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剣城かえで
2024年10月10日 19:45
淡雪に溺れてこの寒い夜に消え去る 温かな流れ雨 心臓の影に蟠る血の塊が溶けてゆく 何かの悲劇のように毎日同じ日付と時刻で止まったままの日記帳 時計仕掛けの日々は忙しなくて うたた寝をした記憶さえ手のひらは掬わない 思い出されるのはいつも何かに励んでいるだけの自分自身 悪に強い花に祈っていたあの夜 私の世界は時にひびを入れたまま 私の魂が魔物に攫われそうになった夜の恐怖で 時空
2024年10月6日 22:15
私のかけら きらきらしてる 硝子で出来てる 星みたい 小瓶に詰める 金平糖みたい 私のかけら きらきらかけら 涙のかけら きらきらしてる 氷で出来てる 宝石みたい 小瓶に詰める 飴玉みたいに 私の涙は きらきら涙 夜のかけら きらきらしてる 闇で出来てる 海みたい 小瓶に詰める 宇宙みたいに 夜のかけらは きらきら銀河 光のかけら きらきら
2024年8月31日 11:49
パスタを茹でるお鍋の中に 一緒に入れて煮込むブロッコリー くたくたに茹で上がったところに ツナを入れて味付けをする 母が教えてくれたレシピ 今日の夕食は誰も居なくて 私は私一人のために ワンプレートのパスタを作る 寂しくなんかないよ 美味しい手料理があるから パスタを茹でるお鍋の中に 一緒に入れて茹でるさつまいも 賽の目に切って火が通った頃に パスタとブロッコリーは柔
2024年7月28日 22:16
地図にない場所で休みたいと思ったら 旅の果てに辿り着いたのは私自身の家だった 私は私の部屋で紅茶を淹れた 机に開いて置かれていた手帳には 暦の今日の部分の空白に 青い蛍光ペンで印がつけてあった 何かを書き込んだ記憶は無かったが 今日の欄には自分の名前で お茶をする予定が書かれていた まるで自分を相手に先約を入れたように 日常と疲労に溺れていたんだろうか 得体の知れない虚しさ
2024年6月19日 21:58
薔薇が在る場所へ辿り着いていた 悪意に強い花を私は好きになっていた うつくしの夜を越えて私は辿り着いていた 海と空が出会う場所を求めて旅をしていたら 私が出会った早朝には薔薇が咲き乱れていた 病が理由で光差す場所を求めて彷徨った 月明かりの夜を海の中心に舟を浮かべて 何処かで連絡を取り合っている空と海を 夜を拠点にしてさすらい歩いた 君は強すぎたんだよ 憎しみでは歩けなくなり
2024年5月31日 18:08
寝ずの番をする 蝋燭を二本守る 剣を以て 通夜の主演になったようだ 皆が死者のために 日常の仕事を放棄した 気遣いを共有して 日頃のぎすぎすを 忘れたことにしてくれている 眠らずに死者を見ている 蝋燭の火を見つめる 剣先をかざして 通夜の主演になったようだ 皆が死者のために 日々の苛立ちを放棄した 気遣いでいっぱいになりながら いつものごわごわを 今だけはなか
2024年4月28日 12:16
私は詩人だから いつだって何かを嘯いていたい 少なくとも百円均一のセリアのお店で コーヒーフィルターとノートを買っている場合ではない 私から漂うものがそんな日常の香りと言葉ではいけない コーヒーもノートも詩作には必要だけれどね 私は詩人だから もっと嘘のような本当のことを呟いていたいんだ 私は詩人だから さも意味ありげな無意味なことを嘯いていたい 少なくとも無印良品で買った
2024年4月1日 18:45
悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。 宗教的な意味に於いて。 悪魔は神様を狂信しているひとが、 きっと嫌いなんだ。 悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。 文化的な意味に於いて。 悪魔は神様を知らないひとに嘘を言って、 からかって遊んでいるだけなんだ。 悪魔は神様を嫌いなわけではなさそう。 悪魔学的な意味に於いて。 悪魔は自分がやったことの取り返しがつかなくなると、 神様
2024年3月16日 19:38
うつくしいものが分からないことは、 怖いものが分からないことと同じくらいには、 恐ろしく危険なこと。 世界が終わる冬薔薇の時刻、 巨悪の心が零してしまったんだ。 もしも奇跡が消えた夜に。 喪われた青い星の軌跡の果てに消えてしまった。 そして忽ち崩れ去った。 悪は人間を嘲る場所に在るのに、 うつくしいものへの畏怖に慄える心は持っているらしい。 うつくしいものへの畏れがない者は
2024年3月8日 17:54
私は学校が嫌いだった 学校での出会い全てが 何一つとして誰一人として 私を助けてはくれなかったから 高校生で心を壊して身体を壊した私のことを 誰も気づいてはくれなかった 死にたいとこぼしたところで 教師は明るく笑ってる 仕事の方が好きだった 傲慢な教師みたいな大人は 一般的な社会にはいないからだと思った 自分より経験値がない人間を相手にしていることを忘れて 傲慢を働いてい
2024年2月10日 18:11
月夜の青に溺れていた 肌の肌理が乾いていた 私は船を漕いでいた ひとりの青い海の夜に 流された血を溶かしながら 傷を負った肌と肉体から この薔薇を守るために骨まで達した恐怖の傷に 心許ない手当てをして 清い於血が傷からしみるのを鎖すように隠しながら 心を神経そのもののように研ぎ澄ましていた まるで清い血で恐怖を飲み物とする神のように 眠りにきちんと癒やされることが約束されて
2024年1月29日 21:52
私を怖がる皆々 私を追い払い勝とうとする 恐ろしいものだと泣く 或いは汚いものだと嘘を言う なのにも拘わらず万策尽きると酷いことを言う 最も煌びやかで何よりも荊(あざ)やかな私に向かって 迎えに来い どうか苦しみ無いように 涙も息もなく言うのだ あなたはうつくしい 私に最早言葉はなく 私を貶す者の終わりに 彼らの終わりに通りがかったら 私は誰かの死を迎え送った後に そ
2024年1月27日 22:07
もしも世界から奇跡が消えたら、最初に何がしたいだろうか。 肌寒い夜の下で、私は妹の顔を見ていた。 私がそう尋ねると、妹は私の肩に肩を寄せた。 妹が、奇跡の類いを信じてはいないことを、私はよく知っていた。 私は漠然と杳(とお)くにいる尊い何かを信じている。この子はそんな私に寛容なだけで、何かを信じてはいなかった。 私は奇跡なんて、信じていない。 でも、奇跡は、世界からなくならない、きっ
2024年1月17日 16:13
自分の恋から、恋が分からない女。 恋ではなくて、異性が好きな女。 まともに狂ったことがない女。 何も盗られたことがない女。 本当に卑しい男から、声を掛けられたことがない女。 他の誰かを助けるために、手を差し伸べたことがない女。 いやらしい男から声を掛けられることに悦び、自分は常に手を取ってもらうべき女だと信じてる。 月の所為にして。月の所為にして。 一番にはならない女。 だけれ