20世紀の歴史と文学(1928年)

1928年は、昭和3年であるが、この年になってやっと昭和天皇の即位の礼が執り行われた。

11月10日、昭和天皇は京都御所に赴き、即位の礼の勅語を次のとおり述べた。

分かりやすく現代語訳されたものが公表されているので、そちらを紹介しよう。

我は思う。我が皇室の先祖は神聖で偉大な道に従い、天皇として世を治め、いつの時代も変わることのない国の礎を創始し、永きにわたりただ一つゆらぐことのない天皇の位を受け継いできた結果、ついにそれを我が継ぐこととなった。我は先祖の威厳ある霊に信頼と敬意を抱いて偉大な務めを受け、謹んで神器をいただくとともに即位の礼を行い、みなの衆に告げる。
皇室の先祖が国を築き民に臨む際は、国を家とみなし、民を子のようにとらえた。歴代の聖帝はその姿勢を受け継ぎ、思いやりを民にあまねく施し、無数の民は進んで帝に敬意と忠誠を捧げ、上と下とが深く心を通い合わせ、君と民とが一体となる。これこそ我が国体の理想であり、天地の間に在るべき人間社会の姿である。
先々代の明治天皇は、歴史の大局に立って壮大な維新を始め、国内外に明示して将来を見据えた立憲政体を築き、文武両道によって歴史的偉業を成し遂げた。先代の大正天皇はその広大な計画を継承し、業績を拡大して帝の仁徳を天下に知らしめた。我は若輩ではあるが謹んで先代の遺志を継ぎ、祖先の擁護と無数の民の支えに頼ることによって天職を務め、道を踏み外したり誤ったりすることのないことを願う。
我は、国内については国民道徳の指導を手厚くし、民の心の調和をいっそう追求し、ますます国の勢いが強大になることを念じる。国外については国交を親善にし、永く世界の平和を保ち、あまねく人類の幸福を増すことを願う。みなの衆はいざ、心を一つに力を合わせ、自己を忘れ公に尽くすことによって、我が志に助力し、我に祖先が描いた栄光を実現させ、そして天から見守る祖先の霊に応えさせてくれ。

以上である。

これを、現天皇陛下の即位の礼のおことばと比較しよう。

現天皇陛下の場合は、令和元年10月22日、5月1日の即位の日から5ヶ月後に、即位の礼が執り行われた。

次のとおりである。

さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。 
ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。 
上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。 
国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

以上である。

いかがだろうか。

昭和天皇も、「国外については国交を親善にし、永く世界の平和を保ち、あまねく人類の幸福を増すことを願う。」とのたまっている。

しかし、この3年後に、陸軍は満州事変を起こし、戦争に突き進んで行くのである。

続きは明日である。

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