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日常小説

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#300文字小説

先輩、頑張りすぎです(女性編)

「私の大学時代の先輩の話なんだけど」
「いつもの英雄のD子さんですか?」

仕事も終わり、これからアフター6というOLの少ない夜の自由時間。外へ飛び出す前にいつもこの化粧室に集まる。どのオフィスも同じだと思うが、男性と女性で化粧室は別けられている。男性禁制の空間は、女性が本性を現す場所と化す。そこはまるで、満月の夜に映し出される狼の如く、LEDライトで照らし出されたモンスターウーマンとでもいうべき

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「もし超能力を1つだけ与えられるとしたら君は何がほしい?」

「もし超能力を1つだけ与えられるとしたら君は何がほしい?」

週中の水曜日、深夜2時。うちのビルはその界隈でも言わずと知れた眠らないビル。どこよりも遅くまで明かりが点いている。もしかしたら、このビルが建ってから電気が消えてたことはないんじゃないかという噂もある。

「起きた瞬間フェイスケア、決めてあったメイクになる力が欲しいです」
「・・・・・・ずいぶんと現実的というか生々しいスキルだね」

ビル

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ねぇ?先輩。偏見なんてありませんよね

「はっと思ったんだけどさ」

東京では今年で初めての雪。初めてにして、最大級の大雪の日だった。首都圏のすべての交通機関が乱れ、なかには見慣れないホームで長時間待つ人もいたという。

「はっと?」
「いや、ふっとだね」
「足ですか?」

家を出る前には天気予報をチェックするのが習慣になっている。雨が降って傘がないと救いようなくテンションが下がるから。綺麗好きとしては大事なコートに少量の雨

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