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コンクールに出るからにはいい演奏をしたい!を考えてみる

「コンクールに出るからにはいい演奏をしたい!」

夏のあいだ、こんな言葉をあちらこちらで耳にします。

ここでいうコンクールとは、全日本吹奏楽連盟が主催する吹奏楽コンクールと、その予選会のことです。吹奏楽の甲子園ともいわれる夏の一大イベントには国内の吹奏楽部や社会人バンドの多くが挑戦します。日本を世界でも有数のアマチュア吹奏楽のメッカに押し上げた要因のひとつです。

エントリーしたチームには、演奏の評価によって金、銀、銅のいずれかの賞が与えられます。上位の成績を納めた学校や市民バンドは地区大会から県、支部、そして全国大会へと推薦されます。

そんな舞台に挑むにあたって、演奏者や指導者は「一音入魂!」や「感動させる音楽を!」などのフレーズとともに、あたりまえのように先の「コンクールに出るからには」を口にするのです。

私もかつてはそれがこういう大会に参加するときの、当然の心構えだと考えていました。

ところが、四年間のオランダ留学を経てその考え方が少し変わってきました。

ひとつ目は、コンクールじゃなくてもいい演奏していいよね? ということです。

一年を通して演奏する機会は数多くあります。楽団が主催する公演のほか、地域の行事にもよく参加します。部活の場合は学校の文化祭でのミニコンサートや式典での奏楽もあるでしょう。

大会で審査されるのは、作品を理解した上でそれを表現するための十分な技術を使えているかどうかという点ですが、実は私たちは普段からもこれに向き合って練習しています。

どのような場面でも私たちは何かが伝わる演奏を目指し、作品の魅力が聴く人の心に届くためにいつでも技術を磨いています。だから、「いい演奏だったよね!」と喜び合える場面がたくさんあるはずです。

その上で、大会での評価を「その楽団の結果」ではなく、むしろ次の1年へのキックオフにすることができます。審査員が書いてくれる講評はダメ出しではなく「もっとよくなるヒント」です。

ですから、コンクールじゃなくてもいい演奏をどんどんしていいのです。

それでも私たちは「大会に出るからには」と特別扱いしてしまいます。

どうしてなんだろう。

そう考えているときにハッと思い出したのは、「演奏の主体は自分たちであること」に徹底しているオランダのアマチュア演奏家の姿勢でした。

私は留学中に現地の複数の市民吹奏楽団を訪ねリハーサルを見学しました。世界コンクールで優勝する100人規模のバンドから、設立したばかりの小人数の楽団までスタイルもレベルもさまざまでした。さらに、エキストラとして吹奏楽団や市民オーケストラでオランダ人に混じって演奏する機会もたくさんありました。

全てのチームに共通していたのは、演奏の評価を他人に丸投げしない姿勢でした。自分たちがいいと思ったらそれでいいのです。その逆もありです。外から受けた評価はあくまで参考にする程度にし、しかも前向きに捉えていました。

他社比ではない「自分比」の成長を自分たちが全力で喜ぶようすが今でも強烈に印象にのこっています。これが日本でもコンクールを楽しむことに役立つのではないかと考えました。

なぜなら、吹奏楽コンクールでは出演者が賞の結果をコントロールすることはできないからです。

ですが、たとえ金賞を取れなくても成長はゼロではないはずです。それを互いに認め合い、いたわり合い、励まし合うことが楽団の次のいい演奏の土台になっていくような気がします。

そんなふうに考えると、「コンクールに出るからには」と自分の音楽を奏でたい心に特別な縛りをかけなくてもいいのではないかと思えるようになってきました。




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