久保山武成(臨床心理士)
臨床心理士が、役に立ちそうな心理学的知識を紹介していきます。ストレスやメンタルヘルスに関してだけでなく、自分の持ち味の活かし方、考え方などを書いていく予定です。
これまで、学習性無力感のメカニズムと、そこから脱するための方法について2つほど記事を書きました(以前の記事①、②)。今回は、そのような状態に陥っている人に対し、周囲がどう関わると良いかについて書きます。職場を想定して話を進めますが、家族関係や子育てでも同じことが言えますので、それらで困っている人は置き換えて考えてみてください。 学習性無力感によって生じる特徴的な変化は、試行錯誤をやめてしまうことです。加えて、興味や関心、意欲、主体性が低下します。仕事では、言われたことしかや
「情弱」。俗に言う情報弱者のことです。情報化社会の中で、得る情報量が少なかったり、質が低いと色んな場面で損をしてしまう。格差が生まれてしまう、といったことのようです。 僕自身は、かなり情弱の部類に入るのですが、むしろその良さがあるなとも感じています。それを人にオススメすると意外と好評なので、文章にしてみました。 どうして情弱になったのか? 「大人になったら新聞を読んで、ニュースを見るんだろうな」と思っていた子供の頃の自分が、今の自分を見たら驚くかもしれません。 ニュース
東日本大震災から、今年で12年経ちました。 当時、東北の病院で心理士をしていた関係で、支援のために被災地へ行く機会がありました。 発災から1ヶ月ほど経った頃の派遣でした。心理的な支援なので、避難所や仮設住宅を訪ね、被災者のお話を伺うのが活動の中心です。その時期は、当初の混乱状態から抜け出し、少しずつ復興に向けて動き出す人が増えている頃でした。 東日本大震災では、多くの方が大切な人を失いましたし、家のように自分にとって大切な物も失いました。その喪失感の大きさは、簡単に理解で
この仕事をしていると、大切な家族や友人を亡くされた方とお話をする機会があります。その喪失感の大きさは、僕の想像が及ばないところにあるのかもしれません。しかし、そういった方のカウンセリングをさせていただく機会がたびたびあり、その経験が何かの役に立てればなとも思うので、考えを書いてみることにしました。 大切な人を失った悲しみに対して、周囲にいる人は何か励ましたい気持ちになるかもしれません。しかし、相手の想いを考えると安易なことは言えず、言葉に詰まってしまうことがあります。はじめ
前回、学習性無力感のメカニズムについて書きました(前回記事はこちら)。今回は、学習性無力感に陥った時の対処方法について書こうと思います。 学習性無力感は、問題解決への失敗を繰り返した結果、何をやっても無駄だと学習した状態です。この状態を変える場合、「自分で状況を変えられる」と再学習するのが有効です。「何をやっても無駄」を上書きするということですね。そうすると、無力感から抜け出せることがわかっています。 環境調整が優先される場合も では、どうやったら「自分で状況を変えられ
仕事や勉強に対して、どうしてもやる気が出ない、意欲がわかない、やろうとすると体が重い、ということはありませんか? 原因は色々考えられますが、もしかすると学習性無力感に陥っている可能性があります。 学習性無力感とは 学習性無力感は、平たく言うと「何をやっても無駄だと感じ、無気力になった状態」です。本当は、工夫したら状況を変えられる場合でも、これまでに上手くいかないことを学んだため、意欲をなくして行動しなくなります。 成り立ち これは、1967年に心理学者のマーティン・セ
アップデート後に不具合は多い スマホやPCなど、システムをアップデートした後に、不具合が生じた経験はありませんか?本来、アップデートすることによってこれまでの問題が改善されるはずなのに、処理速度が遅い、かえって不調、一体どうなっているんだと感じるかもしれません。 変化の直後は調子を崩す このような状況は人の変化にもよく起こります。 例えば、周囲の雰囲気を崩すのが嫌で、自分の考えを言わない人がいたとします。けれど、その方法では無理があり、ある時に体調を崩してしまい、これか
「愚痴を言うのは嫌」という方がいます。 みんなで誰かをおとしめているようで、不快に感じるとのことです。 確かに、ネガティブな感情を発散して共有するだけにとどまらず、みんなで特定の人を悪く言ったり、そう思ってない人まで巻き込んで同じ論調にしたり、一緒になっていじめたり、といったように事が大きくなってしまう場合もあります。それを考えると、愚痴はやめておこうというのも頷けます。 溜め込んで我慢してやり過ごす けれど、その場合、自分自身のストレスはどうなるのでしょうか? もちろん
マシュマロチャレンジってご存知ですか? チームビルディングのためのゲームです。 パスタ、ひも、テープを使い、規定時間内にできるだけ高い塔を作ります。 最後に塔の上にマシュマロを置き、崩れなければその高さが記録です。 世界中で挑戦され、競われています。 TEDでマシュマロチャレンジが紹介されていて、その結果が、示唆に富んでいたので紹介したいと思います。 ポイントは試行錯誤 幼稚園児のグループは高い成果を出しており、ビジネススクールの学生の平均より約2.5倍の高さでした。
人生の帰路に立った時、どう選択するかについての二つ目の記事です(前回記事はこちら)。前回とは違う視点で書いてみようと思います。 前回も書きましたが、未来を予想することは誰にもできません。ですから、明るい未来がある方を選ぼうとすると、予測不可能な未来を見ようとしてしまい、選択が難しくなってしまいます。正解を選ぼうとするのではなく、今、どのように選択するかに焦点を当てるのがオススメです。 個人的には、選び方にも自分らしさが表れると思っています。自分がこれまで生きてきた中で、大
ケニアに行った時に感心したのは、草食動物もリラックスしていることでした。聞いてみたわけではないので本当のところは分かりませんが、見た目にはリラックスしているようでした。 野生では、動物園と違うので、肉食動物も草食動物も同じエリアに住んでいます。いつライオンやチーターに襲われるかわかりません。それでも、ゆったりと過ごしているように見えます。草食動物は、それぞれ違う方向をむきながら草を食べ、視野を補い合い、敵を発見したら誰かが反応し一斉に逃げます。おそらく、そういう瞬間はまれで
悩みがないという人は、めずらしいです。そういう人もいますが、本当に悩みがないわけではなく悩みはあるけれど気にならない、ということかもしれません。ほとんどの人は悩みがあり、時には距離があって漂っていたり、時には近くに降りてきて悶々としたりします。 中には常に何かに悩んでいて苦しいという人もいます。仕事について悩んでいたら、それが解決しないうちにより大きな悩みが子育てで出てきて注意がそれ、今度はそっちを悩んでいると、親の問題が出てきて、、、といった具合です。こういう状態に困って
前回、怒りが着火するのは「自分にとっての当たり前が崩された時」と説明しました。今回は、どういう時に燃えさかるかについて書きたいと思います。 僕は、パクチーが苦手です。「コリアンダー」「シャンツァイ」「シラントロ」。それを入れないでくれと言うために、色んな国のパクチーという言葉を覚えているほどです。 例えば、すごく空腹な状態でレストランに行き、店員さんが注文を間違えて「パクチーサラダ」が持ってきたら、一気に怒りが燃えさかるかもしれません。しかし、それほどお腹が空いていなけれ
前回は、怒りは二次感情なので、一次感情の方を表現すると伝えやすいと書きました。今回は、また別の視点で怒りのコントロールについて書きたいと思います。 怒りは、ライターにも例えられることがあります。 怒りに火がつくのはどんな時でしょうか? 着火するポイントは人によって異なるものの、共通する状況もあります。多くの場合は「自分にとっての当たり前」が崩された時に着火するのです。自分が当たり前と思っていることを他人が破ると、怒りに火がつきます。「新入社員がお茶を入れるのは当然だろう」
アンガーマネジメントについて何回かにかけて書いています。 怒りをコントロールするためには、まず自分の怒りに自覚的でなければいけません。自覚ができたら、押し込めるのではなく、適切に表現する必要があります。今回は、じゃあ適切な表現とはどのようなものか?に答えていこうと思います。 怒りは二次感情 「怒り」は、それに先駆けて別の感情が生じていると言われています。例えば、子どもが学校に行かなくなってしまったとき、子どもを怒る親御さんがいます。しかし、本当は怒りの前に、子どもの将来
前回からアンガーマネジメントについて書いています。 怒りをどうコントロールするかというお話です。 前回、怒りも必要な感情なので、押し込めるのではなく適切に表現することが大切だと書きました。では、適切な表現とはどのようなものか?と疑問を持たれる方は多いと思います。実は、怒りをどう表現するかの前に、重要なステップが1つありますので、表現方法は次回以降に書く予定です。 ステップ1は「気づく」 まずは自分の怒りに「気づく」ことが重要です。なぜ重要かというと無自覚なものをコントロ