宇宙と一体化した母が夢に出てきた

母が亡くなった直後は、よく彼女の夢を見た。何度も抱き合い、許しあった。生前に果たせなかったわだかまりをほぐし、互いの心を癒した。生前、認知症が進んでいたころの夢では、決して目を合わせてくれなかった母。今は笑顔でこちらを見ていた。肉体の感触、母の匂い、現実と変わらなかった。五感の備わった夢を見ることができる自分の性質に感謝した。

いつも、ぬか喜びして偽物だ、もしくは作りものだと気づいて泣いて終わるチロも、母と一緒に夢に出てくる時は本物だった。ようやく本物として姿を見せてくれたチロは、いつも母と一緒にちょっとだけわたしに会いに来るのだった。
(※チロはわたしが12歳の時にうちに来た柴犬とスピッツの雑種だ。ずっと共に育った。2000年に脳出血で苦しみ始めたので安楽死させた。17歳10ヶ月だった この話こちらで書きなおそうかな)

だんだん母の夢を見る間隔が開くようになり、感触も薄らいで行った。触れ合う夢から、言葉を交わすだけの夢に。笑顔の夢から、遠ざかっていくのを見守るだけの夢に。彼女が離れているのか、わたしの思いが薄らいでいるのかはわからないけれど、目覚めて母を思い返す頻度はかなり減ってしまった。

そんな中、先日久しぶりに母の夢を見た。今までの切なくも暖かい、感傷と赦しに満ちたものではなかった。まるで宇宙猫だった。フリー素材めいた妙に明るく輝く安っぽい宇宙を背に、真っ青な光を放つ瞳の母がずいっとわたしの前に現れたのだ。

「いっしょに行く? お母さんみたいになる?」

母は言葉ではない方法でそう語り掛けてきた。背後で安い宇宙がぐるぐる回っている。これにイエスと答えれば、わたしは輝く青い瞳の持ち主となり、母と共にここではない世界に行くことが分かっていた。現世のすべてを投げ捨てて。

「いやぁ、行かない。洗濯たまってるし食器も洗ってない」

母は無言無表情でこっちを見ていた。

「それにどうせなら緑色の目がいいわ」

ここでぶつりと、電源が落とされるように夢が終わり、わたしは目覚めた。
どういうリアクションをしていいのか、理解に苦しむ夢だった。今回のあれは母だったのだろうか。母に似た、なにか安い宇宙のものなのだろうか。

わざわざお断りをしてしまうほど、自分が緑の瞳の方を好んでいるとは知らなかった。ばかばかしい夢だったが、割と楽しかった。

ただ、宇宙母には愛想をつかされてしまった気がする。もう会えないかな。いっしょには行けないけれど、また会いたい。

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