「うちの弟と結婚しなよ」ハラスメント
先日の急なカミングアウトだけど、意外なところから反応があった一方で、思いの外身近な人からは反応が少なかった。後者に関しては、未知すぎてどう言えばいいかわかんないんだろうな。とお察している。もしくは「やはりそうか」っていう来るべき時が来た感なのかな。
なんでそんなことをいきなり言い出したかというと、会社で「今度なんか言われたら、これを切り出してやる!」と思うことがあったから。
Kemioの耳そうじクラブ
一旦話は逸れるんだけど、その日の朝、私はKemioのPodcastを聞いて会社に向かった。お笑い芸人のガンバレルーヤがゲストだった。
よしこさんが、「私ね、前映画に出たの。絶世のブスの役なんだけど〜」と続けてて「うわ。コンセプトが古い映画だな」と思った。私がそう思い終わらないうちに、Kemioが「ゆるせなーい!!よしこさんこんなにいい人なのに!!!」って、甲高い声で叫んでた。よしこさんは「やめて笑 #Metoo しないでー!笑ってくれた方がありがたいの」と言っていた。彼女にとっては、そういう風に言われることは初めてじゃないかもしれないし、それで仕事をゲットできたから苦じゃないのかもしれない。でもやっぱりテレビや映画とかで「ブス」とか平気で言ってもよくて、それがエンターテイメントになるってのはもう時代遅れだよなと思う。本人がその瞬間は嫌だと思ってなかったらいいのだろうか?合意が取れたとみなされるのか?制作側の「表現の自由」なのか?
「それは違うよ、よしこさん」そう思った。
誰もブスとか名指して言われていい訳がない。あなたは怒っていい。
最終的には「でもケミオちゃんありがとう。あなた親友の怒り方だったわよ。」って言ってた。(この3人の会話、最高に可愛いから、暇があったらぜひ聞いてほしい。特に#3)Kemio ってばか騒ぎしてても、ちゃんとこういう感度もあって良識があるから下品に見えないし、本当にいい人なんだろうなと思う。(誰だよ感が半端ないけど)
結婚ハラスメント
話を戻そう。
30歳も近くなって、周りも結婚したり家族が増えたりしている中、私は昨年知り合いのほぼいないロンドンにやってきた。家族や社会(どちらかと言えば社会の方かな)からの「まだ結婚しないの?」「いい人いないの?」「遅れをとっている売れ残り」っていうプレッシャーとは縁のない生活を送るんだと思ってた。そういうのって「日本的なハラスメント」だと思ってた。
私はもう、そういうレースやレールからは離脱している。
そう思ってた。
もし私が日本人の少ない環境で暮らしていたら、ちょっとは違ったかもしれない。でも日本人との関わりが多いからか、「結婚ハラスメント」(本来の名称はわかんないけど、ここではそう呼ぶことにする)は、ロンドン西部にも存在している。しかもちょっと形を変えて、ちゃんとロンドンに適応した状態で。
元ネタさえあれば、変形できるし、どこでも対応できる。万能じゃん。
IPS細胞かよ。
むしゃくしゃした帰り道にそう思った。
(医学のことは全くもって知らないけど、我ながらいい例えだと思う笑)
会社への貢献からの結婚のご提案
ロックダウンの最中でも、私は普通に通勤している。こんなことを言うのはおこがましいけど、(家から徒歩で通えるとか、子どもの面倒を見る必要がないとか)制限なく会社に来れるのが私でよかったと思う。そう思えるほどには、この期間貢献したと思ってる。
お世辞もあるけど、上司に「ビザが切れた後も会社に残ってくれたらいいのにー」といつか言われた。それは純粋に嬉しかった。もともと私の契約は今年の6月で切れる予定だったけど、コロナとか他の人のマタニティとかもあり、来年の3月まで延長された。それが正式に発表される前の発言だったから、尚更嬉しかった。
これがただの「いつも頑張ってくれてありがとう」的なノリで終わればよかった。でも、なんか現実的なことを考えたのかな、ビザのことが頭をよぎったのかもしれない。私がここにずっと残れるには、今の会社がビザサポートをしてくれるか、私が結婚をしてビザを切り替えるかしか選択肢はない。うろ覚えだけど、たしか100万くらい?かかるらしいので、会社としてはこの期間に誰か見つけてくれたらラッキー☆ってとこだろう。
この上司には、同じ会社で働いている弟がいる。彼は私より1つか2つ年下で同年代。
「うちの弟と結婚すればいいじゃん」いきなりその女性の上司が言ってきた。咄嗟のことで、「アハハー大丈夫でーす」って笑って流すしかできなかった。私はこの女性の上司のことがとても好きなので、その発言は、自分の働きぶりを認めてもらって、人間として気に入ってくれている気がして嬉しかった。ちょっとパンチが強いけど、そういう愛情表現だと受け止めた。
しばらく経って、また何かの折に、冗談で「うちの弟と結婚したら〜」というくだりがやってきた。「ちょっとお義姉さんたちの圧に耐えられないので無理です笑」と言っておいた。(そう、家族経営の会社で、お姉さんは2人もいる)
この2ヶ月ほど、このくだりがちょくちょくやってきてた。弟が満更でもない感じなのもよくわかんない。まあ、でもいつか飽きるだろうから、適当に流しておこう。
でもこの構図、色々がおかしい。
ビザが切れたら日本に「帰らなきゃいけない」という認識。
→私は今のところ帰りたいと思ってる。
弟もフリーだし、年近いし、家族はあなたのこと気に入ってるし、ビザも更新できるし、だったら結婚したらいいじゃん!
→100%ヘテロセクシャルを自認していたとしても、だからと言ってその弟を彼氏や夫にできるかはわかんない。それに、自分はアセクシャルかもしれないとも思っている。
1年しかこの会社にいないと思ってたから、あまりパーソナルなことは話してない。(それは若い頃に言いふらして失敗したというトラウマがあるから)彼氏の話になっても「探してますぅ」みたいに適当に流してた。付き合ったこともないし、そもそも私が人を好きにならない部類かもしれないとか、まだ会社では誰も知らない。
あとは実際問題、私はクリエイティブの仕事をしている訳でもないし、エンジニアやマネージャーでもないし。だからポジション的にも企業がお金を出してビザを出すことはほぼないから、イギリスに残りたいとなったら、永住権を持っている人と籍を入れるしかない。でも、フェミニスト的観点からすると、やっぱり「相手に頼らないと生きていけない」みたいなことを、わざわざ他人から言われているみたいで、あまり気持ちのいいものではない。
何度も笑って受け流していたけど、本心はこれ。
おたくの坊やと結婚させられるくらいなら、大人しく実家に帰らせてください
(missA 懐かしい I don't need a man)
(久しぶりに聴いた Baek A Yeon Soso)
Everybody is talking about VISA
ビザビザうるせえ
今私はYMSビザという、いわゆる2年間のワーホリビザ でロンドンに住んでいるから、来年の3月にビザが失効したら帰国することになっている。
ワーホリビザ は、学校に通ってもいいし働いてもいいし何もしなくてもいい、っていうとてもフレキシブルなビザ。とりあえず経験というか、人生の夏休み的な感じで海外に行くケセラセラタイプと、ワーホリは入国のきっかけであって、その後絶対居住権を取得したい!っていう虎視眈々タイプがいる。私は前者で、またロンドンで生活したいなと思ってやって来た。
会社に同年代の日本人女性が数人いるんだけど、彼女たちのビザ事情もばらばらだ。もとからパートナービザで入国した人、パートナービザに切り替える目的で最初はワーホリできた人、ワーホリ中にたまたま今の夫と出会いパートナービザに切り替えた人。でも共通していることは、みんな結婚していること。というか、日系を含め、ロンドンにあるほとんどの会社は、永住権のない日本人(非EU出身者)に対して、なかなか就労ビザを出してくれない。だから会社勤めの人は、結婚している人が自然と多くなる。
なんでかわかんないけど、在英日本人(特に20−30代)の自己紹介の時は、なぜかビザのステータスも公表するスタイルだ。この日は、私以外の上記の人たちが初めましての日でもあったので、visa experience のシェアタイムがあった。悪気がないのはわかってるし(そして悪気がないことの方がタチが悪いと思っている)、それは当然の流れでもあった。お義姉さま2よりひとこと。「るいさんも結婚したらいいじゃん。弟と。」
「もーまたそのくだり!笑」私はいつものようにヘラヘラして返した。
「でも気をつけないとハラスメントになりかねないですよ」1人が言った。たぶん私を守ってくれようとして言ってくれたのではなくて、世間話的なノリだった。
それではっとした。彼女の発言で気付かされた。
そうかこれはハラスメントなのか。
今の私の状況は、今朝のガンバレルーヤのよしこさんと似ている。
有名人に対して「ブス」とか言うことも、結婚ハラスメントも、物事の是非は置いておいて、今はまだ社会的慣習の一部であるから大罪ではない(というと大袈裟だけど。)こういうのって当事者では流れを止められないんだなと感じた。なぜなら、こちらもこのくだりは慣れちゃってるもんで。。。他力本願ではあるけど、誰か第3者が「ちょいと待ちなされ」って問題提議してくれないと、なかなか歯止めが効かないのかもしれない。
Kemioと同僚がいてくれてよかった。
「るい、違ったんだよ」帰り道にそう思った。
ヘラヘラしてちゃ、他の人はわかんない。あなたは我慢しなくていい。
だって別に弟のこと好きじゃない。
VISAとか横文字が出てきたから紛らわされちゃったけど、これはれっきとした結婚ハラスメントだ。他の人が、私の人生に関してとやかく言う権利はないし、2年間のうちに結婚する相手を見つけられなかったことが「負け」とか「努力不足」みたいに見なされるのもおかしな話だ。
それで決心した。
いつかカミングアウトしてやろう。
(多分大丈夫だけど、このnote本人たちに見つからないといいな。自分で着火して爆弾落としたいから)
追記
次言われたら、「ちょっとそれ辞めてもらっていいですか?」って言ってやる!!!と決心した日から、ぱたっと求婚ノリがなくなって、「え!いつもここで弟の話になるやん!求婚してよ!!」ってなる顚末でした。結局着火できなかった笑
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