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管理系部門がIPO準備でやること Part.11 - 予実管理編 -

 「管理系部門がIPO準備でやること」について、数回に分けて説明・ご紹介しています。
 今回は、特定の部門・部署ではなく、予実管理の業務です。



予実(予算実績)管理は大切な業務

 予実管理はもちろん会社にとって大切な業務です。会社の成長の過程を月次・四半期次・年次で、業種によっては日次で確認することが求められます。会社の数字を追いかけるということは、その数字は正確又は速報値のように限りなく正確な数字が求められますので、数値情報を収集する方法等手続きは正確かつ厳密な業務の流れが求められます。
 そうなると内部監査・内部統制にとっても重要な業務と捉え、監査する側として注目する度合いは高いものとなります。なぜなら予算・実績の数値情報は財務報告に直結する情報であるからで、その情報たちの収集・管理・共有の状況はガバナンス・コンプライアンス・情報セキュリティ等の観点で監査し、正確性と機密性を保つ必要があるからと考えられるからです。例えば、内部監査の目線で予実管理の業務を監査するならば、正確な数値の情報を入手する方法(ツール等)を確保・使用しているか。収集した正確な数値の情報を用いて予実分析を行い、財務責任者の確認・承認を経て取締役会に報告されているか。会社がその財務報告を行う前に他に漏洩していないか。つまり、収集の方法と経路や正確性・機密性はまさに皆さんの会社のガバナンス、コンプライアンス、情報セキュリティ等を表すものになりうるものですので、内部監査・内部統制の皆さんとしてはどうしても注目しなくてならない業務になります。

 では、そのように注目度の高い予実管理の業務を、管理系部門はどのように捉え、正確性と機密性を保つ業務体制を構築すれば良いでしょうか。今回のこれを具体的な方法論ではなく、その考え方と準備・たたき台をご紹介します。



予実管理の難しさ

 まず、予実管理は会社にとって非常に大切な業務なのですが、非常に難しいです。その難しさは、上場会社の皆さんはご存知のとおり、その業務体制の構築と維持していくところです。適時開示情報閲覧サービス(TDNET)をみると、多くの上場会社で四半期の決算短信と並行して業績予想の修正が開示されているのを目にすることがあります。業績予想の修正は、上場会社の開示義務です。(参照:日本取引所グループ「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」・開示基準については、日本取引所グループサイトを参照してください。)会社はある程度先を見越して期初又は期中に事業計画を策定しますが、その事業計画が社内又は社外状況に影響によって修正する必要に迫られることがあります。そしてその修正が日本取引所の開示基準に基づいて、事業計画にある業績予想を修正し開示しなければなりません。開示義務があるのですから、これを担当する業務が必要になります。その業務の大部分を担っているのが予実管理の業務となります。非/未上場の会社でも予実管理は大切ですが、上場会社は開示義務を果たすためにも正確性・効率性・機密性そして連続性が求められますので、予実管理の体制構築とその維持が非常に難しいと考えられていることにも納得できます。
 また、上場会社に求められる予実管理は、その会社の当期の事業計画(予算計画)に対する達成の進捗はもとより、前期と比較しての成長率(YoY)、当期純利益等ステークホルダーには欠かせない財務情報の管理が求められますので、この点においても正確性・効率性・機密性・連続性が求められるというわけです。しかも、この業務は取締役会への月次報告の作成、四半期ごとの適時開示、次期事業計画策定のための資料の作成定時株主総会の計算書類等のための資料の作成等に幅広くそして大きく影響する業務ですので、上場会社にとってはこの業務の正確性・効率性・機密性・連続性の状況次第で会社の命運を分けてしまうことになりかねませんので、特に気を遣う業務と言えるでしょう。

 業績予想の修正は、日本取引所の開示基準に従って開示することとなります。直近の業績の上方修正/下方修正に伴う等の理由で業績予想の修正を行いますが、なんとなくステークホルダーの目が気になってしまうことがあるかもしれません。しかし予実管理に求められる目的・使命は、正確性・効率性・機密性・連続性です。ここで予実管理の体制づくりのポイントをご紹介します。



予実管理の体制づくりのポイント

 予実管理の体制づくりは会社の状況、情報収集の方法(ツール利用等)、予実管理に携わる人員数やスキル等によって、体制の形は様々です。また、皆さんの会社の個性もあると思いますので、細かい点については皆さんの会社内でじっくりご検討ください。ここで、予実管理の体制づくりで最も重要なポイントがあります。それは、その予実管理体制が上場後も持続できるか。正確性・効率性・機密性・連続性を向上できる業務内容であるかという点です。

 先にご紹介したとおり、予実管理の業務は上場・非/未上場を問わず大切な業務です。そのため、体制が縮小したり弱くなってはいけません。持続することが大事です。会社はその規模を大きくしていき業績を向上していくこと、つまり成長し続けることを求めています。予実管理の業務は、会社の成長し続けるのと並行して正確性・効率性・機密性・連続性も向上し続ける必要があります。予実管理の体制づくりでは、まずは会社の今の状況等を正確に把握し、経営方針、中期事業計画等を踏まえて会社の今後の成長度合いを見定めつつ、現在そして将来においても業務を維持し、さらに会社の成長に合わせて業務の正確性・効率性・機密性・連続性を向上し続けることのできる体制づくりの検討を始めていただくことをお勧めします。


 予実管理の業務は、上場会社に限らず非/未上場、IPO準備会社のどこでも必要な業務です。最近ではアプリケーション等のツールも発達し使い勝手良くしかもみやすくなっています。今後はAIを利用した業績予想も行われることでしょう。予実管理の業務に完成はありませんし、決まったかたちもありません。IPO準備会社の管理系部門の皆さんは、ぜひ予実管理の難しだけを見て臆することなく、まずは今後業務体制を試行錯誤しながら維持、向上することを前提に、予実管理体制を構築することをお勧めします。



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