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色褪せる前に。日本縦断徒歩の旅#46富山県砺波→石川県金沢市

きっと、今起きている思い出の数々は、忘れられていく。一部か全部かはまだわからない。

一部を覚えていたとしても、記憶の中では色褪せていくだろう。こればかりはどうしようもない。

大いなる河のように時は流れ、戻るすべもない。

だが、思い出を美化することはプライドが許さない。

そんな dirty old manにはなりたくはないと思っているからだと思う。

今の自分ができることは、念願叶って食べることができた高級料理を噛み締めていくように、一瞬一瞬を「味わい尽くす」ことだけだ。

消費するだけの旅ではなく、ちゃんと味わう、噛み締めていく。そんな『一生モノの冒険』を希求していく。

ボヤキが長くなりました。

日本縦断徒歩の旅、46日目、この日は、富山県砺波市から359号線を通り、石川県金沢市を目指す。34kmの道のりだ。

県境あるあるなのだが、大なり小なり山があることが多い。

出発の時が迫る。

泊まっていた寛政3年すいげつろうホテルを去ろうとすると、女将さんが牛乳と、おにぎりを用意してくれていた。そして、看板犬のヤクモも見送ってくれた。彼らの心意気に思いを馳せ、温かさを噛みしめる。

最大級のおもてなしを受けた。快適な空間だけではなく、温かい気持ちにさせてくれた宿だった。

前日まで一緒に歩いていたナベさんを駅まで送り、お別れをする。わざわざこっちまで駆けつけて、一緒に歩いてくださり、宿まで用意してくれた。苦楽を共に味わい、2人で乾杯した夜を忘れることはない。ナベさんと思い出が作れたことが何より嬉しかった。ナベさんはどんな気持ちでこっちまで来てくれたのだろうか。ナベさんと歩いた時間を反芻した。ありがとう。ナベさん。

実は、359号線を通ると決めるまでになかなか決断ができなかった。

というのも、昨日まで、どこの道を通るか悩んでいたからだ。どの道のりもそれぞれの厳しさが待ち構えている。そんな中、ある方と出会った。

金沢の人で、自分のインスタを見てくれていたらしく、差し入れを届けに富山まで来てくれたのだ。

その方によると、359号線が最も安全らしい。8号線にいくと、長いトンネルと狭い歩道があるため、危険だとアドバイスをくれた。

さらに、差し入れを届けてくれた後の金沢の帰り道では、359号線の危険箇所の動画をわざわざ録画して送ってくれた。

それを見て『これなら何とか通れそうだ』と
思えたため、359号線を通り、峠を越えることに決めれたのだ。

こんなことまでしてくれて安全を祈ってくれる人がいる。この事実をちゃんと噛み締め、次に向かう決意ができた。

今日ばかりは、道をゆくのではなく、照らしてくれた道に誘われているように感じた。

人の温かさと優しさと様々なエールに背中を押されていた。

もしかしたら俺らしい旅ってのは、自ら歩いているというよりは、たくさんの人き背中を押してもらって歩かされている旅なのかもしれない。

そうして、今、この景色を見れている。決して自分だけの力で辿り着いているわけではない。


359をしばらく歩くと、道路を録画して送ってくれたあの人が、また来てくれた。今日はケンタッキーの差し入れをくれた。車とはいえ、金沢から来たら結構な時間がかかる。

それを二日連続でエールを届けに来てくれたのだ。

金沢で行くべきところ、これから行く道で気をつけた方がいいところ、いろんなアドバイスをくれた。

優しさに包まれた結果、ある感情が自分の中で満たされ、今にも横溢しそうになった。

涙はそこまで来ていた。

なくもんか。笑顔で、俺はエールを送り返した。

峠を越えたんだよって、その人に言えるように頑張ろう。そうやってエールを返すことしか俺にはできないんだから。

この人がしてくれたことで動いた自分の心持ちをちゃんと噛みしめる。忘れるもんか。

山を登る。山を登っているときは時間がゆっくり進む気がする。汗が目に入って痛い。それでも、一歩一歩、前へ、前へ。

トンネルが目の前に現れた。これを越えたらもう石川県だ。


越えた自分を褒めたいんじゃない。越えたんだよって、エールをくれた人に大声で叫んで伝えたかった。

気づけば金沢の街に入っていた。

しばらく歩くと
「おおおおおおーーーーい!!!!」

「この声は!!!」

やはりアイツだ。北海道の稚内のライダーハウスで出会い、函館の手前でも偶然会い、今度はここ、金沢でまたまた偶然の再会。自転車旅と歩き旅の人間が3度も交わるなんて奇跡だろう。

今までの旅の話をした。話を聞くと、彼は、高校を中退になってから週6日を職人として過ごし、130万を15歳で貯めて旅に出たのだ。『どうしてそんなに旅がしたかったの?』と聞いたら。

屈託のない、純粋無垢な笑顔で彼はこう答えた。

『だって、どうしても日本一周したかったんだもん』

眩しくて、ただただ綺麗な笑顔だった。彼のこの笑顔が、この先も続きますように。

近くの神社に2人で行き、そう祈った。

気づけばもうあたりは暗くなってきた。そして、秋空に変わっていることに気づく→

急ごう。実は今日は、札幌でホテルを用意してくれたある人が金沢でもホテルを用意してくれているのだ。

今日だけでもこんだけの人がエールをくれた。エールをくれる度に心が強く動くことを実感する。

これだけ色んな人が良くしてくれたら、それを当たり前だと感じてしまう時がいつかもしれない。

だからこそ、温かい気持ちに包まれたその時に、ちゃんとその味を噛み締めたい。

当たり前じゃないんだよ。自分にそう言い聞かせるように。優しさの雫を一滴も取りこぼすことなく抱きしめるように。

『忘れるだろう。でも忘れたくない』

必死だった。

たくさんのエールをくれる人にどう報いればいいか未だにわかってないからこそ、その時にくれた優しさを全部受け止めることだけはしたかった。

その時の感情も、脳裏にある景色も、色褪せていく前に噛み締めたい。忘れたくない。

そのためにどうすればいいかわからない。どうすればいいかな?

あてのない旅へと、またひとつ歩みだしたのかもしれない。

富山県砺波市→石川県金沢市

歩行距離 34km

総歩行距離 1467km

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