに耐えないという始末……。(ちなみに、吉井和哉さんも「サムライ」をカバーされたそうで……。こちらは音源を発見出来ず。あっさり諦めましたけど)
しかし、多くのミュージシャンはカバーが好きですよね。痛いほど、その気持ちは分かるんですよ。なにしろ、私のバンドもカバーが大好きですからね。そりゃ、やはり憧れますから演ってみたいのは当たり前ですよ。でも、大抵は上手い下手とかいう問題ではなくオリジナルを超えることはないじゃないですか。いや、超えなくたっていいんですけれども、そのミュージシャンが歌うべきして歌った「味」まではカバーできないんですから。ですんで「頼みますからスタジオで演って満足しといてくださいね!」とか思ったりしてですね。
どうしてもカバーしたいのならば、カバーアルバムだらけの初期のストーンズを見習って欲しいんですよね。カバーだけでビートルズとアッサリと並んでしまう凄み。せいぜい、あれぐらい世界を驚かせてくださいっ!と思うんです。例えばですよ。ロバート・ジョンソンの「Love In Vain」を、恐ろしく大胆にカバーしちゃって、もはや「ストーンズのオリジナルでいいんじゃね」レベルぐらいなですね。
随分と話が逸れましたが、この「サムライ」という曲ががリリースされたのは、1978年です。ここから1980年頃までが、まさに彼の歌手としての黄金期でして。この時代には、多くの名曲がヒットを連発しております。この「サムライ」も、やはりヒット曲で、もはや軟弱化した男達(この時代でそうだとすれば、今の男達って…)へのアンチテーゼだったそうです。その無骨な曲を、彼の艶やかで実に味わい深い美しい歌声で聴かせてくれます。はい。では、どうぞ。頼みますから、どうぞ。序盤はジャケットに一足早く「帰ってきたヒトラー」やらかしています。曲の終盤は、もっと怖いですよ。完全に銃刀法違反ですね。でも、ジュリーなら「まぁ、いいか」ってな特例が出るぐらい凄いですから見ものです。
彼が、生粋のストーンズファンなのは有名ですよね。何しろ、あの時代のYouTubeなんて見ておりましたら、完全にミック・ジャガーのパクりでしょ!とばかりのビジュアルとパフォーマンスでございます。いや、パフォーマンスに至っては、ミックもビックリするだろうと、やりすぎでしょうと。にしても、これが実にサマになっております。なんとも「ザ・セクシー」ともいえる妖艶さ。
さて、私は先に彼の歌唱についても少し触れましたが、それが随分と過小評価されていると思うんですよね。この不可解な謎を考察してみたところですね。若きし頃の歌唱力がイマイチだったことのイメージが引きずっていることや、ビジュアル的な過激さの方が目立ってしまっていたのが原因だと思うんですよね。ですので、それが後世の音楽好きの、分かる人は分かるぐらいな程度にしか伝わらなかったと思うんですよね。
まぁ、しかしですね。当時の若者がテレビを見ながら「ジュリー、カッケー!」なんて思っていた頃って、なんだか、いい時代だったような気がするんですよね。家族が揃って、ベスト・テンを楽しみにしてですね。いや、ジュリーの派手さだけは、大人にとってウケていたのは怪しい気がしますが……。そうだとしたら「ジュリー、ジュリー、あんたの生まれてきた時代が悪かった」などと思うわけですよ。
それと、この話は有名ですけど、1979年に「太陽を盗んだ男」という映画に沢田研二さんが出演していますよね。私は観てはいませんが、なかなかな名作だそうで。終盤には「ザ・ローリング・ストーンズの来日公演を実現しろ!」と言ってのけるそうでですね。実は、このアイディアは沢田研二さんの推定アドリブなんですよね。ですから、ストーンズファンは、彼に全力で感謝すべきなんですね。だって、それから、ほぼ20年後には、ちゃんと彼の要求は日本政府に通じたのですから。エリザベス女王が圧力をかけてきたとかいう、とんでも話もあるぐらいで。私もSTEEL WHEELSのLiveDVDなんぞを観て、すげぇなあと思ったりするわけですね。あのライブを生で見れた世代の方々は、きっと「Start Me Up」を聴くどころか、先に感涙にむせんだことだと安易に想像がつきます。
キース・リチャーズは「Happy」を歌っていました。
I need a love to keep me happy〜
Baby, baby keep me happy〜
「はぁ?一体、何を甘ったれてんだ?」と最前列で聴いていた沢田研二さんは、そう思ったんですよね。だから、思わず「キースさぁ、、、違うんだよ。男は誰でも不幸なサムライなんだよ」と呟いていたんです。
そして、ベージュの格子柄のスーツを羽織っていた彼は、おもむろに立ち上がって、「さくら、俺は行かなくちゃならないんだよ」と精一杯の作り笑顔で言いました。「お兄ちゃん、せめて最後の曲を聴いてからでもいいじゃない」
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