法の下に生きる人間〈第81日〉

本シリーズが昨年6月にスタートして、とうとう残すところ20回となった。

これまでさまざまな法律を取り上げてきたが、そろそろ、私たちの生活に一番身近な「民法」について触れるとしよう。

人生100年時代といっても、80才を超えて長生きできる人は、まだまだ少ないだろう。

谷村新司など、まだ70代なのに亡くなってしまう有名人も多い。

そうすると、私たち自身も70才を過ぎると、そろそろお迎えの準備が来たかもしれないと覚悟する必要があるだろう。

もっとも、若い人たちはそんな心配などまだ先の話だと思うが、自分の親が高齢になってきたら、相続や遺言には関心を持っていたほうがよい。

さて、民法は、全部で1050条から成る、ものすごくボリューミーな法律であるが、最後のほうに相続や遺言についての定めがある。

特に、遺言に関しては、第960条から第1027条まであり、さまざまなケースに応じた定めがある。

今日は、自分がもし死を間近に意識したとき、遺言についてどうしたらよいか、さらっと総則の中の3つの条文をみてみよう。

(遺言の方式) 
【第九百六十条】
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。 

(遺言能力) 
【第九百六十一条】
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

【第九百六十三条】
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

以上である。

遺言は、①民法に定められている方式に従う必要があること、②15才に達した者は遺言ができること、③遺言をするときに、遺言できる能力がないといけないことという、法律の縛りを受けたものである。

③はもっともなことだと思うが、①②については初めて知ったという人もいるだろう。

つまり、中学2年生までは遺言ができないことになる。

これは、今の時代に合っているのかという疑問も生じるかもしれないが、実は、この961条の次に、962条でこんな但し書きが付されている。

【第九百六十二条】
第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

民法の5・9・13・17条の規定があっても、遺言の場合は適用しないと言っているのである。

これは、未成年者や成年被後見人、被保佐人に関する規定であり、例えば第5条は未成年者について次のような定めがある。

【第五条】
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

つまり、本来、遺言は法律行為なのだが、例外として15才以上は認めますよということなのである。

続きは、明日である。



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