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『アイスクリーム熱』(『愛の夢とか』より)

『アイスクリーム熱』(『愛の夢とか』より)

川上未映子著


一言で言うと、(それだけで、終わってしまう物語なのだけど、)

アイスクリーム店員の<私>は、毎回イタリアンミルクとペパーミントスプラッシュを買う<彼>に恋をした。<私>は一緒に歩くのを提案して、何となく、彼の部屋で、アイスクリームを作ることになった。アイスクリームは、失敗した。それ以降<彼>は店に来なくなって、2か月後、店は閉店した。完

勝手に、物語の中のキーワードについて、いろいろ解釈してみる。

①"アイスクリーム"≒"冷たいこと"+"甘いこと"

冷たさは無情さや遠ざかりを、甘さは喜びや愛を象徴する。「彼」のことを象徴しているのかなあと思った。

②"「彼」は、二日おきにアイスクリームを規則正しく買う"

ルーチンや習慣の象徴。日常の中に安定性を求めるタイプの人間。なので、保守的なのかもしれない。

③「彼」が、必ず注文するアイスクリーム
「イタリアンミルク」の意味するところ:豊かさ、滑らかさ、甘さ、またはイタリアの文化や風味を象徴する。

「ペパーミントスプラッシュ」の意味するところ:清涼感、爽快感、または新鮮さを象徴する。

④月桂樹(グリーン)
知識や学問を象徴する。生命とその持続性、成長と変化、さらには新たな可能性や再生を示す。

⑤「さようならと声に出していってみると、それは自分の声じゃないように聞こえた」

「私」が変化や成長を経験し、その結果、自己認識や自己理解が変わったことを象徴している。また、過去との別れや新たな始まりを示す。

ここから、見えてくることは、

安定思考の博識な「彼」に、「私」という、感覚的に生きている人間が、恋してしまった。「彼」も、「私」に、対して、「カップ」のような暖かさや安定性を期待したのたのだけど、「私」との性質の違いを知って、離れてしまった。

アイスクリームと恋愛は共に享楽的な体験ではあり、両者とも一時的な喜びをもたらす一方で、終わりや失うことによる苦しみも含んでいる。

「彼」は、アイスクリームを必ずカップに入れるのだけど、カップとアイスクリームは、溶け合わない。

熱い恋心は、「アイスクリーム」を解かして、消してしまった。

「彼」が、現れなくなり、恋愛的な状況が、終わると、アイスクリーム店も一緒に無くなってしまった。

すべて、なくなって、リセットされて、「私」は、新たな恋に向かっていくのだという話。

自分のパートナーを探すのが、恋愛でもあるなのだから、大事なことではある。一生の間に出会える人の数なんで、普通、多く見積もっても数万人なので、世界の人口が、80億人だとすると、出逢うということだけで何らかの縁は、あるのだと思う。それでも、生涯のパートナーとの出逢いなんて、そんなには、ない。試行錯誤しながら、自分のパートナーを探すというのが、ある意味、自分の人生のスタートでもあるからね。
既婚者からすると、出逢いなんて必ずあるものだとか思ってしまうのだけど、独身の時は、自分にだけは、良い出逢いは一生来ないかもしれないとか、思ったりしていたことを思い出した。

映画『アイスクリームフィーバー』も始まってるみたいだけど、どんな話にリメイクされているのか、興味深いものはある。

yonawo
焦がれnight

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