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【読書ノート】『桃子』(『つめたい夜に』より)

『桃子』(『つめたい夜に』より)
江國香織著


大人向けの絵本にもなった作品。
7歳の孤児の桃子と19歳の青年僧天隆が、互いに惹かれ合い、不思議な運命を辿るという物語。

桃子は交通事故で、両親を失って、一時的に山寺に預けられる。そこで青年僧の天隆と出逢う。

桃子が無口で笑わないことが多かったのに、天隆との出会いによって彼女は積極的に笑顔を見せるようになる。彼らの関係は時間の経過とともに深まっていく。

キーワードを挙げてみる。
①青い花
1. 平和と安らぎ: 青い花は穏やかで静謐な雰囲気を表現し、内面の平和や心の安定を象徴する。

2. 成長と変化: 青い花は花が成長する過程で見られる色であり、新たな生命や成長、変化を象徴する。

3. 純粋さと清潔さ: 青い花は清澄な色合いを持ち、純粋さや清潔さを表現する。

4. 知性と精神的な成熟: 青い花は知性や精神的な成熟を象徴する。青は深い思考や洞察力を関連付けられる色であり、花が青い色を持つことで知識や叡智の象徴ともされる。物語の中では、天隆の頭に花が咲くことで、彼の内面にも変化や成長が生じていることを表していると解釈することができる。

②白い小鳥  
純粋さ、善良さ、幸運、自由などの象徴としても解釈される。
この物語では、桃子がくちばしの赤い、きゃしゃな白い小鳥に変身し、飛び去ってしまう。この変身は、個人の内面の変化や成長を象徴している。桃子が小鳥に変身することで、彼女の自己の一部が解放され、新たな可能性や自由を手に入れることができたのかもしれない。

白い小鳥が天隆の頭に住み着くことで、二人の間には特別な絆や共感が生まれたのかもしれない。また、白い小鳥が戻ってきたことで、変化や成長があった後の再会や復活を象徴している。

12歳の歳の差を埋めるものは何なのか?

* 桃子は両親を失って孤独で不安な心境だったが、天隆は彼女に優しく接し、楽しい時間を過ごさせてくれた。桃子は天隆に安心感と愛情を感じたと考えられる。
* 天隆は修行僧として厳しい生活を送っていたが、桃子は彼に自由で無邪気な世界を見せてくれた。天隆は桃子に新鮮さと刺激を感じた。
* ふたりは年齢や立場が違っていて、周囲から反対される関係だったが、それが、かえってふたりの絆を強めた。ふたりはお互いに唯一の理解者となった。

以上のように、桃子と天隆はお互いに欠けているものを補い合うことで、恋に落ちたと言うのだろう。

物語の主題は何か?
年齢差や19歳と7歳ということを思うと、恋愛になるとは思えないのだけど、特殊な困難な状況に置かれた二人の場合、心の拠り所になるということなのだろうと思った。

文章がきれいで、そのまま、読めてしまうのだけどね。

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