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紅茶詩篇

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#紅茶詩篇

紅茶詩篇『漁火と淡雪』

紅茶詩篇『漁火と淡雪』

 淡雪に溺れてこの寒い夜に消え去る
 温かな流れ雨
 心臓の影に蟠る血の塊が溶けてゆく
 何かの悲劇のように毎日同じ日付と時刻で止まったままの日記帳
 時計仕掛けの日々は忙しなくて
 うたた寝をした記憶さえ手のひらは掬わない
 思い出されるのはいつも何かに励んでいるだけの自分自身
 悪に強い花に祈っていたあの夜
 私の世界は時にひびを入れたまま
 私の魂が魔物に攫われそうになった夜の恐怖で
 時空

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紅茶詩篇『きらきら』

紅茶詩篇『きらきら』

 私のかけら
 きらきらしてる
 硝子で出来てる
 星みたい
 小瓶に詰める
 金平糖みたい
 私のかけら
 きらきらかけら

 涙のかけら
 きらきらしてる
 氷で出来てる
 宝石みたい
 小瓶に詰める
 飴玉みたいに
 私の涙は
 きらきら涙

 夜のかけら
 きらきらしてる
 闇で出来てる
 海みたい
 小瓶に詰める
 宇宙みたいに
 夜のかけらは
 きらきら銀河

 光のかけら
 きらきら

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紅茶詩篇『ブロッコリーとツナのパスタ』

紅茶詩篇『ブロッコリーとツナのパスタ』

 パスタを茹でるお鍋の中に
 一緒に入れて煮込むブロッコリー
 くたくたに茹で上がったところに
 ツナを入れて味付けをする
 母が教えてくれたレシピ
 今日の夕食は誰も居なくて
 私は私一人のために
 ワンプレートのパスタを作る
 寂しくなんかないよ
 美味しい手料理があるから

 パスタを茹でるお鍋の中に
 一緒に入れて茹でるさつまいも
 賽の目に切って火が通った頃に
 パスタとブロッコリーは柔

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紅茶詩篇『地図にない安らぎの場所』

紅茶詩篇『地図にない安らぎの場所』

 地図にない場所で休みたいと思ったら
 旅の果てに辿り着いたのは私自身の家だった
 私は私の部屋で紅茶を淹れた
 机に開いて置かれていた手帳には
 暦の今日の部分の空白に
 青い蛍光ペンで印がつけてあった
 何かを書き込んだ記憶は無かったが
 今日の欄には自分の名前で
 お茶をする予定が書かれていた
 まるで自分を相手に先約を入れたように
 日常と疲労に溺れていたんだろうか
 得体の知れない虚しさ

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紅茶詩篇『青の旅人』

紅茶詩篇『青の旅人』

 薔薇が在る場所へ辿り着いていた
 悪意に強い花を私は好きになっていた
 うつくしの夜を越えて私は辿り着いていた
 海と空が出会う場所を求めて旅をしていたら
 私が出会った早朝には薔薇が咲き乱れていた
 病が理由で光差す場所を求めて彷徨った
 月明かりの夜を海の中心に舟を浮かべて
 何処かで連絡を取り合っている空と海を
 夜を拠点にしてさすらい歩いた
 君は強すぎたんだよ
 憎しみでは歩けなくなり

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紅茶詩篇『寝ずの番をする死神』

紅茶詩篇『寝ずの番をする死神』

 寝ずの番をする
 蝋燭を二本守る
 剣を以て
 通夜の主演になったようだ
 皆が死者のために
 日常の仕事を放棄した
 気遣いを共有して
 日頃のぎすぎすを
 忘れたことにしてくれている

 眠らずに死者を見ている
 蝋燭の火を見つめる
 剣先をかざして
 通夜の主演になったようだ
 皆が死者のために
 日々の苛立ちを放棄した
 気遣いでいっぱいになりながら
 いつものごわごわを
 今だけはなか

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紅茶詩篇『嘯いていたい』

紅茶詩篇『嘯いていたい』

 私は詩人だから
 いつだって何かを嘯いていたい
 少なくとも百円均一のセリアのお店で
 コーヒーフィルターとノートを買っている場合ではない
 私から漂うものがそんな日常の香りと言葉ではいけない
 コーヒーもノートも詩作には必要だけれどね
 私は詩人だから
 もっと嘘のような本当のことを呟いていたいんだ

 私は詩人だから
 さも意味ありげな無意味なことを嘯いていたい
 少なくとも無印良品で買った

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紅茶詩篇『悪魔は神が嫌いじゃない』

紅茶詩篇『悪魔は神が嫌いじゃない』

 悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。
 宗教的な意味に於いて。
 悪魔は神様を狂信しているひとが、
 きっと嫌いなんだ。

 悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。
 文化的な意味に於いて。
 悪魔は神様を知らないひとに嘘を言って、
 からかって遊んでいるだけなんだ。

 悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。
 悪魔学的な意味に於いて。
 悪魔は自分がやったことの取り返しがつかなくなると、
 神様

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紅茶詩篇『凍てつく冬薔薇』

紅茶詩篇『凍てつく冬薔薇』

 うつくしいものが分からないことは、
 怖いものが分からないことと同じくらいには、
 恐ろしく危険なこと。
 世界が終わる冬薔薇の時刻、
 巨悪の心が零してしまったんだ。
 もしも奇跡が消えた夜に。
 喪われた青い星の軌跡の果てに消えてしまった。
 そして忽ち崩れ去った。
 悪は人間を嘲る場所に在るのに、
 うつくしいものへの畏怖に慄える心は持っているらしい。

 うつくしいものへの畏れがない者は

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紅茶詩篇『牢獄』

紅茶詩篇『牢獄』

 私は学校が嫌いだった
 学校での出会い全てが
 何一つとして誰一人として
 私を助けてはくれなかったから
 高校生で心を壊して身体を壊した私のことを
 誰も気づいてはくれなかった
 死にたいとこぼしたところで
 教師は明るく笑ってる
 仕事の方が好きだった
 傲慢な教師みたいな大人は
 一般的な社会にはいないからだと思った
 自分より経験値がない人間を相手にしていることを忘れて
 傲慢を働いてい

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紅茶詩篇『青』

紅茶詩篇『青』

 月夜の青に溺れていた
 肌の肌理が乾いていた
 私は船を漕いでいた
 ひとりの青い海の夜に
 流された血を溶かしながら
 傷を負った肌と肉体から
 この薔薇を守るために骨まで達した恐怖の傷に
 心許ない手当てをして
 清い於血が傷からしみるのを鎖すように隠しながら
 心を神経そのもののように研ぎ澄ましていた
 まるで清い血で恐怖を飲み物とする神のように
 眠りにきちんと癒やされることが約束されて

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紅茶詩篇『死神が通る』

紅茶詩篇『死神が通る』

 私を怖がる皆々
 私を追い払い勝とうとする
 恐ろしいものだと泣く
 或いは汚いものだと嘘を言う
 なのにも拘わらず万策尽きると酷いことを言う
 最も煌びやかで何よりも荊(あざ)やかな私に向かって
 迎えに来い
 どうか苦しみ無いように
 涙も息もなく言うのだ
 あなたはうつくしい
 私に最早言葉はなく
 私を貶す者の終わりに
 彼らの終わりに通りがかったら
 私は誰かの死を迎え送った後に
 そ

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紅茶詩篇『もしも奇跡が消えた夜に』

紅茶詩篇『もしも奇跡が消えた夜に』

 もしも世界から奇跡が消えたら、最初に何がしたいだろうか。
 肌寒い夜の下で、私は妹の顔を見ていた。
 私がそう尋ねると、妹は私の肩に肩を寄せた。
 妹が、奇跡の類いを信じてはいないことを、私はよく知っていた。
 私は漠然と杳(とお)くにいる尊い何かを信じている。この子はそんな私に寛容なだけで、何かを信じてはいなかった。
 私は奇跡なんて、信じていない。
 でも、奇跡は、世界からなくならない、きっ

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紅茶詩篇『酔うべきはうつくしい女』

紅茶詩篇『酔うべきはうつくしい女』

 自分の恋から、恋が分からない女。
 恋ではなくて、異性が好きな女。
 まともに狂ったことがない女。
 何も盗られたことがない女。
 本当に卑しい男から、声を掛けられたことがない女。
 他の誰かを助けるために、手を差し伸べたことがない女。
 いやらしい男から声を掛けられることに悦び、自分は常に手を取ってもらうべき女だと信じてる。
 月の所為にして。月の所為にして。
 一番にはならない女。
 だけれ

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