法の下に生きる人間〈第71日〉

2024年は、2020年以来のオリンピックイヤーである。

コロナ禍で東京オリンピックが1年延期されたから、今年の7月にはパリオリンピックが開催されるというニュースを聞くと「もう、次のオリンピック?」と月日が経つ速さに驚く。

さて、日本のアスリートが世界各国の選手とオリンピックで対等にわたりあえる種目が、今年もどれくらい見られるのかは楽しみにしておくとして、長らく日本が世界に後れをとっていた法整備が、昨年6月にようやく実現した。

それが、「ゲノム医療法」(=良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律)である。

ゲノムというのは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、DNAのすべての情報のことを意味する。

高校の生物の授業を受けたことがある人なら、少しは知識があると思う。

この遺伝子に関係することで世界的に大きな話題になったのが、今から20年以上も前のことである2000年6月の「ヒトゲノム」の解読完了宣言である。

この宣言をしたのは、当時のアメリカのクリントン大統領である。

1990年から10年かけて、アメリカ・イギリス・日本・フランス・ドイツ、途中から中国も加わって解読が進められたのである。この国際的なプロジェクトによって、ヒトゲノムの解読が「ほぼ」終わったと宣言したのだが、「ほぼ」なので完全解読はできていなかった。

その3年後に、研究者の間では「完全解読」したと改めて宣言がなされたが、実際のところは8%の未解読部分が残っていた。当時の技術では難しかったのだが、やっと2年前に完全解読できたとのニュースがあった。

しかし、2000年の時点で9割方のヒトゲノム解読が完了していたことは事実であり、さっそく欧米諸国は遺伝子治療の臨床応用を積極的に進めていった。

日本でも、近年はいろいろと取り組みが進められており、がん遺伝子パネル検査が令和元年6月から健康保険の適用対象となった。それでも、「周回遅れ」だと指摘する研究者はいる。

遺伝子治療が画期的なものであることは確かであるが、日本においては、倫理上の問題もあって、導入に慎重な意見も少なからずある。

例えば、生殖に関わることで、生殖細胞に対する遺伝子編集は法的に認められていない。

もし遺伝子検査によって、産まれてくる子に障害があることが分かったとき、遺伝子編集をして障害のない子が産めるようにすることは倫理上認められてよいのかということである。

あなたなら、父親として母親として、どうするだろうか。

今週は、生命と障害をテーマに、私たちの未来を考えていくとしよう。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?