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人見知り大学生だった私が、接客業に目覚めるまで

人間関係に悩まされる苦、克服したい欲

私はかなりの人見知りだった。人と打ち解けるのにも時間がかかるし、仲良くなったと思っていたのに疎遠になってしまうことも多く、そんなときはとても落ち込んでしまう。人間関係を構築し、そしてそれを維持すること。私にとって、その両方が難しく、人間関係の苦労は絶えなかった。

そんな私だったけれど、大学在学中にアルバイトをしたことで、「接客の楽しさ」に気が付くことになる。大学生のアルバイトといえば、サービス業を避けては通れない。いや、正確にはそんなことないのかもしれないが、私は極度の手先の不器用さを持ち合わせているため、例えば飲食店のキッチンなんかは務まる気がせず、最初から視野に入っていなかった。というわけで、私は接客の仕事へと歩みを進めることとなる。

こう書くと消去法のように聞こえるかもしれないが、私はもともと接客がしたかった。人見知りだからと言って、人と接したくないわけではない。むしろ、もっと人と接してみたいという思いさえあった。


「接客が楽しい」と感じる

それはショッピングモールに入っている、30,40代男性をメインターゲットとしたアメカジのアパレルだった。お客様がいらしたら挨拶をして、様子を見て試着を促したり在庫の有無をご案内したり、一緒にコーディネートを考えたりする。

「簡単な仕事じゃないな」と思った。最初は、一回り以上歳の離れた男性に話しかけること自体が気が引けた。スタッフも男性で長く勤めている人が多く、私にはそっけない態度だったのに他のスタッフとは親しげに話すお客様の姿を見ては、心が折れそうになっていた。売り場に立つことだけでも辛く感じる時もあった。

そんな中でも、私は接客の中で徐々に接客スタイルを習得していった。私が意識していたことは、「自分が心地よいと思う接客」。自分が買い物をするときも、間髪入れずにガツガツ話しかけてくる店員が苦手だった。もちろん、そういう接客がはまるお客様もいる。しかし、実は私のように考える人も多いんじゃないかなと思ったのだった。

私は「自分が話しかけたいタイミング」ではなく、「お客様が話しかけてほしいであろうタイミング」で話しかけることを心がけるようにした。そして、話しの引き出しも少しずつ増やしていった。

初めて全身コーディネートを任せてもらいお客様に喜んでいただき、「また来るよ」と言葉をかけていただいたときは、内心飛び上がるような思いだった。私の接客で喜んでくれる人がいるんだ、というその事実に驚きと喜びがあった。それからは、「お客様に喜んでもらうこと」それだけを考えて接客に励んだ。

売上目標を達成したり売上1位を獲得したりした時も嬉しかったが、正直に言って、私は「数字」に関心はなかった。性格上、気にするとコンディションを保てなくなると思ったせいもある。店長の配慮もありがたかった。私が一番働く時間が短いこと、入って浅いことなどを踏まえ、無理のない目標設定をしてくれていたため、やる気が削がれることもなかった。

人との接し方が少しずつだけれど、改善されていくような気がしていた。とはいえ、今思い返してみても、私のスタッフ間でのコミュニケーションがうまくいっていたとは思えない。出勤する日数が少なく、勤務する際に着用する自社商品も本当に最低限しか購入しなかったので、決していい顔はされなかったし、スタッフと雑談やプライベートな話しをした記憶がほとんどない。ただ、感じの悪い対応をされたことはなかったし、授業の関係での急なシフト変更にも応じてもらったりと、ずいぶん融通を利かせてもらった。何より私を働かせてくれたことに本当に感謝している。

お客様に自分から話しかけるのに物おじすることもなくなり、接客がうまくいかなかったときも都度落ち込んで気にすることもなくなった。純粋にお客様との会話を楽しむことがようやく出来るようになった。それはある意味、自分の中で何かが吹っ切れた瞬間であり、そしてそこからは気持ちがとても楽になった。


ほんの小さな変化

そして、私の中では小さな変化が起こっていた。以前よりも、口に出す言葉に配るようになった。「察する」ことが出来るようになった。相手を見て、相手に応じた接し方を意識するようになった。毎日、人に対しての自分の言動を振り返るようになった「自分ではなく、お客様がどう感じるか」を考えるようになった。

それは、小さいけれど私にとってとても大切なことだった。一言で書いてしまうと、いとも当たり前で簡単なことのように思えるが、私はこれまでの人生でこれが出来ていなかった。また、出来ていないということに気づきもしなかった。

自分を客観的に見るというのは至難の業である。実際、私は今も「自分を一歩離れたところから見てみる」ことを意識しているが、意識しないと難しい。また、意識しても難しい。

アパレルでの接客業での経験は、「客観視」の重要性を教えてくれた。これは接客業にとどまらず、人間関係の構築に大きな意味をもたらす。その気づきを与えてくれたのが、接客業だった。自分を俯瞰できる環境があると、慢心することなく上を見て歩いていける。より高みを目指していける。そんなことも考えさせられるきっかけにもなった。

私は、この経験をきっかけに、大学卒業後にラグジュアリーブランドの販売職を最初のキャリアとして選ぶことになる。

人工知能などの発展が目ざましい昨今だけれど、私は「対人」でなければ意味のない仕事が確実に存在すると信じている。そんな想いを共有することが出来れば嬉しく思う。

ラグジュアリーブランドの販売職に入社してからのことは、また別の記事にまとめようと思っている。販売職を希望する人、アパレルやラグジュアリーブランドに興味がある、そんな人に私の言葉が届けばいいなと願う。


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