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【short short】空から降るにびいろ


空から何かが降ってきた 右肩に左肩にかしゃんかしゃんと音を立てて降ってくる まるで銀色のイヤリングが落ちてきて当たっているみたいだ
見上げても空はただ一面青いだけ 高いところで薄い雲がすごいスピードで流れていく
秋だからかな なんの理由にもならないけれどそう思った

歩き出すとまたすぐ降ってくる
さっきよりも量が多いし、ついには頭のてっぺんに落ちてきた
手で触ってみるけど頭の上にはなにもない 
体に当たったらすぐ消えるみたいだ
地面に落ちる音はしないから 私の上だけに降っている模様

後ろから小学生が追い越していった 彼女の上にも私とは少し違うものが降っていた でも気づいてないみたい 
良いだろう 彼女はとても元気そうだ

前からサラリーマン風の男の人が歩いてきた
彼にも  あ、降ってる 
彼には強烈な矢印が降り注いでいた
気づいているのか 気づいてないのか 
気づいているけど気づかぬふりをしているのか
私には彼の心が読み取れなかった
すれ違いざま 彼は私を見ていた
いや、正確には彼は目の前の一点を凝視したままだったが 彼の意識の視界には私がいるみたいだった
よかった 私は一人じゃない


しばらく歩いてふいに悟った
この世界なんてこんなものかもしれない
合ったようで 合っていなくて
逢ってないようで 逢っている

まあいいか


ー終ー


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