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わたしの人生の話

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自分語り 得意じゃないけど 読みたい人がいるってわかったので。このカテゴリはノンフィクションです。
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母に伝えたかったこと

わたしの母は2年前に他界している。認知症になり、体が弱って、岩手の厳しい冬を越せずに死んだ。父が病の進行を隠し通し、施設に入所させた後はプロの手厚いサポートのもとで暮らすようになったため、わたしは母の壊れていった様子をよく知らない。ただ、父は文字と映像ですべての記録を残していたから、あとからどのようであったのかを知ることはできた。パンツを腕に通して着ようとしている画像があった。

「お前には夫婦2

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頭が詰まってしまう勉強

学生の時分、心の中で授業の内容を2つに分類していた。

ひとつは、見た瞬間だいたいわかるもの。現代文、古文、英語、一部の絵的パズルなど。
もうひとつは、学ぼうとしても頭の中が詰まってしまったようになって進まないもの。数学、化学、歴史年表など。なんとか学ぼうと教科書を見つめていると、文字がほどけて糸くずになって飛び立っていく。文字でなくなってしまうので、もう読めないし理解できない。

前者が多いとき

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別れから逃げ続けているわたしへ

「死に目にあう」「最後の別れをする」 という体験から逃げ続けている。体験しなければ、どこかで本当は生きているのではないか? と思える。知らないものはなかったことにできる気がする。

※特別暗い話ではありませんが、きわめて個人的な、狭い世界の話です。学びや気づきなどは得られないと思います。縁者が死去した時の描写が多く出てきます。熟考の上読み進めるかどうかを判断してください。

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Attack of the ZOLGEAR 〜わたしを鼓舞したオタク男〜

わたしは不良くそ大学生だった。そこそこいい大学に入って、適当な授業を適当に取り、手堅い安定志向の同級生たちに逆らって、昼から生協ビール祭りのビールを飲み、べろべろの状態で授業を受け、奇抜な服装で構内をうろつき、教員や公務員になるつもりもなく、大学院にいく気も起きず、さりとて就職活動もするわけでもなく親に嘘をついてゲームセンターに昼間から入り浸っていた。ナムコ系列のゲームセンターで、『ギャラクシアン

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RAYSTORM 〜ひと月の激闘、そして破門の物語〜

ゾルギアの話でゲームセンターから足が遠のいたと書いたが、実は就職後すぐにわたしはあの世界に戻ってしまった。社会人となって、自分が学歴だけのごみ(その地方にいる限り高学歴と判断される程度のものだが)だということがよくわかったので、それが悲しくて情けなくて物陰でしょっちゅう泣いた。

今までは笑顔を見せれば万事うまくいっていたけれど、怒声飛び交う荒くれ者だらけの建設業界でそれは通用しなかった。小さなミ

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イマジナリーセキュリティガーディアンオタク男

一人暮らしをしていた時に、戸締りを怠ると決まって夢枕に立って知らせてくれるオタク男がいた。ぽっちゃりとした黒縁メガネのやや小柄な男性。荷物は持たず、チェックのシャツとチノパン姿だ。ベルトはしていない。

「また鍵をかけ忘れたねぇ……開いてたから入ってきちゃったからね。ちゃんと鍵をかけないからこうなるんだよぉ……」

オタク男はいつも同じセリフを言う。枕元に立ち、笑顔でわたしを見下ろし、決して触れて

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クリームパンの妖精

よく幻覚を見る。理由は知らない。母も変わったエピソードが多かったし、曽祖父は野良仕事に出る時、天高く登る龍を見て3日寝込んだという。どこかおかしい家系なのだろう。

いちばん古い幻覚の記憶は小学校の校庭で、風に吹かれて転がるクリームパンの空袋を懸命に追いかける妖精を見たというものだ。羽が生えているのに走って追いかけていた。服は身に着けていなかった。どちらかというと、男性に近い体つきだったかもしれな

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ピロリ菌の除菌に2回失敗して腸内環境が破壊された

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とかいう菌がいる。胃液の中でも平気でぶくぶく生きているとんでもないやつだ。胃潰瘍や胃がんの原因になると言われ、ひと昔前あたりから除菌したほうがいい、せねば、絶対すべきという空気が強まった。わたしも同じようにピロリ菌の感染に不安を感じ、一度大きな胃潰瘍を患ったこともあって、これは除菌をせねばならないと思い立った。今思えば間違った判断だった。できればいない方がいいピロ

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「先生がオメガを倒したら宿題やってきてやるよ」と生徒が言ったので、わたしはゲームライターになった

(四半世紀前の思い出。間違い、勘違いがいくつかあります。修正しようと努力しましたが、次第につじつま合わせに必死になり、書き上げた時の情熱を自ら消してしまいかねないと気づきました。なので10年以上も迷って、やっとついに書き上げることができたままの文を残しておきます。)

大学生時代、塾講師のバイトをしていた。理由は金。岩手県で「現役東北大学生が勉強を教えます」とぶん回せば仕事がたくさん来た。家庭教師

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なくした記憶と頭痛スイッチ

ところどころ、記憶がない。とてもショックなことがあると、わたしの頭はその周辺の記憶を削ってしまう、らしい。らしい、というのは、特にそれについてなんとかしようとしたり、専門医に診てもらったりしたことはないからだ。別に記憶がなくてもわたしは困らない。

ある日記憶に穴があることに気づいた。その穴に近づくと頭痛がした。その時わたしが感じた気持ちは、「なんだこれ! マンガや小説に出てくるやつみたい!」だっ

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2020年のお盆に寄せて

帰省した。後期高齢者とはなったが、父は壮健だ。笑顔の父を見るとほっとする。我が家の菩提寺も訪れた。墓には祖父、祖母、叔父、従弟が眠っている。母の名はない。他界して3年経つが、刻まれていない。父が遺骨を手放さないからだ。

チロが死んだとき、母も3年間遺骨をそばに置いていた。我が家は愛するものとは、ぎりぎりまで別れを惜しむ性分ぞろいらしい。わたしもそうなるのだろうか。大切にそばに置かれて、母もいやな

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宇宙と一体化した母が夢に出てきた

母が亡くなった直後は、よく彼女の夢を見た。何度も抱き合い、許しあった。生前に果たせなかったわだかまりをほぐし、互いの心を癒した。生前、認知症が進んでいたころの夢では、決して目を合わせてくれなかった母。今は笑顔でこちらを見ていた。肉体の感触、母の匂い、現実と変わらなかった。五感の備わった夢を見ることができる自分の性質に感謝した。

いつも、ぬか喜びして偽物だ、もしくは作りものだと気づいて泣いて終わる

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わたしと、あるサイコパスの奇妙な友情(1)

そこそこ長い間、つき合っている友人がいる。少なくともわたしはあれを友人だと思っている。男性とも女性とも決めがたい人物なので、ここでは単に「あれ」と呼ぶ。こんな呼び方をされることを、あれはけっこう喜ぶタイプだ。

あれはほぼ間違いなく、サイコパスだと思う。良心というものが働かず、他人を自分の幸福のために利用し続ける者。残念ながら、利用する相手はどんどん変わる。同じ相手を長期間利用し続けられるほどの頭

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わたしと、あるサイコパスの奇妙な友情(2)

「帰っていいですよ」
なんでこんな答えをしたのか覚えていない。聞かされたときにはさすがに失礼すぎてびっくりした。当時のわたしはあれにまったく関心がなかったのだろう。もしくはトイレに行きたくなって、己の尊厳を守るため必死なあまり適当な返事をしてしまったのかもしれない。

とにかくこの「帰っていいですよ事件」(覚えていない)がきっかけで、わたしはあれに強い印象を残した。あれはその後、「尊敬しています」

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