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会社を辞めて留学してわかる、若い頃との違い【1】

歳なんて関係ない、って言いたい。

でも、実際、あった。

新たな地に降り立ってすぐ、バックパック背負って、ゲストハウスを渡り歩いた頃の自分の感覚にはもう戻れないのかも、と思う30歳を目前に控えた私がいた。

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海外に一人で行き始めたのは18歳の頃。アルバイトをして貯めた限られた予算と身の安全のバランスを見ながら、毎回決して贅沢ではない旅だった。

一泊500円のゲストハウスに泊まって、そこで会った人たちと話が盛り上がってFacebookで友達になって、ドミトリーで自分の荷物が盗られないかビクビクして、共用のシャワーで濡れないように着替えを置く場所にいつも困って。

不便もたくさんあるけど、「非日常」の刺激は病みつきだった。好きなことは「旅をすること」といまだに言い続けるのもこの経験があったから。旅を通して自分の知らない世界を知ることは、私にとって最高で最大の学びの場だった。

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一度、現地で働く人に案内してもらって、その街のシンボルのタワーにある、私プレゼンツの旅では行かないようなオシャレなバーに連れて行ってもらったことがあった。

その時こんな旅の楽しみ方もあるんだな、と違う世界を知ったようで楽しくて、嬉しかった。将来もっとお金を稼げるようになったら、こんな旅の仕方もしたいな、と思った。でも、「こんな旅」は時々であって、私は幾つになっても、こうやってバックパックを背負って、ゲストハウスのドミトリーに泊まるんだ、というのが前提だった。この混沌の中に身を置く旅のスタンスが、ずっと続くんだと、その時は疑うことなく思っていた。

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それが変化していることにうっすら気付き始めたのは留学前、社会人になって久しぶりに一人旅に出た時。仙台だったか、予約していたゲストハウスにやや遅めの時間に足を踏み入れた。

そこには宿で出会ったのであろう若者たちと、宿のスタッフとがワイワイ楽しそうにしていて、なんだか輪には入って行きづらい「雰囲気」があったというよりは、自分の心の中の「壁」を感じて、深くはつっこまずその夜はそそくさと部屋に行き、自分のベッドに入った。

自分のベッドの中でスマホを眺めながら、ああいう時はどうしてたんだっけ、と考えつつも、輪に入って行かずともこうやって一人で過ごすのもなんか悪くないと感じつつ、その日は眠りについた。


ー続く



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