神戸異人館模様～最後のオランダ坂～

一歩、踏み出すと膝が鳴る
キュッキュ、キュッキュと膝が鳴く
“膝が痛くて正座が出来なくなったよ”
同級生からの年賀状には淋しい言葉が羅列する
新しい春が来る
またひとつ歳をとる
それでも、歩き続ける
キュッ キュッ キュッ
膝の歌声を聴きながら

膝の歌を聴け ―Hear My Knees Sing― by RUCOCO

上記のようなわけで、今回は「うろこの家」を絶対に見ようと決めていた。
北野異人館の中で一番高台に建つ洋館。
若い頃ならいざ知らず、急勾配の坂がきつくて、たどり着くまでがとにかく大変。
次に神戸に来た時には上れなくなるかもしれない。
少しばかりやるせない気持ちで私はオランダ坂を上った。

触られすぎて、お鼻がピカピカ

異人館街のラッキーアイテムのひとつ、イノシシちゃんのお鼻を初めて撫でたのは、いつのことだったろう。
これが最後と思うと心から愛おしい。

中に一歩入れば、別世界。
かつてこの邸宅で暮らした人々の吐息が今も漂っているよう。

ステンドグラスが素晴らしい

ゴーチャスな食卓

この邸宅で過ごす日々は、一日、一日が煌めくような時間だったのに違いない。

埋め立てが進んで、海は遠くなった

館を出て、併設の展望ギャラリーへ。昔なら広い海が見渡せた窓から、しみじみと神戸の街を眺める。
数十年前の記憶が甦る。ああ、ここで私、人生の岐路に立ったんだ。悩み事、全部この景色の中に置いてきたんだ。

この後、青空が広がった

最後に、素晴らしい邸宅を見上げ、心の中で呟く。
「ありがとう。そして、さようなら」

込み上げるてくる熱い想いを胸に抱き、うろこの家を後にする。

すると、私よりずっとお歳を召した婆様たちが、元気に坂を上ってくるではないか。

もしかして、私、まだまだいけるんじゃないの？
なんだ坂こんな坂、上れるんじゃないの？
うろこの家、また見れるんじゃないの？

先程までのせつない気持ちはふっとんで、私は意気揚々と次の異人館に向かったのでした。

※冒頭の変な詩は、単なる私の独り言です。

また、来るね(^^)