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徒然なる相想草【詩・小エッセイ】

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ルリニコクみみみの詩・小エッセイをまとめました♪
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#エッセイ

幸福な世界

幸福な世界

わたしを取り巻く土壁の
中で開かれた大宴会

ああ貴方はここで大きく腰を振って
過去をなかったことにする

本当は、わたしが受精するはずだった
ドス黒い貴方の松脂を
生肉の目立つ赤子同士が奪い合う

イニシアティブを取り合いながら
尊大な母性を見せ合って
尊大な惰性を身につけていく

赤子たちは黒い子羊を産んで
その肉をわたしと貴方は
美味そうに骨まで喰らう

きっと貴方のスキーム通り
美しくて幸

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【小エッセイ】決意

【小エッセイ】決意

幾度となく繰り返した
当たり前の日常を
麻痺しながら繰り返した
嘘の安寧を

手汗を握り、破壊する

白紙にもどるこの時こそ
渦が螺旋へと
昇華する瞬間

くだらない大人の
格好だけのスライドは
自由なキャンバスに変わる

ここからまた始まり
呼吸はきっと続いていく

/ルリニコクみみみ

【小エッセイ】散歩

【小エッセイ】散歩

湿った空気。なんだか渋い香り。
夏の終わり。木陰が続く黒い道。
知らない道。

左の汚い用水路。右の緑。
足元に転がる蜂や蝉の亡骸。

空になった入れ物。燃える私の肉体。
汗にまとわりつく羽虫。

すべてが集約される。
気持ちが悪い。

/ルリニコクみみみ

【小エッセイ】やるやらぬ

【小エッセイ】やるやらぬ

やるもやらぬも私の自由。
やれば矛盾に狂う日々。
やらねば嘘なく普通でいられる。

醒めぬも醒めるも私の自由。
醒めねば苦痛に狂う日々。
醒めれば少しは役に立つ。

やらぬ醒めるを他人が望むが
きっと私は地獄行き。

/ルリニコクみみみ

【小エッセイ】まいはーと

【小エッセイ】まいはーと

私に私の心がなければ
お金は図太く増えるだろう。

私に私の心がなければ
関わる誰かは笑むだろう。

私に私の心がなければ
社会の役にも立つだろう。

私に私の心がなければ
我が家の塵も減るだろう。

それでも季節を楽しめる。
愛しいものを愛しく思える。

私の心のおかげだろう。

/ルリニコクみみみ

屑を綴る

屑を綴る

綺麗な言葉など紡げません。

私という人間は校庭の隅に転がっている
汚い植木鉢の破片のような存在ですから。
それはそれは刃のような鋭利さで
触るものを傷つけますから。

それでも私の書くものを詩や詞として
目を少しだけ輝かせて読んでくれる人がいます。
刺さると言ってくださる方々がいます。

詩とはなんでしょう。
言葉とはなんでしょう。
自転車であり薬であり。
空気でもあり屑でもあり。

ええ、屑か

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私の秋のお話など

私の秋のお話など

私の秋のお話など
誰が聞きたいとお思いでしょう。
それでも
ほんの少しだけ話しておきたいのです。

強き女性がおりました。
私は彼女を傷つけたいと、そう思いました。

どうしてそう思ったか。
いまでもはっきりとはわかりません。
きっと大切だったのでしょう。
それでいて
普通への憧れだったのかも知れません。

小学二年で首吊りの遊びを
していたような男ですから
私の考えることは今ひとつ
よくわかりま

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新津の匂い

新津の匂い

たまに頭蓋の奥から匂いが染み出てまいります。
これはこれは。懐かしゅうございます。
言葉にすれば、灯油の燃える香り。
映像にすれば…誰にも伝わりますまい。

あれは新潟。新津。いまは秋葉区。
毎年毎年お正月にあつまったもので、
子供の頃の雪は、あの家でございました。
きんと冷えた黒い廊下を進むと、
奥から祖母がとんとんと料理をする音が聞こえます。
右にある重めの茶色い扉を開ければ、
祖父があぐらを

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